lynch.が3年4カ月ぶりのオリジナルフルアルバム「CLIMAX」をリリースした。
結成20周年プロジェクトを通して、2作のリテイクアルバムのリリース、全国ツアーや東京ガーデンシアターでのワンマンライブ開催と、怒涛の勢いで活動を展開してきたlynch.。そんな彼らがひさびさに放つオリジナルフルアルバムは、全10曲にしてトータル29分というコンパクトな尺に、全編アップテンポな楽曲を詰め込んだ、バンドの尽きない攻撃性を感じさせる1枚となっている。
音楽ナタリーでは本作の発売に合わせてメンバー5人にインタビュー。20周年イヤーの集大成となった東京ガーデンシアター公演で得たもの、メンバーそれぞれが捉える「lynch.らしさ」が反映されたという「CLIMAX」の制作背景についてたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一撮影 / 佐々木康太
20周年イヤーの集大成、東京ガーデンシアター公演を振り返って
──ナタリーでのインタビューは昨年9月の2ndリテイクアルバム「THE AVOIDED SUN / SHADOWS」リリース時以来となります(参照:lynch.「THE AVOIDED SUN / SHADOWS」インタビュー)。lynch.は昨年12月28日に結成20周年プロジェクトの締めくくりとして東京ガーデンシアターでワンマンライブを行いましたが、皆さんにとってあの日はどんな1日でしたか?(参照:lynch.はこれからも続く、結成20周年イヤーの集大成を見せた東京ガーデンシアター公演)
晁直(Dr) 20周年企画の締めくくりで、我々にとってもひさしぶりに大きい会場でのワンマンライブだったし、緊張感を持って臨めたんですけれど……やっぱり、東京ガーデンシアター規模のライブを当たり前のようにやれるバンドになりたいなと感じた瞬間もあれば、それは難しいが不可能ではないなと思える瞬間もありました。僕らも年を重ねてきましたけど、これからもがんばっていきたいと改めて決意できる節目の1日になりましたね。
──当日、ドラムは同期トラブルにも見舞われましたね。
晁直 あれは思いがけない出来事で。リハーサルのときはまったく問題なく、本番でいきなり起きたので、ドキドキどころじゃなかったですよ。
悠介(G) 自分としては、東京ガーデンシアター公演のときに課した課題を7、8割方はうまくクリアできたと捉えています。長年経験してきたことを、20周年という区切りのいいタイミングで発揮できたのは個人的に大きかったですね。あとは、いい意味で客席との距離感が近く、思っていたほど会場の広さが気にならなかったことも印象的でした。ほかのアーティストのライブをあの場所で観るのと、自分がステージに立つのとではこうも違うんだと実感したことも、次のステップアップに向けてのいい経験になりました。
玲央(G) バンドを20年続けること自体が難しいですし、決して当たり前のことではない。応援してくださっているファンの方、そしてスタッフの支えがあってこそ、ああいった大舞台が実現するんですよ。それを受けて、やっぱりこれからも続けていきたいという気持ちと、続けなければいけないという責任感、その両方を感じるライブでした。そのうえで、僕らが提示するもの1つひとつがより大事になっていきますし、「その気持ちを持ってバンドとどう向き合っていくのか」という自問自答も続くわけですが……そういう小難しいことを抜きにしたら、「楽しかった、またやりたいです」ということに尽きるのかなと。
明徳(B) 東京ガーデンシアター公演が終わった瞬間の安堵感と達成感を、今でもすごく覚えています。もちろん今までも同じように感じるライブは数多くありましたが、「20周年イヤーの最後にふさわしいライブをしなきゃ」とか「関わってくれた人に感謝を届けなくちゃ」とかいろんな思いを込めて臨めたからこそ、以前とはまた違った感覚もあったのかなと。同時に、これだけ長くやってきてもまだがむしゃらにやれる自分がうれしかった反面、もっと冷静に考えて立ち回ることもできたなという反省もあって。よくも悪くも「がむしゃらなライブ」でした。
葉月(Vo) 僕は東京ガーデンシアター前の心持ちとして、「この公演を成功させて、その先の未来がより明るくなるようなライブをしたい」と考えていました。「やっぱりlynch.ってすげえバンドだな」と絶対に思ってもらうんだという気持ちでいたので、そういう意味では今回の「CLIMAX」というアルバムにつながる、非常にいいライブができたと手応えを感じています。
“lynch.らしさ”を追求したトータル29分の潔さ
──怒涛の1年間を駆け抜けて、最後に「未来がより楽しみになるスケールの大きなライブ」を届けてくれたことだけでもうれしかったのに、そのライブ内で早くも2026年初夏に次のアルバムリリースがアナウンスされたことには、当日とても驚きました。昨年のlynch.の活動を知っているからこそ、半年くらい休んでも全然不思議じゃないのに、と。
葉月 まあ、新曲は全然出してなかったですからね。だから制作はまったく苦じゃなかったです。
──とはいえ、昨年はものすごい曲数を再レコーディングしているわけで。
葉月 さすがにやりすぎたので、25周年のときは気を付けようと思いました(笑)。
──オリジナルアルバムとしては「REBORN」(2023年発表)以来3年4カ月ぶり、新作としてもEP「FIERCE-EP」(2024年発表)以来約2年ぶりのリリースとなります。新たにフルアルバムを制作することを意識し始めたのはいつ頃でしたか?
玲央 意識したというより、スケジュール感で言うと2025年初頭にはすでにそういう話が出ていました。リテイクアルバム2作をどのタイミングで出そうかという話もしながら、オリジナルアルバムをどういう作品にしていくか、ツアーを回っている最中の2025年4月ぐらいに楽屋で話し合っていたのですが、コンセプト云々よりも一聴して「あ、lynch.の作品だね」とみんなに感じてもらえるような作品がいいだろうと。別の言い方をすると、各メンバーが捉えたlynch.像をそのまま曲にしてもらって、それを作品としてブラッシュアップしていく形がいいんじゃないかという話になりました。
──なるほど。
玲央 例えば「ULTIMA」(2020年発表)のときはサイバーパンクでいきましょうとか、「REBORN」のときは各々が楽曲を1曲ずつ持っていきましょうという明確なコンセプトやテーマがありましたけど、昨年のリテイクアルバムを経たからこそ……というよりも、昨年回った2本の全国ツアー(「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT "XXact:5" TOUR'25『UNDERNEATH THE GREED』」および「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT “XXact:9” TOUR'25『THE AVOIDED SHADOWS』」)が大きかったかもしれないです。それぞれのツアーではリテイクアルバムの楽曲中心でライブをしたわけですが、アンコールではそれ以外の、いわゆる定番曲も披露したんですよね。そこで「こういう曲を求められているんだ、この雰囲気がみんな好きなんだ」と再確認できました。
──ほかのメンバーの皆さんも「lynch.らしさ」と向き合ううえで、昨年のリテイクアルバム制作やツアーの経験は影響を及ぼしましたか?
悠介 例えば、僕が加入するまでlynch.はギター1本でしたが、ツインギターになってからはリフをユニゾンで押し通すことで厚みが出たりして、ライブに勢いが出るようになった。そこから経験値がどんどん増えて、いろんなフレーズで色が足されていったわけですけど、昨年のリテイクを通じて「以前のようにリフのユニゾンで押し通すのもカッコいいよな」と気付かされることが多かったです。新曲を作る際にそういうテイストが多くなったことには、少なからずリテイクの経験が影響していると思います。
葉月 初期の作品はlynch.らしさが確立されるまでの過程だったと捉えているから、僕としては今回の作品で目指したものに対する影響は特になかったです。ただ、ツアーで得た熱みたいなものはもちろん反映されています。
──では、葉月さんの中でアルバム制作に向けて、楽曲にどういったものを詰め込みたいと考えましたか?
葉月 「ULTIMA」以降、わりと実験的な楽曲が多かった気がするんです。でも、「ULTIMA」からもう6年経っているんですよね。要は、そろそろ「lynch.らしい作品」をみんなが求めているんじゃないかと。「そうそう、これ! lynch.、始まったよ!」という熱が感じられるアルバムを届けたかったんです。
──その熱は、アルバムを聴き始めてすぐに伝わりました。全10曲でトータル29分という潔さにもその熱が表れているように感じました。
葉月 29分ってヤバいですよね(笑)。
玲央 「え、なんでこんなに短いの? 間違ってる?」って最初は驚きましたから(笑)。
──収録されている楽曲の大半が3分前後で、長くても4分に満たないです。この尺の短さは意図的だったんでしょうか?
葉月 トータルタイムをあまり長くしたくないとはずっと言っていました。ぶっちゃけ、全部で8曲ぐらいにしたかったんですよ。今の時代、ボリュームのあるフルアルバムをまとめて聴く人は減っていると思うし、このあとのツアーのことを考えると、セットリストが新曲ばかりになることにちょっと抵抗があって。そのあたりは、昨年のツアーがかなり影響しているかもしれないですね。昔の曲にもいいものが豊富にあるから、それらもライブで改めてちゃんと披露していきたいという思いもあり、新作はあまり大きなボリュームにしたくなかった。ただ、結果的にここまでコンパクトになるとは……(笑)。でも、制作中に「短すぎるな」とは思わなかったんですよね。もし「あまりにもあっさりしすぎだろ」と感じていたら、もう少しかさ増ししていたでしょうけど、その必要性がまったくなかった。要は、中身が充実していれば尺は問題じゃないんです。
──例えば「PARASITIC E.D.E.N」は、2分10数秒という短さの中にいろんな情報が高い熱量で詰め込まれていますし、めちゃくちゃ濃い仕上がりですよね。
葉月 そう。だから満足度は高いです。
──明徳さんは1曲の尺について意識したことはありますか?
明徳 僕も尺どうこうというのは、制作中に気にしたことはなかったです。ただ、「ボリューム感が小さい、コンパクトなアルバムにしたい」という共通認識はあったし、そこに付随した曲たちが集まってきたので、「バラードや壮大な曲は今回まったくないな」とは気付いていました。あとは、昨年大量にレコーディングしたので自分ではレコーディング技術が相当上がったと自負していたんですけど、リテイクした初期の曲とは曲調もチューニングも、音楽の作り方もまったく違うんですよね。だから、昨年の努力がそのまま通用しなかった寂しさもありつつ、同時に新しいことにトライできる楽しさを感じました。
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