きのホ。インタビュー|新井ポテト+ハンサムケンヤと掘り下げる“嘘のない”楽曲たち

京都のアイドルグループ・きのホ。が通算5枚目のフルアルバム「脳内エレクトリック」をリリースした。

2024年に配信限定でリリースされた「都スカイハイ」以来、約2年ぶりのアルバムとなった「脳内エレクトリック」。今作には、先行して配信リリースされていた「秋刀魚」「傾いてる」「美談にしないで」などに新曲7曲を加えた計12曲が収められている。それらの作詞作曲を担ったのは、きのホ。のデビュー以降、すべての楽曲を手がけてきた京都在住のシンガーソングライター・ハンサムケンヤだ。実は、きのホ。は彼の楽曲を世に広めることを目的にスタートしたプロジェクトでもある。その手腕により彼女たちはハイクオリティな楽曲を持つアイドルとしての認知を広げており、今回も見事な快作に仕上がっている。

ニューアルバムの発売を記念し、音楽ナタリーではメンバー5人、プロデューサーである新井ポテト、そしてハンサムケンヤにインタビューを行った。聞き手を務めるのは、前回のインタビュー(参照:きのホ。インタビュー|主催フェス「ホ。フェス'26」開催前に考える、グループの独自性と現在地)に引き続きプロインタビュアーの吉田豪。ハンサムケンヤがつづる“嘘のない”歌詞の魅力について、思うままに語り合ってもらった。

取材・文 / 吉田豪撮影 / KOBA YOSHIHITO

メンバーとハンサムケンヤの微妙な距離感

──前回のきのホ。メンバーのインタビューが好評だったので、今回は新譜リリースに合わせたメンバー+運営の新井ポテトさん+楽曲担当ハンサムケンヤさんとの対談をやります! ただ、この取材が始まる前にケンヤさんがえらい緊張してたんですよね。

ハンサムケンヤ そうです……。豪さんとしゃべるのも緊張しますけど、それ以上にメンバーとしゃべるほうが緊張する。

小花衣こはる え? 仲悪い?

ハンサムケンヤ いや、そんなことないけど、改まってしゃべることがないから。

御堂莉くるみ わりと最近ですよね、仲よくなってきたの。

──え? 2021年結成だから、もう5年ぐらいの付き合いなのに。

桜寝あした 今は仲いいんだ?

御堂莉 今はわりと。普通に会話ができるくらい。

──だから御堂莉さんは、取材前に「ケンヤさん、首ないですね」みたいなことを本人に言ってたんですね(笑)。

御堂莉 それも一応コミュニケーションとして、輪に入れてあげてる。

小花衣 それまで輪に入ってなかったんだ(笑)。

御守ミコ 私はまだあんまり……従兄弟の同級生のお父さんくらいの距離。

御堂莉 全然関わりない!

ハンサムケンヤ 普段、会うことないからね。

御堂莉 従兄弟の同級生のお父さんに曲を書いてもらってるんだ(笑)。

小花衣 悲しくなってしゃべれなくなっちゃう!

小清水美里 私は近所のお兄さんくらい。

きのホ。(奥)、新井ポテト(左)、ハンサムケンヤ(右)。

きのホ。(奥)、新井ポテト(左)、ハンサムケンヤ(右)。

──ケンヤさんとしては取材自体がひさしぶりなうえに、メンバーとの距離感もあって緊張しているとのことでした。

御堂莉 でも、始まる前に「いいインタビュアーは自分の発言を引き出してくれる」って言ってました。

ハンサムケンヤ 言うな言うな(笑)。

小花衣 ドヤ顔で言ってたよね、慣れてる感じで。

御堂莉 「今日はもう何も考えてない、俺は。いいインタビュアーが引き出してくれるから」って。

小花衣 どんどんちっちゃくなってる(笑)。

御堂莉 ホントだ(笑)。顔色が悪くなってる。

見せかけだったアーティスト感

──メンバーはケンヤさんのことをどう見てるんですか?

小清水 どう……?

ハンサムケンヤ 今、シーンってなったね(笑)。

御堂莉 オーディションを受けたときにケンヤさんもいたんですけど、そのときはめっちゃ怖く感じて。ポテトさんとかが明るい感じだったのに対して、あんま笑わないし、しゃべらないし。だけど、今はめっちゃ普通の人。

ハンサムケンヤ よく言われます。

御守 怖いとは思わなかったけど、全然しゃべんないなとは思ってた。

小花衣 アーティスト感があったよね。

御堂莉 あった、最初は。

小花衣 オーディションのときに「音域を測らせてください」って言われたんです。うちら素人だからそんなことやったことないし、「え、音域を調べるってなんだろう?」と思いつつ「あー」って声を出して、ケンヤさんがキーボードを弾いて「わかりました」って。「すごい! アーティストっぽい!」と思って緊張してました。

ハンサムケンヤ そうそう。一応これから曲を作る人として一番高い音と低い音は把握しときたいなって。

新井ポテト あれは裏話を言うと、しゃべることが何もなかったから無理やりにでもなんかやらなきゃと(笑)。

一同 ははははは!

小花衣 あのときはすごくカッコよかったけど。

小清水 確かに、別に関係なかった。結局その音域で曲を作ってはいないから。

──まったく反映されてなかった(笑)。

小花衣 あれ見せかけだったんだ。

桜寝 場つなぎ(笑)。

ハンサムケンヤ これからみんなの人生を背負う身として、その入り口である面接みたいなところではしっかりしたところを見せたいなと思って。

──アーティスト感も出さなきゃいけないし。

御堂莉 じゃあ、それは出てた。

ハンサムケンヤ 今もそれぞれの低い音と高い音はメモとして残ってる。たぶん、今もう1回測ったら音域が全然広がってると思う。

御堂莉 また測ってください!

小花衣 「アーティストだ!」って言います。

桜寝 今はもう威厳ないからね。

小花衣 ないのかな(笑)。

──最初からメンバーの人生を背負う覚悟はちゃんとあったわけですね。

ハンサムケンヤ そうですね。人生において一番多感というか重要な時期を、すでに5年いただいているような感覚はあります。

小花衣 ケンヤさんから最初に送られてきた曲が「観月京」だったんです。それを聴いたときに「この曲を歌って絶対にアイドルの夢を叶えたい」と思いました。ケンヤさんの歌詞がすごく好きで、「観月京」に「大人になれない子供はいつか あの夢を見続ける化石となるか 現実となるか」というフレーズがあるんですけど、私はアイドルにならずにこのまま死んで化石になると思ってたんで、ああ現実にしよう!って。ケンヤさんの覚悟をいっぱい歌いたいと思いました。

小花衣こはる

小花衣こはる

──皆さん、ケンヤさんの歌詞は刺さってるみたいですね。

御堂莉 大好き!

小花衣 大好き!

御守 なんでこの人はこんなにすごい歌詞を書けるんだろうと思って、「どういう本読んでるんですか?」って聞いたら「本、全然読んでないよ」と言われてすごいびっくりした。

小花衣 いっぱい本を読んでるから難しい言葉を知ってるんだと思ってたけど、ラノベしか読んでないって。

ハンサムケンヤ うーん、ラノベもそんなに……。

新井 でも、大学時代からアニメはずっと観続けてる。

ハンサムケンヤ アニメはめっちゃ観てるね。

小清水 「オススメのアニメありますか?」って聞いて教わったやつを観たら難しすぎて……なんでしたっけ、スクーターに乗ってる女の子の。

御守 「フリクリ」?

ハンサムケンヤ 「フリクリ」だね。

小花衣 「フリクリ」って何?

──ガイナックスとJ-POPの融合みたいなアニメですよね。

桜寝 おしゃれなイメージがあります。

御守 「フリクリ」私も好き。なるほどねー。今一気にケンヤさんの解像度が上がった。

桜寝 5年目にして。

御堂莉 どのくらいの距離になった?

御守 今? 今は……お父さんの職場の人。

御堂莉 おー、けっこう近い。

──まだ相当遠いです(笑)。

新井 俺からしたらアニメとゲームとマンガの人。

桜寝 だからかも。陰キャに刺さる歌詞じゃないですか。ちょっとオタク的な、ナード的な要素を持ってる人、自分の内面と向き合ってる人にこそ刺さると思う。逆に自分の人生と向き合ったことのないネアカには刺さらない。

小花衣 ネアカに対する偏見がすごい(笑)。