石川県金沢市発の4人組ロックバンド・Maverick Momが1stフルアルバム「Travessia」でメジャーデビューを果たした。
「Travessia」は表題曲や地元である金沢の方言を盛り込んだ「G.A.P.P.A」など新曲13曲を収録したDISC 1、TikTokを中心に人気を集めている「儚夏」や初の音源化となる「Super Face」などインディーズ期の楽曲で構成されるDISC 2からなるアルバム。タイトルはポルトガル語で道、人生、横断を意味する。
音楽ナタリーではメンバーのON(Dr)と中野武瑠(G)にインタビュー。Maverick Momの中でも主に楽曲のクリエイティブを担う2人に、「Travessia」の聴きどころはもちろん、メンバーの関係性や音楽との向き合い方、バンドとしてのあるべき姿についてじっくり語ってもらった。
取材・文 / 天野史彬撮影 / 後藤壮太郎
3年前からだいぶ変わった
──僕がMaverick Momの好きなところはいくつかあって。言葉にしてみると、野心的なところ、ロマンチストなところ、未来をあきらめていないところなんですが……「Travessia」は、まさにMaverick Momの大好きな部分が濃厚に詰め込まれたアルバムだなと感じました。制作にあたって、どんな作品にしようと考えていましたか?
ON(Dr) 「コンセプトアルバムを作ろう」ということだけは決めて、内容を詰めていきましたね。
──「Travessia」のDISC 1は新曲のみ、DISC 2は既発曲や過去曲の再録で構成されています。
ON 「コンセプトアルバムにするからには、全部新曲にしたいよね」という話になって。でも、音源化していない曲も入れたかったし、昔の粗い音源を録り直したいという気持ちもあったから、DISC 2を用意することにしました。
──2023年にEP「unknown」がリリースされたタイミングでインタビューをさせてもらっているんですが、そのときONさんは「無駄な曲を1曲も作りたくない。だから自分たちは曲数が少ない」と言っていて。
ON ははは。はい、はい。
──あれから、曲作りにはどのように向き合ってきましたか?
ON 「unknown」からもう3年が経つんですね。あれからだいぶ変わったなと思います。武瑠はあの頃まだ1曲しか作っていなかったと思うけど、今じゃめっちゃ曲を作るようになったし。
中野武瑠(G) そうね。僕も作るようになったし、ONもかなりの数を作るようになったんじゃないかなと思う。
ON そうなんだよね。曲を作る数は多くなった。相変わらず、今回のアルバムに向けても無駄な曲は1曲も書かなかったなと思っているんですけど、それゆえに「このアルバム、聴いてると疲れそうだなあ」と思っちゃったりもして(笑)。
──(笑)。
ON 無駄がなさすぎて(笑)。無駄も必要なのかなと最近は思うようになってきましたけど、今回はこのボリュームが正解だと思います。
──中野さんとしても、この3年間で曲作りに前のめりになってきた実感はありますか?
中野 ありますね。「unknown」のあと、僕が作った「Transcend even God」「存在の証明」「旅立日記」をシングルで立て続けに出したんです。その頃から、曲作りは楽しくもありつつ、悔しさもあるなと感じながら、めちゃくちゃ作ってきました。
──悔しさが曲作りの原動力になってきた?
中野 そうですね。結局、結果がすべてではあるから。自分が作った曲であまり反応がもらえないと「自分の責任でもあるな」と思うし。
「儚夏」がバズっても媚びたくなかった
──「ENERGY」や「unknown」といった初期のEP作品には、Maverick Momの初期衝動や輝きが詰め込まれていると思うけど、それ以降は「時代や世間にどう向き合うのか?」という部分をかなり意識されながら曲作りをされてきたんじゃないかと思うんです。
ON 確かに「unknown」までは好き勝手にやりたいことを表現していました。でも、「EPを作ろう」という話になったときに、音楽活動は結果がすべてでもあるし、自分らが好きなことだけじゃなくて、今売れているポップスにもしっかりと向き合ってみようと思うようになったんです。僕も武瑠も、そもそも売れているポップスを聴くタイプの人間ではなかったんですけど、2025年に出したEP「COMPASS」を作る過程で、売れているポップスをめちゃくちゃ聴いて勉強しました。そこで「儚夏」の再生数がめっちゃ伸びたりして。そうやって歌もののポップスを取り入れる路線の上で自分たちのやりたいことを昇華することが、「Travessia」につながったのかなと思います。
──それは裏を返すと、「儚夏」がTikTokを通して国内外でバズったけど、結果だけに満足しているわけではないということでしょうか。ポップスに向き合って、バズも経験して、そのうえで今のMaverick Momには新たな野心がある、と。実際「Travessia」に収録された「アルカディア」で「飽くなきは幼い憧憬 飛び込んだ理想郷を求めて」と歌っているのも、そういう野望の表れだと思うんですよね。
ON そうですね。「COMPASS」は「青く、春」をリード曲にしたので、このEPに収録されている「儚夏」がバズったのはちょっと予想外だったんですよ。そのバズに媚びてもいいんだけど、媚びちゃうと、Maverick Momの音楽自体がつまんなくなる。だからやっぱり、自分たちの作りたいものを捨てずに作っていかないとなって。
──媚びたくなかった。
ON うん。まあ、媚びるときは媚びるけど(笑)、自分たちの好きなことは曲の中に必ずブレンドしています。
ポップス作りは楽しい
──「COMPASS」を作り始めた頃から、今の時代の売れているポップスを勉強しながら制作する中で改めて見えてきたMaverick Momのアイデンティティはありますか?
中野 大前提としては、難しいところ。
ON 曲がね(笑)。複雑だから。
中野 うちのボーカルはうますぎてほぼボーカロイドみたいな感じだから(笑)、無理難題を乗り越えてくるし。展開が多いところ、テクニカルなところ……そういう部分はMaverick Momらしさにつながっているんじゃないかな。
──ONさんはどう思います?
ON もともとメンバーそれぞれが違う個性を持っているバンドなので、僕が作る曲も、武瑠が作る曲も、(南出)大史(Vo, G)が作る曲も全然違う。「Travessia」も、皆さんがどう思うかはわからないけど、似たような曲は1曲もないように作ったし、全曲Maverick Momっぽくないところが逆にMaverick Momらしさ、というか。今回のアルバムは特にそういう魅力が出ていると思います。
──ONさんはもともと、ジャズやクラシックがルーツにありますよね。Maverick Momを始めてから、バンドでポップスを作っていくことの面白さもどんどん増えていますか?
ON そうですね。ポップスはなんでもありだから。いろんな要素を融合させて新しいものを作ることがポップスではできるんですよね。だから楽しいです。Maverick Momを始めてよかったなと思う、本当に。
次のページ »
憧れの川谷絵音と制作


