


JBLは家庭用高級スピーカーからホームシアター、車載純正オーディオ、映画館・スタジアムなどの業務用分野まで幅広く手がけ、今年創立80周年を迎えた世界最大級のオーディオブランド。そんなJBLのハイエンド向けオーディオラインがLIVEシリーズだ。今年3月に発売されたオーバーイヤータイプの「JBL LIVE 780NC」、オンイヤータイプの「JBL LIVE 680NC」というヘッドホン2種に、このたび「JBL LIVE BEAM 4」と「JBL LIVE BUDS 4」というイヤホンも加わった。
JBLの音響技術をあますところなく傾注したこれら4製品を、ジャズドラマーの石若駿が体験。クラシカルな伝統を大事にしつつも革新的なアプローチに挑み続ける石若の目に、JBLの製品はどう映ったのか。サウンドはもちろん、操作性やデザイン、そしてブランドイメージまで、幅広く語ってもらった。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / SHIN ISHIKAWA
生の楽器と同じような音を体感したい
──石若さんにとって、ヘッドホンやイヤホンはどのような存在ですか?
自分の中では、“生活にないといけないもの”という位置付けです。演奏しているとき以外の移動でも、音楽が流れていないと不安になっちゃうタイプで。なので、わりと小さい頃からヘッドホン、イヤホンが欠かせない生活を送ってきました。カセットウォークマンからスタートして、CDウォークマン、iPod、iPhoneと移り変わっていったんですけど、機器の進化とともに、ずっと一緒にあるものですね。
──ヘッドホン、イヤホンにこだわり始めたタイミングは?
中学生とか高校生とかですかね。音楽好きな友達との会話の中で「このイヤホンいいよ」みたいな話が日常的に交わされるようになって、電気屋さんに行って聴き比べをするようになった記憶があります。
──好みの傾向などはありますか?
空間を感じられるものが好きです。普段、ジャズの演奏をすることがすごく多いんですが、自分が演奏している環境と同じように「ここにドラムセットがあって、こっちにベーシスト、あそこにピアニスト、ここにホーンプレイヤーがいて」というふうに聴きたいというか。その場を想像できるような、全部の音がクリアに聞こえるものが好きですね。
──細部までを分析的に聴くというよりは、空気を感じたい?
空気というか、実体験と似たような感じがいいなと思っています。今、話していて思い出したんですけど……最初に「ドラマーになりたい」と思った小学生のとき、家に生のドラムセットがなかったので電子ドラムで練習してたんですよ。できるだけ生のドラムセットに近い音色をセッティングしてヘッドホンで聴いていたんですけど、同時にジャズの歴史的な音源とかをCDウォークマンで流してイヤホンで聴きながら、その上にヘッドホンをして自分の演奏音を重ねるっていう、変な練習の仕方もしていました(笑)。生の楽器と同じような音を体感したい、という意識はその時期からすでにあったのかなと思います。
──制作やレコーディングとリスニングとでは、機器に求めるものがまた違ってくるのかなと思いますが、いかがですか?
違うと思いますね。音楽制作のときは長時間ヘッドホンをつけるので、なるべくラクなものを選ぶようにしていて、ボロボロになるまで使い続けているヘッドホンもいくつかあります。リスニングに使うものは、「街中でこれをつけて歩く」ということを考えますね。色とか形とか……多少ですけど。外で使うならカッコいいのがいいですよね。
──とはいえ、やはり基本は音で選ぶ?
そうですね。例えば自分で作ったものをなるべくいろんな環境で聴いて、「これだとこういうふうに聞こえるのか。こっちだとどうだろう」というのは日常的にやるので、できるだけいろんな機種を試したいといつも思っているんです。だから今回、4機種も試させていただけたのがめちゃ楽しくて。
“ジャズおじさん”の思い出
──JBLというメーカーにはどんなイメージをお持ちですか?
やっぱり最高級なイメージがあります。本当にいい、良質なものっていう。ジャズの現場にいると、ライブで使うスピーカーもそうですし、聴くためのシステムでもJBLの製品に出会う機会はすごく多いです。低音がすげえカッコいい、迫力あるなって印象ですね。
──「JBLはジャズに合う」とよく言われますが、石若さんもそう感じますか?
このインタビューの前にJBLのスタッフさんから大まかな歴史を教えていただきましたが、JBLが始まったのが1946年ということで、その時期ってジャズの歴史的にもすごく面白い時代なんですよ。そこから50年代に入ると、どんどんジャズが進化していくんです。音楽の発展と音響機材の進化がともに歴史をたどってきた、というところに似合う理由があるのかな、と思ったりしますね。
──「JBLでこう聞こえるなら、俺たちはこういう演奏をしよう」というものもあったでしょうしね。
それもあるかもしれないですよね。JBLのスピーカーには、リアリティがすごくあると思います。細かいところまで聞こえるので、実際のライブで行われていることとすごく近い状況を作り出してくれているんだろうなと。僕は小さい頃から、爆音でジャズを聴く機会というのがけっこうあったんですよ。親父に連れられてライブハウスによく行ってたのもそうですし、小学校6年生ぐらいのときに“ジャズおじさん”がいて……。
──ジャズおじさん(笑)。
その人の家にでっかいスピーカーがバーンとあって、壁一面にCDやレコードがずらっと並ぶ、オーディオルームのようになっていて。よくそこに行ってジャズを聴かせてもらっていました。行くと、コーヒーとうどんを出してくれるんですよ。「ネムロ・ホット・ジャズ・クラブ」っていう団体の偉い人で、僕がずっとすごくお世話になっている日野皓正さん・元彦さん兄弟と親しかった人なんですけど。日野さんのコンサートで出会って。
──なるほど。近所の変なおじさんの話じゃなくてよかったです。
行くたびにCDを10枚ぐらい借りて、家でMDとかiPodに落としたりして、それを返しに行くついでにまた3時間ぐらい聴いて……っていうことをしていました。その経験があったから、今の自分の「こういう音にしたい」というイメージの元にもなってるし、そういうふうにジャズを聴きたいなっていうのもあるし。
──さすがに覚えてないと思いますが、そのジャズおじさんの家のスピーカーは……。
JBLだったんじゃないですか?
──(笑)。
たぶんJBLだったと思う。その人は亡くなっちゃったんですけど、機会があれば確認しておきますね。
うわ、これ全部聞こえちゃってるね
──ということで、今回お試しいただいた「JBL LIVE 780NC」「JBL LIVE 680NC」「JBL LIVE BUDS 4」「JBL LIVE BEAM 4」のお話に移りたいと思います。まずは率直にいかがでしたか?
僕はJBLのイヤホンやヘッドホンを試したことがなかったんですけど、JBLスピーカーのイメージと同じように、低音にすごくパンチがあるなと思いました。今制作中の自分の作品を聴いてみたら本当に隅々まで聞こえて、「うわ、これ全部聞こえちゃってるね」っていうのが第一印象です。「パ」のような破裂音のローのところとか、ちょっとした電源のノイズのピーキーなところも全部しっかり聞こえて、すごいと思いました。それはマスタリングが「あっちゃー」ってことではなくて。普段自分が使っているヘッドホンはちょっとマスキングされている部分があるんだな、と感じましたね。
──4機種すべてにそれを感じた?
はい。イヤホンもヘッドホンも、どっちもですね。自分の作品だけじゃなくて、長年好きで聴いてきたアルバムとかもこれらで聴いてみたんですけど、「あれ? こんな音鳴ってたっけ?」という発見がけっこうありました。例えばマヤ・ホークの「Moss」という作品を聴いたら、フェンダー・ローズが鳴ってる曲でリバーブだと思っていた音に実はディレイもかかっていたことがわかったんですよ。「こんなにたくさん聴いてるアルバムなのに、まだ発見があるんだな」と思いました。そういうのも含めて楽しかったですね。すごく分離がよくて、作り手の意図が聴き手に伝わりやすいヘッドホン、イヤホンなのかなという印象を持ちました。
──僕も試させてもらったんですが、いわゆるモニター系ではなく“楽しく聴かせる”方向性の音作りだと感じました。にもかかわらず、そういう細部がちゃんと聴き取れるのがすごいなと。
そうですね。そういうふうに聴くのも、音楽の楽しみの1つだと思います。
──特に気に入った機種はどれでしたか?
僕が好きだったのは、ヘッドホンはオンイヤータイプの「JBL LIVE 680NC」で、イヤホンのほうは「JBL LIVE BUDS 4」。これって、ヘッドホンとイヤホンそれぞれ2機種の違いは形だけですか?
──そのようです。JBLさんのお話では、使われているドライバーユニットなどの設計は基本的にまったく同じとのことでした。ただ、やはり物理的に形が違うと聞こえ方はけっこう違ってきますね。
そうですよね。僕は普段、耳を覆うタイプ(オーバーイヤー型)のヘッドホンを使うことが多いので、「JBL LIVE 680NC」は今まで手にしたことのなかったタイプで新鮮でした。自分が「この音が欲しいな」「こういうふうに聴きたいな」と思う音をそのまま鳴らしてくれる感じがして、かゆいところに手が届く感覚がありました。
──オーバーイヤーとは異なる密着感がよかった?
だと思いますね。ヘッドホンなんだけど、自分がイメージする“ヘッドホンの聞こえ方”とはちょっと違う感覚があってよかったのかもしれない。イヤホンのほうは逆に、「JBL LIVE BUDS 4」のようなそら豆型を以前ずっと使っていたので、「やっぱこれが好きなんだな」と再確認できた感じです。なんて言うんですかね……没入感があるのかな。小さい頃から慣れ親しんできた音楽の聴き方がそうだったから、安心感がありました。
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“生活”にはヘッドホン、“没入”にはイヤホンを使いたい




























