2024年に行われたBMSGとちゃんみなによるガールズグループオーディション「No No Girls」にてファイナリスト10名に選ばれ、唯一無二の美しい歌声で視聴者を魅了したFUMINO。オーディション終了後、彼女はセルフプロデュースのシンガーソングライター“ふみの”として歩んでいくことを決意。今年1月にちゃんみなが主宰するセルフプロデュース型レーベル・NO LABEL ARTISTSからデビューシングル「favorite song」をリリースした。
5月には刑事ドラマ「未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3」の主題歌として自身で書き下ろした新曲「よくあるはなし」をリリース。壮大なストリングスサウンドに乗せて、人間の内面に潜む矛盾や善悪の境界の曖昧さを繊細に描き出している。音楽ナタリーでは新曲のリリースに合わせて、ふみのにインタビュー。楽曲制作やルーツの話を通して、シンガーソングライターふみののクリエイティブの源泉に迫る。
取材・文 / 岸野恵加撮影 / 梁瀬玉実
「私はどんな瞬間が一番楽しいんだろう?」と考えた
──デビューから3カ月が経ちましたが、最近はどんな日々を送っていますか?
毎日、楽しく音楽ができている実感があります。“夢に描いていたデビュー”と言葉にするとすごく大きなことに聞こえるけど、私自身はあまり変わっていなくて。でも環境が変わって、私の音楽に触れてくれる人が増えて、うれしい反面で緊張もしますし、いろいろな感情が芽生えました。
──1月11日のデビューの瞬間はドキドキしたと思いますが、今はその高揚感は落ち着きましたか?
そうですね。今はいろんなことに悩むようになりました。セルフプロデュースだから、アーティスト写真や作品のジャケットなど自分で決めることが多いのですが、最近は「どの選択肢がいいだろう」と、さらに深く考えるようになっています。各方面のプロの方がいらっしゃるので、私のつたないアイデアも、とても理想的な形にしてくださるんです。だから安心して、思ったことを口に出せていますね。
──ふみのさんは「No No Girls」終了後、昨年の夏にちゃんみなさんと話してシンガーソングライターとしてデビューすることを決めたそうですね。「No No Girls」はダンス&ボーカルグループのオーディションだったので、いろんな選択肢があったと思いますが、どういう思いからシンガーソングライターという形を選んだのでしょうか。
ずっと夢に描いていたのは“歌う人になりたい”ということ。オーディション中にいろいろな音楽を知って、初めてダンスに挑戦して、グループで1つの音楽を作ることも経験できて。いろんな道を想像しつつ、「私はどんな瞬間が一番楽しいんだろう?」と考えたんです。全部私らしいけど、ダンスなどほかの表現は“楽しい音楽”で、一番“音楽を表現している”と感じるのは、「No No Girls THE FINAL」のソロ審査で披露したような、楽器を弾きながら歌っているスタイルだったんです。「No No Girls」終了後は半年くらいゆっくり過ごして音楽と向き合っていたんですが、その期間に改めて実感しました。
とにかく曲をたくさん作りたい
──デビューしてからリスナーやファンの方々から熱い反響を受けて、どんな思いを抱きましたか?
すごくうれしいです。デビューしてすぐに渋谷で路上ライブをしたんですが、本当にたくさんの方が来てくれて、「もっと歌いたいな」という思いがあふれました。路上ライブはずっと憧れていたけど、なかなかできなかったんです。実現できてめちゃめちゃ楽しかったですね。
──ファンの方は同世代が多いですか?
幅広いですね。路上ライブにも、老若男女さまざまな方がいらっしゃって。同じ曲でも、人それぞれ全然違う受け取り方をしてくださるのが面白いです。例えば3月にリリースした2ndシングル「ホットライン」は私が憧れている親友に向けて書いた曲なんですが、「君の見る世界は特別で」という歌詞を、我が子への気持ちに重ねたという女性の感想を見かけて。とてもありがたく、そして興味深かったです。
──なるほど。普段、楽曲が生まれるのはどういう瞬間ですか?
最近はとにかく曲をたくさん作りたくて、すでにデモをいろいろ作っています。「こんな曲が作りたい」というイメージをできるだけ形にできるように、試行錯誤していますね。ベッドの横にギターが何本も置いてあるんですが、毎日それを寝る前に弾いて「(曲のアイデアが)出てくるかな……」と探って。思い浮かんだらそのまま夜中まで作って、浮かばないときはすぐに寝ます(笑)。普段から歌詞に使いたいフレーズをメモしているのですが、そこからピックアップして「このテーマで作ってみよう」と、曲を作り始めることが多いですね。
──ふみのさんの歌詞は語りかけるようなフレーズが多かったりと、言葉の組み合わせがユニークですよね。言葉を操るにあたって、どんなものに影響を受けたと思いますか?
一番インスピレーションをもらうのはマンガです。1日30作くらい読んでいるかも。ホラー、バトル、恋愛、転生ものなど全ジャンル読みますが、最近はまた少女マンガにハマっています。数年前に読んだ作品を読み返すと、以前は自分より年上だったキャラが年下になっていたりして、「ああ、ムズムズする!」と思ったり(笑)。マンガにはいろんなキャラクターが登場しますけど、「こういう場面で、この人はこういう行動をするんだな」という部分に注目して読みます。
──それぞれのキャラの視点に立って、行動原理を研究しているんですね。
はい。活字本もたまに読むけど、マンガからはたくさんインスピレーションをもらっています。
──ふみのさんは常に“等身大の自分らしさ”を大事にしている印象があるのですが、それはご自身のポリシーですか?
セルフプロデュースが軸にあるので、自分のやりたいことや表現したい音楽を選んでいたら、自然とこういう形になっていました。あまり隠し事もできないタイプなんです(笑)。
全部ひっくるめて“愛”だと捉えました
──3rdシングル「よくあるはなし」は、「未解決の女 警視庁文書捜査官Season3」の主題歌です。タイアップ曲を作るのは初めての経験だったと思いますが、最初にお話を聞いた際はどう感じましたか?
めちゃくちゃうれしかったです! 同時に、とても緊張もしました。シーズン1、2と続いてきた作品なので、シリーズファンの視聴者の皆さんの中にはすでにある程度作品のイメージがあるだろうなと。楽曲をその世界観にしっかりと合わせないと……という緊張感を持っていました。
──ドラマの制作サイドからはどんなリクエストがありましたか?
壮大なサウンドで、雰囲気的にはシリアスだけど、“次に進む”という希望が見えてほしい、というお話をいただきました。私は刑事ドラマを観たことがほぼなかったのですが、シーズン1、2を観たらすごく面白くて、2、3周しました。作中で起こる事件はすべて、復讐であったり誰かを助けるためであったり、何かの目的のために起こされたものだと感じたので、私はそれを、全部ひっくるめて“愛”だと捉えました。その愛を前にしたときに、果たして善悪を判断できるのだろうかと。境界線が揺れる瞬間を書く曲にしたい……とイメージしていきました。
──歌詞を読みながら、この曲の主人公は誰なのかと考えたのですが、加害者や被害者、その家族や知人、そして刑事たちのどの立場にも当てはまるなと思いました。
そうですね。どの視点にも当てはまることを意識して書きました。観た人が自分の中で考えるドラマだと思うので、主題歌もそれぞれの受け取り方をしてほしいなって。鈴木京香さん演じる主人公・鳴海は文字の裏にある見えない真実を考えて捜査していく人物なので、その部分をどう表現するかも深く考えましたね。
──歌い出しの「それでも」というフレーズに、とても想像力を掻き立てられました。「この前段にどんな展開があったのだろう」と一気に引き込まれて。
ありがとうございます。1番の歌詞は、私の中では加害者の視点を特にイメージしました。みんないろんな状況下にいて、罪を犯してしまうのにも理由があって。そういう前提をイメージして、始まりの言葉を「それでも」にしました。
──この曲も、制作は歌詞からスタートしましたか?
歌詞とメロディをほぼ同時に作りました。序盤は特にたくさん考えましたね。シーズン2のとあるエピソード回で、加害者が捕まった瞬間に崩れ落ちて、主題歌が流れるという展開がすごく印象的で。「同じ展開がもしシーズン3でもあったら、どんな曲が一番ゾクゾクするだろう?」と考えて、音を消してそのシーンを再生しながら、制作途中の曲を歌ってみてイメージを膨らませましたね。
──なるほど。では、アレンジの最終形を念頭に置いてメロディを考えたのでしょうか?
いえ、アレンジはメロディができあがってから考えました。ストリングスカルテットを入れるなど自分にとって初めての挑戦ばかりで、レコーディングで楽器演奏を見るのがすごく楽しかったです。ピアノの音だけで曲が終わるのですが、最初はその想定ではなかったんですよ。「もう少し、続けて弾いてみていただけますか?」とピアニストさんにお願いしたら、イメージ通りのものを弾いてくださって、「めちゃくちゃいい!」と感動し、レコーディング中に終わり方を変えました。歌詞は、もともと自分が書き溜めていたフレーズを使った部分もあります。
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今までで一番“歌ってる”実感を持てる曲


