穴で選んでました
──USBドライブを選ぶ際、データの信頼性以外のところで重視するポイントはありますか?
まずは形ですよね。よくコネクタの部分にフタが付いてるやつがあるじゃないですか。あのフタ、すぐなくすんですよ。だからボールペンみたいにコネクタがスライドして出てくるやつとかを選びがちだし、本体が小さすぎるのも逆に困るんですよね。なくすんで(笑)。なので、ちっちゃいやつにはでっかいキーホルダーをつけるようにしてます。
──やや本末転倒な感じもしますが(笑)、使い勝手を考慮してのことですもんね。
それと、金属製のUSBドライブはすげえ熱くなるんですよね。たまにコンピュータに挿しっぱなしにしてると、「あちっ!」って触れなくなるくらいになることもあって。
──熱くなるのは放熱がしっかりできている証拠で、むしろ熱に強いのは金属製のものなんだそうです。とはいえ、触れなくなるのは困りますよね(笑)。
まあ、CDJに挿してる分にはそんなに熱くなることはないですけどね。あとこの……穴? 穴がけっこう重要で。
──穴?
キーホルダーとかを取り付けるための穴。僕はUSBを何本も持ち歩くんで、識別のためにタグとかを付けるんですよ。でも、ちっちゃい穴しか空いてなくて紐を通せないやつが多い。それがけっこう厄介で、最初の頃はデータの信頼性よりも穴で選んでました(笑)。タグがつけられないと、ごっちゃになっちゃうんで。
──それは一見些末なようでいて、実はすごく重要なお話ですね。
Sandiskくらいしっかりした穴が空いてるUSBドライブって、意外とないんですよ。ホントに。やっぱり同じ形のUSBドライブが増えていくと、見分けがつかなくなるじゃないですか。そこで、ちょうど僕の友達がプラスチックのタグを作ってるんで、それをいつも識別に使ってます。銭湯のロッカーの鍵とかについているような感じのやつなんですけど、番号の代わりに変な言葉が刻印されていて。去年までは「俺の」と書かれているやつを使っていて、今年は「氷雨」にしてます。
──なるほど(笑)。
で、データのバックアップを取るときに、そのタグの名前でHDDに保存するようにしていて。あとから「一昨年ぐらいに使ってた曲だから、あのタグ名だな」ってその名前で検索するっていう。なので、タグを通しやすい形であることはすごく大事ですね。
──以前この連載にご出演いただいたDJ KOOさんは、スワロフスキーで個体を識別しているとおっしゃっていました(参照:DJ KOOの「BACK UP」|僕の仕事はこれがなかったら成り立たない)。皆さんそれぞれ工夫があるんだなと。
あー、なるほどね。だから、クラブに置き忘れてきたりするとガッカリしますよ(笑)。
──でも「あ、これ卓球さんのだ」って即座にわかりますよね。
そうそうそう。けっこう同じのを使ってる人もいたりするから、何も付けてないと間違えやすいんですよ。交代のときに人のUSBを間違えて抜いちゃったり、帰るときに間違えて人のを持って帰っちゃったりってことがけっこうあったんで。それもあって、なるべくわかりやすくしています。
──すごく理に適った運用だと思います。
あとね、年に1回メインのUSBを必ず買い換えるようにしてるんですよ。年が明けたら新しいやつにして、それまで使ってたやつから移行する。長く使ってると耐久性が心配になってくるんで、「USBは毎年買い換えるもの」という認識になってますね。
──常に“新品を使っている状態”を維持するわけですね。SandiskのUSBドライブはだいたい保証期間が5年間に設定されているので、1年で買い換えるのはだいぶ早いような気もしますが……。
まあ、キリがいいんで(笑)。「何年かに1回」だと忘れちゃいそうだし、「年明けに必ず買い換える」っていうふうにしておけばまず忘れないですから。あと、いざ何かトラブルが起こったときに「ああ、あのとき買い換えておけば」とか思いたくないじゃないですか。
“DJ用”のUSBドライブなんて今までなかった
──「SANDISK DJフラッシュドライブ」は製品名に「DJ」とついている通り、DJ用途に最適化されたUSBドライブになっています。
そういうの、今までなかったですよね。それだけで信頼度が上がるというか。まさかUSBドライブのメーカーさんがDJなんていうニッチな用途に向けてわざわざ製品を作ってくれるなんて、そんなことあるわけないと思ってたんで(笑)。話を聞いたときは「えー、そんなん出すんだ?」って、ありがたいなとは思いましたね。
──従来のUSBドライブよりも2倍から2.5倍ほど高速に読み書きができて、さらにUSB Type-CとType-Aのコネクタを両方備えることで、PCやCDJなどさまざまな機器にそのまま挿すことができる点が主な特徴です。
スピードが速いのはありがたいですね。挿しても「まだ読み込めない……!」みたいなの、けっこうあるんで。
──また、卓球さんはお使いではないというお話でしたが、rekordboxソフトウェアも付属しておりまして、「rekordbox Creative Plan」の3カ月無料特典もついてくるんです。
へえ、なるほど。
──実際にDJの現場をよく知る卓球さんの視点で、「ほかにこういうサービスや機能があったらいいな」と思いつくものは何かあったりしますか?
色かなあ。カラーバリエーション。DJでUSBを1本だけを使うってことはまずなくて、万が一のためにだいたい2つ挿してるんで、「あれ、今どっちだっけな?」みたいなことは必ず起こるんですよ。そのときに色が違えば、ひと目で識別できるんで。特にDJブースは暗いから、その状況でもパッと見分けがつくようなカラーバリエーションを用意してもらえたらすごくありがたいですね。
──少し話は逸れますが、ソロでDJをするときの意識は電気グルーヴのときと違いがありますか?
電気グルーヴでは歌ったりキーボードを弾いたりするんで、単純にやることが多いんですよ。あと、DJと違ってセットリストが決まってるんで……DJでは曲順とか選曲とか流れも決まってなくて、その場に応じて即興的に組み立てていくものなんで、そのへんが一番違いますかね。だから、今でも緊張しますね。DJの前は。
──かける曲はまったく決まっていない?
1曲目、2曲目くらいまでは決めていくことが多いですけど……まあでも、2曲目からはだいたいその場で決めてるかな。その日のお客さんによって好みは違うし、地域や規模によっても変わってくるから。様子を見ながら、ですね。
──そういうときこそSandiskが威力を発揮しそうですね。
そうですね。USBドライブ1個で「どっちに行くのか」という可能性をいろいろ確保できるし、ロングセットのときは“寄り道用”のUSBを別で持っていったりもするんですよ。ゲテモノ曲ばっかり入ってるやつとか(笑)。あとは読み出しスピードも大事。1曲かけて「あ、違った!」となったら、その曲が終わるまでの5分とかの間に急いで方向性を変える次の曲を選ばなきゃいけないし、そこで焦った素振りを見せたら負けなんで(笑)。読み込みの速さは安心材料になりますよね。
データが消えるのは家が火事になるようなもの
──では最後に、本特集のタイトル「BACK UP」にちなんで、卓球さんの音楽活動を支える=バックアップするものとは何かを教えてください。
それはもう、コンピュータですかね。DJに限らず、音楽を作るうえで欠かせないものになっているので。昔、アルバムを作っている過程でデータが全部消えた経験があるんですよ。本当に悪夢でしかなかった(笑)。データが消えるのは家が火事になるようなものっていうか……だから本当に、それが一番といっていいんじゃないですかね。
──アルバムのデータが全部消えたというのは、いつ頃のお話ですか?
2000年代前半の、ソロアルバムを作っていたときですね。アシスタントがバックアップを取ろうとして空のHDDを接続したときに、間違えて元のHDDを空のHDDの内容で上書きしちゃったんですよ。その結果、空のHDDが2つできた(笑)。そこですぐに報告してくれたらまだやりようはあったんだけど、そのアシスタントが自分でなんとかしようとさらにいじっちゃって、その1週間後とかに聞いたんでもう手の施しようがなくて。テープとかに録ったりもしておらず、全部コンピュータの中だけで制作してたから、数カ月の作業が水の泡っていう。ショックでしたよね。
──聞いているだけで恐ろしいです……!
DJでもありますよ。レコードからデジタルデータに移行し始めた頃、買ったレコードをHDDに録音して、オーディオデータとしてアーカイブ化するということをしていて。今でもやりますけど、レコードって録音するのに実時間がかかるじゃないですか。何百時間もかけてデータ化したものを保存してたんですけど、バックアップを1個しか取ってなかったんですよ。そのデータが全部消えちゃったこともあって……その作業をもう1回ゼロからやる気にはならないですよね。
──そうなると、ちょっとレトリカルな言い方になっちゃいますけど「バックアップこそが石野卓球をバックアップしている」とも言えそうですね。
いや、ホントそうですよ。もし今残ってるバックアップが全部消えて、明日から「ゼロからやれ」と言われたらと思うと、ゾッとしますね。
──それに加えて、HDDの耐用年数はおよそ10年と言われていますし、年に一度は通電したほうがいいという話もあります。保存したまま放っておくと読めなくなる日が来るかもしれない、という恐ろしさも……。
それでいうと、昔作った曲のデータとかをしまってあるHDDがあるんですけど、もうずっとほったらかしなんで、怖くて中身を見られない(笑)。「そこにある」という事実だけで安心してますけど、本当にあるかどうかはわからないという。
──シュレディンガーの猫みたいな話ですね。
そうそうそう。現実から目をそらすっていう(笑)。
プロフィール
石野卓球(イシノタッキュウ)
1967年生まれのDJ / プロデューサー / リミキサー。インディーズバンド・人生を経て、1989年にピエール瀧らと電気グルーヴを結成。1995年には初のソロアルバム「DOVE LOVES DUB」をリリースし、この頃から本格的にDJとしての活動も開始する。1990年代後半からはヨーロッパを中心に、海外での活動も積極的に展開。1998年にはベルリンで行われたテクノ最大の野外フェス「Love Parade」のファイナルギャザリングで150万人を前にプレイした。また、1999年からは日本最大級の屋内テクノフェスティバル「WIRE」を主宰。2006年には川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)と新ユニット・InKを結成した。2017年12月に最新ソロアルバム「ACID TEKNO DISKO BEATz」を発表。2018年1月にそれまでのソロワークを8枚組にまとめた「Takkyu Ishino Works 1983~2017」をリリースした。
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