インナージャーニーが、キングレコードよりメジャーデビューシングル「Toi toi toi !」を配信リリースした。
2019年の結成以降、メンバーの脱退を経験しながらも着実にリスナーを獲得してきたインナージャーニーがついにメジャーデビューを果たす。デビューシングルのタイトル「Toi toi toi !」はドイツ語で「うまくいくよ!」を意味するおまじないに由来する。
音楽ナタリーではメジャーデビューを記念して、メンバー2人にインタビュー。新曲に込めた思いやこれまでの歩みを紐解く中で、あえてデモ音源に手を加えなかったと語る本多秀のギタリストとしてのこだわりと、「絶望を見つめながら希望を歌う」というカモシタサラのシンガーソングライターとしての矜持が見えてきた。
取材・文 / 森朋之撮影 / 大橋祐希
バンドも世界も変わった4年間
──音楽ナタリーでの取材は2022年以来となります(参照:インナージャーニー インタビュー|自分たちの外側へ思いを向けた、名刺代わりの1stアルバム)。この4年間はインナージャーニーにとってどんな期間でしたか?
カモシタサラ(Vo, G) メンバーが脱退したり、世界情勢が大きく変わったり、いろいろ変化がありました。自分のことで言うと、大学を卒業して「これからどうやって生きていこうか?」ということを考えていた時期もあって。2022年にリリースした1stアルバム(「インナージャーニー」)を作っていた頃はまだ学生だったんですよ。4th EP「はごろも」(2024年10月リリース)のときは卒業してたけど。
──学生ではなくなり「オールタイムミュージシャンになった!」という喜びもあったのでは?
カモシタ それもあったと思うんですけど、不安もありました。周りの人たちは就活していて、もちろん私は私の道を進んでいたけど、「本当にこの選択でよかったのかな」という気持ちもあったので。あまり考えすぎず、目の前のことを追い続けているうちに今に至るという感じです。
本多秀(G) 僕もあまり深く考えてなかったですね。ありがたいことに、バンド以外にサポートの仕事もさせてもらって、気付いたらミュージシャンみたいな生活をしていて。切羽詰まった感じもありつつ、カモシタと同じように目の前のことをやっていたというか。
──カモシタさん、本多さんの2人体制になって、バンドサウンドを再構築する必要もあったと思うのですが。
本多 サウンドについては、2人の間で一貫性があった気がします。インナージャーニーはもともと音がデカいバンドでしたが、ちゃんとボーカルをアンサンブルの真ん中に持っていきたくて。ギターに関しても、以前はもっとゴリッとした音で前に出ようとしたけど、最近はしっかり歌を中心に置けているんじゃないかなと。
カモシタ 今の本多くんの話とはちょっと違う感覚だけど、前のメンバーも歌をしっかり届けることは考えてくれていたと思うんですよ。その感じを受け継ぎつつ、今はさらに歌いやすくなっているというか。「のびのびとした感じのまま、どこまでいけるか?」みたいな。そこを楽器で形にしてくれているのが本多くんだと思います。
──サウンドメイクは任せている、と。
カモシタ そうですね。私は楽しいかどうか、歌いやすいかどうかなので(笑)。
──曲作りについてはどうですか?
カモシタ 以前は、歌ったりバンドをやったりすることが娯楽みたいなものというか、楽しいだけでやってる部分がけっこうあったんです。でもここ数年は世界の状況もどんどん変わってきて、いろいろと考えることが多くなって。例えば食料品に比べると、音楽は絶対に必要なものではないじゃないですか。コロナ禍のときもそうだったけど、窮地に追い込まれたら、音楽や芸術は不要とされてしまう。そういうヤバい状況の中で、自分がなぜ歌っているのかを考えたときに、聴いてくれる人に「きっと大丈夫」と思ってもらえるお守りみたいな音楽をやるべきだなと。私自身ももっと自信を持って、自分の核みたいなものをしっかり表現しなくちゃいけないと思ったんです。世界が大変なことになってるからこそ、気が引き締まってる感じです。
──生きるために音楽が必要な人たちもいますからね。
カモシタ そうですよね。私も音楽がなかったら、こんなふうに生きていなかっただろうし。
本多 僕はそこまで音楽に救われてきた自覚がないというか(笑)、そもそも音楽くらいしかやれることがないと思っていて。就職してもちゃんと働ける気がしないし、音楽をやるしかない。背水の陣ですね。
──それもひとつの腹のくくり方だと思います。
カモシタ 確かに。私は今もずっと迷ってる感じがあって……。
本多 「これでいいのかな」「これで合ってるのかな」みたいなときはあるよね。
カモシタ 自分は普段、SparksやThe Smithsとか、ポップさもありつつ、いい意味で変わった部分も持ったバンドの音楽を聴くことが多いんですよ。でもそういう感じをインナージャーニーにあまり落とし込めていない気がして。「やりたいこと」と「やれること」のバランスや、「そもそも、自分たちにそういう音楽が求められているのか?」みたいなことをぐるぐる考えちゃうんですよね。自分の内側にあるものをバーンと出せたら、もっと自由になれるんじゃないかという葛藤は、曲にも表れているかもしれないです。
まずは「きっと大丈夫だ」と思える1曲を
──では、メジャー1stシングル「Toi toi toi !」について聞かせてください。メジャー第1弾作品ということは制作時に意識していました?
カモシタ かなり意識しました。「やったるぜ!」と「自分の核は絶対に捨てないぜ!」という両方を詰め込んで、感情の解放をテーマにして作りたいなって。さっきの話にもつながるけど、「きっと大丈夫だ」と思える曲があったらいいなと思ってました。自分もそういう曲が欲しいし、聴きたいし、作りたかったんですよね。だからドイツ語で「うまくいくよ!」というおまじないの言葉をタイトルにしました。
──疾走感のあるギターロック的なサウンドも、楽曲のコンセプトにぴったりですよね。本多さんがデモ音源を聴いたときの印象は?
本多 カモシタから打ち込みのデモが送られてきて、「この曲は何もしないほうがいい」と思いました。自分が何かを変えるのではなくて、このままサポートメンバーに投げたほうがいい、つまり「何もしない」という選択肢を取ったことは覚えていて。「はごろも」のときとかは、なるべくボリューム感が出るようにアレンジすることが多かったんですよ。でも「Toi toi toi !」はそういうことを一切せず、どストレートなほうがカッコいいんじゃないかなと。
カモシタ なるほど、そうか! ……今、勝手に納得しました(笑)。
本多 (笑)。なのでギターも余計なことはやってないです。
カモシタ この曲は、「どうしよう、どうしよう」っていろいろ考えていた時期に書いた曲で。切羽詰まって誕生日(2月14日)も返上してスタジオにこもってたけど(笑)、その頃から「14歳の自分を救う」ということを意識してました。シンプルなバンドサウンドというか、衝動に立ち返ったほうがいいなと思って。だから勢いで作ったデモをそのまま本多くんに投げたんです。その感じが伝わったのかもしれないですね。
本多 確かに。
カモシタ 素のまま、そのままがいいなと。
本多 個人的には「クリームソーダ」の雰囲気も感じていて。2020年にリリースした曲だけど、あのときの雰囲気がまた戻ってきた。
カモシタ 10代の頃は何も考えてなくて(笑)、出てきたものをそのまま曲にしてた感覚があったんです。その感じに戻ってみようというか、そういう曲が聴いてくれる人にも一番スッと入ってくるんじゃないかなと。
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14歳の頃どんな感じだった?



