2023年11月に1stシングル「乱心-RANSHIN-」でソロアーティストデビューし、新たな道へと足を踏み出した北山宏光。彼はこの2年半で40曲以上の楽曲を作り上げ、このたびポニーキャニオンとTOBEが新たに立ち上げた音楽レーベル「RED ON」から3rdアルバム「ULTRActi:on」をリリースした。
アルバムには斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、TenTwenty)が作詞、TenTwentyが作曲したリードトラック「ICY」をはじめとする全12曲を収録。北山自身が12曲中8曲の作詞に携わり、相棒である藤家和依と話し合いながらアイデアやこだわりを詰め込んだ意欲作だ。
北山はどのようなところから着想を得て、楽曲を作り上げているのか。そのアイデアやクリエイティブ精神の源に迫るべく、北山が作詞を担当した楽曲を中心に話を聞いた。
取材・文 / 中川麻梨花撮影 / 映美
ヘア&メイクアップ / 原みさとスタイリング / 柴田圭
今の活動を象徴するような作品にしたい
──ソロアーティストとして出発してからの約2年半、かなり早いペースで曲を作っていますよね。もう40曲をゆうに超えているのでは?
全然超えてるんじゃないかな。最初はほとんど自分の曲がなかったから、ライブをやるためにも、ともかく曲を作らなきゃいけないと思って。ライブの構成を組むにあたって、「こういう曲があったらいいな」と考えてるうちにどんどん増えていった。スケジュール的に自分で自分の首を絞めることになりましたけど(笑)。
──3枚目のアルバムはどういった作品をイメージして制作していきましたか?
今回新しくできたポニーキャニオンとTOBEの共同音楽レーベル・RED ONからリリースするということで、自分としては“3回目のデビュー”という気持ちでアルバムを作りました。15年前にグループで1回デビューして、2年前にTOBEでソロアーティストとしてデビューし、そしてこのタイミングで新しいレーベルから作品を出す。それを3回目のデビューとするのであればどういうのがいいんだろうと思って、まず「ULTRA」(2026年4月リリースのシングル曲)という曲を書きました。誰でも共感できて、どこか懐かしく、笑顔なのに涙が出てくるみたいな……そういうものがエンタメだよなと。アルバムタイトルも「ULTRA」にしようかなとも考えたんだけど、いろんな曲が入ってくるから、外枠は広げておいたほうがいいと思って、今の自分の活動内容や環境を表す単語を書き出していき、“行動”を意味する「Action」、俳優として“演じる”の「Act」、レーベル名であるRED ONの「ON」を掛け合わせて「ULTRActi:on」という造語を作りました。今の自分の活動を象徴するような作品にしたいなと考えてましたね。
──アルバムには2021年に発表した「灰になる前に」のセルフカバーが収録されていますが、ボーナストラックとかではなく、12曲入りのアルバムのド真ん中にあたる7曲目に配置されているのが面白いなと。コロナ禍の中で現状に抗い、希望を探して進み続けるというすさまじいエネルギーに満ちた曲だと思うんですけど、この曲がド真ん中に置かれて、アルバムの1つのピースとしてなんの違和感もなく成立している。それくらい、1枚を通してすごく大きなエネルギーを感じるアルバムだという印象を受けました。
「灰になる前に」は当時(sic)boyくんとKMくんに書いてもらった曲で。2人の曲がカッコいいなと思って、追いかけていたんです。この曲は有観客のライブでパフォーマンスしたことはなかったんですけど、後輩やファンの子から「『灰になる前に』が好き」という声をたくさんもらって。僕は今、よりくん(藤家和依)とKNOTmanくんと一緒に曲を作ることが多いんだけど、2人もこの曲を好きになってくれていた。それで「今『灰になる前に』を表現するとしたら、どうなるんだろう?」と思って、よりくんに相談してリアレンジしてもらいました。もともとのアレンジがいいから、よりくんは「マジか。ハードルが高いな」とプレッシャーを感じてたけどね。
──ストリングスが入って、より開放感のある仕上がりになっていますよね。
そうそう。重要なベースラインとか、もともとのよさは残したうえで、ストーリーが壮大になりましたね。BPMもちょっと上げています。アルバムの順番通りに並べて聴いても、今の自分の曲として成立してるなって感じます。
毎回デモを聴いて「ああ、天才だな」と思います
──リードトラックの「ICY」は斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、TenTwenty)さんが作詞、TenTwentyさんが作曲しました。斎藤さんとのタッグは「JOKER」「赤い夜に」「in the Moonlight」に続き、今回が4曲目になりますね。
「ICY」のデモは、実は2ndアルバム「波紋 -HAMON-」(2025年6月発売)のときにはすでにあったんですよ。2024年の「ZOO」というツアーを斎藤くんが観に来てくれたときに、「北山くんのライブにこういう曲があったらいいかもっていうイメージがある」と言ってくれたんです。お客さんのノリ方のバリエーションを増やしたほうがいいんじゃないかということで。「じゃあ、今アルバムを作ってるからどう?」と話したら、斎藤くんが忙しい中でバーッと1曲書いてくれて。聴かせてもらったらすごくいい曲で、2ndアルバムのどこかに置くより、この曲にもっとフォーカスできるタイミングで出したいと思って大切にストックさせてもらいました。それで今回新レーベルでスタートすることになり、「ここだ!」って。
──前に斎藤さんが「北山くんとは年齢も一緒なんですけど、彼がグループを抜けてソロになったときに、やりたかった音楽を後押ししたいところもあった」とおっしゃっていましたが(参照:TenTwenty「Border=Border」インタビュー)、ライブの全体的な振り幅のことまで考えてくれてるんですね。
本当にありがたい。毎回デモを聴いて「ああ、天才だな」と思います。アルバム発売日の6月24日は、斎藤くんの誕生日なんですよ。この前たまたま電話していたとき、「いつアルバムを発売するの?」って聞かれたので6月24日だよと伝えたら「えっ、俺の誕生日なんだけど!」って。アルバムリリースで斎藤くんの誕生日をお祝いできるのがうれしいです。
──「ICY」はホーンがにぎやかに鳴っていて、カッティングギターも心地のいいキャッチーなナンバーです。最初にデモを聴いたときの印象はいかがでしたか?
軽やかで夏っぽさもあって、聴いていてすごく気持ちよかったです。斎藤くんの仮歌から愛も感じられて。「好きにアレンジしていいよ」って斎藤くんが言ってくれたので、軽やかさやきれいなメロディラインは残しつつ、リード曲っぽさを意識して、ちょっと熱いというか、より派手さのあるアレンジにさせてもらいました。
──「ICY」の主人公は氷のようにクールな女性に片思いをしていて、相手のことで頭がいっぱいで何も手につかないくらい中毒になっている状態です。「ともかく相手に振り向いてほしい」という情熱的な主人公とクールな女性の対比が印象的で、まるでマンガのストーリーのような曲だなと。
この曲のストーリーについては、斎藤くんに詳しく聞いたことがないんですよね。でも、僕もそういう解釈で、主人公がクールな女性に対して中毒になっているこのストーリーが、サウンドの中毒性とうまくリンクしてるなと感じます。その中毒性をミュージックビデオでも表現したいと思って、みんなが思わず踊りたくなっちゃうようなキャッチーな振付を取り入れて。その振付を強調するために、あえて白ホリのスタジオで撮ってみました。今回のMVは大衆に向けた内容を意識しています。普段CMをたくさん撮ってる方に監督をしてもらい、15秒くらいのインパクトのあるカットが連続して続いていくイメージで制作しました。
わんこのしっぽがもふもふだった
──今回のアルバムで北山さんは12曲中8曲の作詞に携わっていますが、作詞において特に挑戦したなと思う曲は?
挑戦したと言うなら、「RED STORM」かな。でも、ある意味「サニーサイドアップ」も挑戦かもしれない。
──「サニーサイドアップ」はポップに振り切った曲で、歌詞も北山さんのこれまでの曲にはないような書き味ですよね。いい意味ではっちゃけてるといいますか。
よりくんが作った「サニーサイドアップ」のデモも1年くらい前からあって、2ndアルバムに入れるかどうか迷ったんですよ。そのときは「ちょっと今じゃないかも」と思って収録せず、今年に入ってから今回のアルバムの制作期間に作詞したんですけど、去年書いてたら全然違う歌詞になってたはず。今年書いてよかったなと思っています。
──ここまではっちゃけた歌詞は書けなかったかもしれない?
というよりは、今年見た風景をきっかけに書いた歌詞なんです。Dメロの「散歩してるわんこしっぽがもふもふ」というフレーズから書き始めて……今年の春に桜が咲いてる公園を歩いていたら、おじいちゃんが大きいわんこと散歩していて、そのわんこのしっぽがもふもふだったんです。それを見て「かわいいな。おじいちゃん、あのわんことどんな生活をしてるんだろう? こういう日常に幸せがあるんだろうな」と感じて、人々の日常を書き出してみようと。
──このアルバムにはそれぞれの曲に異なる主人公がいますが、「サニーサイドアップ」の主人公は日常を生きていて、一番身近に感じられる存在だなと思いました。「動画のにゃんこ達に癒されてる夜」というフレーズもありますが、そういう人はいっぱいいると思いますし。
このフレーズは僕の日常そのものですね(笑)。そういうふうに自分の実体験もちょっと入れています。「見慣れた駅のホームでは今日もネクタイが揺れている」とかは、一生懸命働いてるサラリーマンの方をイメージして書きました。僕も学生時代に通勤ラッシュで、人の間に挟まりながら寝てましたけど、みんな必死に朝から仕事場に向かってるんだろうなって。サビの「いつも仕事は山積みで目がまわる 大事な『今』を抱えてまわる だけど息抜きもしなきゃね」というところは、時間は勝手に過ぎていってしまうけど、その中でも仲間と一緒にいる時間や、おいしいものを食べる息抜きの瞬間を大切にしなきゃねっていう。一見はっちゃけた歌詞だけど、ちゃんと芯を食った歌にしたいと思ってました。
──何気ない日常の幸せが大切だなと思えるような曲ですよね。
イメージとしては、太陽がキラキラしていて、みんなが笑顔になる曲にしたかったんだけど、綺麗事ばかり書いても刺さらないんじゃないかという思いがあって。それで私生活に寄せて、自分が見た景色や感じてることを書いていきました。誰かに人生を消費されるのではなく、自分の時間をちゃんと守って、大切にしてほしいというメッセージを込めた曲です。
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真っ赤に染まった会場の真ん中に僕がいる


