FANTASTIC◇CIRCUS特集|難病にも負けず、たぎらせる不屈のロックスピリット

FANTASTIC◇CIRCUSが、ライブ向きの楽曲を中心にセレクトしたリテイクアルバム「Not Greatest Hits ADD TO ROCK FOR LIVE【DISC_FANATIC】」および「Not Greatest Hits ADD TO ROCK FOR LIVE【DISC_CRISIS】」をリリースした。

FANATIC◇CRISISのレガシーを継承しながら活動を続けてきた彼らだが、その裏側ではボーカル・石月努が2025年11月に難病の特発性大腿骨頭壊死と診断されたことや、ギター・SHUN.の不在という大きな困難に直面していた。今回のインタビューでは、そんな逆境を正面から受け止め、止まらないことを選んだ石月とkazuyaの覚悟、そして音楽シーンにおける先達から受け継いだ彼らなりの“ロックスピリット”の真髄をじっくりと語ってもらった。来年のメジャーデビュー30周年に向けて、不屈の精神で突き進むバンドの現在地を紐解く。

取材・文 / 西廣智一ライブ写真撮影 / 春川眞

石月努の難病発覚、SHUN.不在の中での決断

──2年前のインタビューでは、活動休止中のSHUN.(G)さんの動向が見えないなど、未来についてのお話がなかなか難しいタイミングでした(参照:FANTASTIC◇CIRCUSインタビュー|“LAST”になるかもしれないツアーへの覚悟)。

石月努(Vo) そうでしたね。そのあとに2人でいろいろ話し合ったんですが、SHUN.(G)の復帰が今すぐは難しいということもあって。お互いにもっと若ければ、活動を止めたまま待つこともできたのかもしれないけど、この年齢になるとやれるうちにいろいろやっておきたい、バンドを止めたくないという気持ちのほうが強かった。もちろん、彼の調子がよくなれば戻ってくることもあるかもしれないけど、その未来はやっぱり不確定要素が強いじゃないですか。それでもFANTASTIC◇CIRCUSとして活動したいという思いが、僕とkazuyaの中で一致したので「じゃあ、やるか」ということで今に至ります。ただ、その中で僕が難病指定の病気になるという未来までは、まったく予想できませんでしたが……。

FANTASTIC◇CIRCUS

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──2025年5月に活動再開を宣言し、9月からライブ活動を始めるものの、同年11月に石月さんが特発性大腿骨頭壊死と診断されたとのことで。2025年は、図らずも一昨年以上に激動の1年になってしまいました。

石月 このバンドは普通じゃないんですよ(笑)。ただ、それをネガティブに捉えるのもポジティブに捉えるのも自分次第。それよりも、僕にはやらなきゃいけないことがたくさんあって、それを最優先させたい。たとえ途中で倒れたとしても、それは自分が望んだ道ですしね。とは言え、今年の「ADD ROCK」というテーマと、ひさしぶりの新しい音源を携えて活動していますけど、今のところは踏ん張れていますし、別に痛々しいライブをしているつもりはないので、そこは心配しないでほしいですね。

FANTASTIC◇CIRCUS

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50歳を目前に再確認した「hideさんの背中」とロックの精神性

──それにしても、2026年は春のツアーはもちろん、これから始まる秋にかけてのツアーも、スケジュールがすごいことになってます。

石月 自分でもバカバカしいなと思うんですけど、僕はバカバカしいことをやってこそのロックだと思っていて。ロックって音楽ジャンルを指す言葉ではなくて、精神性を指すものだと思うんです。そういうことを、僕はいろいろな諸先輩から教えてもらったし、それこそ遊び心を忘れないhide(X JAPAN)さんの背中を見て、「ああ、これがロッカーなんだ」って思いましたもん。そういう姿に僕は憧れたし、そのスピリッツは受け継いでいるので、ご心配なく。とは言え、kazuyaに一番心配や迷惑をかけているとは思いますよ。

石月努(Vo)

石月努(Vo)

kazuya(G) いやいや。僕のこのバンドでのポジションは、一歩引いて見る立場だと思っていて。もちろん心配ではありますけど、努が追求したい表現とかその覚悟を自分なりに消化して、とにかくやるだけですね。

石月 一番近くで自分のことを理解してくれて、いろいろな形で支えてもらってます。特にレコーディングではSHUN.の役割を担っていますし、本当に大変なポジションだと思いますよ。

kazuya ギターに関しては、やっぱり大変ですよ(笑)。ずっと不慣れなことをやらなきゃいけないわけで、特に今は努がこういう状態なので、パフォーマンスとしてもちゃんと成立させなきゃいけないし。そこはもうずっと戦っている最中ですけど、なんだかんだがんばればいいだけですからね。がんばってできる範囲であれば、バンドの一員としては普通のことなのかなと思います。

“ライブ向き”の楽曲を凝縮、最新リテイクアルバムのこだわり

──2026年にこれだけライブを行うとなると、どうしても新しい音源も必要になる……そういう思いから、「Not Greatest Hits ADD TO ROCK FOR LIVE【DISC_FANATIC】」「Not Greatest Hits ADD TO ROCK FOR LIVE【DISC_CRISIS】」と題した今回の2作品が生まれたのでしょうか。

石月 それがね、逆だったんですよ。何年か前にワーナーさんからシングル曲のリテイクアルバムを2枚出したんですけど(2023年発売の「TENSEISM BEST SINGLES【1997-2000】」、2024年発売の「TENSEISM BEST SINGLES【2001-2004】」)、ここでは多くの方がイメージするFANATIC◇CRISISのサウンド……つまり「ポップでキャッチーなロック」を形にしました。でも、FANATIC◇CRISISはインディーズで4年、メジャーデビューしてから8年活動していて、ライブを軸にした体育会系的な活動が中心だった。そういったところが、前の2枚ではちょっとクローズアップされていないなという思いがあったので、じゃあ今度はライブ向きの曲を中心としたリテイクアルバムを作って、「今だったらこういう表現をするよ」というところを形にしたかったんです。

──なるほど。

石月 で、そういうアルバムを作るんだったら、ライブをできるだけ多くやりたい。自分の体がどこまでできるのかわからないけど、そこに対する挑戦もしたかった。よくなることはない、進行していく病気なので、やれるうちにやっておきたいという気持ちもあり、じゃあライブハウスも含めて初心に返った気持ちでやろうと。なので、アルバムのタイトルを「FOR LIVE」、ツアーのタイトルは「FOR LIFE」という形にしたんです。

──今回のアルバム2作を聴くと、FANATIC◇CRISISを通過した身としては「そうそう、シングル曲だけじゃなくて、これこそFANATIC◇CRISISなんだよね!」と思わされる楽曲満載で、ニヤニヤしながら楽しませてもらいました。

石月 ありがとうございます。今回はシングルのカップリング曲とか、過去のアルバムの中からライブでやったことないような曲もチョイスしていて。かつ、前回はオリジナルに忠実にというモットーがありましたが、今回は「曲によってはオリジナルのメインフレーズを変えよう、今ならこっちのほうが絶対にカッコいい!」という姿勢で臨んだところもあるんです。しかも今回、昔のように合宿をしたんですよ。今はデータのやりとりで済ませられるので、合宿する必要なんてないんですけど、僕はどうしてもやりたくて。で、その中でいろいろ話し合いをしながらコンセプトがだんだんと固まっていき、僕のディレクションでレコーディングを進めていきました。ドラムはライブでもずっとご一緒しているLEVIN(La'cryma Christi)さんに全曲お願いしたんですが、「黒い太陽」とかめちゃくちゃカッコよくなりましたよね。

石月努(Vo)

石月努(Vo)

──30数年前の曲とは思えないほど、モダンな質感に生まれ変わりましたよね。

石月 普通のアーティストはやりたがらないと思うんですよ。でも、それをやれるのが今のFANTASTIC◇CIRCUSなんです。この曲に関しては、フレーズ自体は大きく変えていないかもしれないけど、例えばボーカルに関してはアプローチの仕方が変わっていて。よりライブ寄りのアレンジに進化したのかな。もしかしたら今回のアルバム、前作と比べたらボーカルのボリュームが小さいと思う方もいるかもしれないんですけど、そのバランスのこだわり含めて今のFANTASTIC◇CIRCUSなんだと思います。

2人分のギターを担うkazuya

──kazuyaさんはSHUN.さんのパートを含め、2人分のギターパートを担ったわけですよね。過去のレコーディングと比べて負担が増したんじゃないかと思いますが。

kazuya 特に今回は曲数も多かったですし、長旅にはなるだろうなとは思っていましたけど、全然負担には感じていなくて。これはよく言う話なんですけど、とにかく「機嫌よくいたい」と思ってるんですよ。例えば、「レコーディングが終わりました、データを送ります」「ちょっと直してほしいんだけど」なんてやりとりは普通に起こりうるじゃないですか。

FANTASTIC◇CIRCUS

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──ええ。

kazuya 自分が忙しなさすぎると「いいじゃん、それくらい」なんてなりがちで、それを言った僕も気分がよくないし、言われた側もよくない。だったら、そうならないために自分なりにスケジューリングして機嫌よく過ごせるようにしたいんです。このアルバムの制作期間、僕は別のバンドで週末ずっとツアーに出ていて、それ以外の時間は毎日2人分のギターを録っていた。それをルーチン化することで、想定していたよりも早めにギターのレコーディングが終わったし、そのあとの修正に関しても機嫌よく対応することができました。とにかく楽しく過ごせた。

石月 だって、明日締め切りというタイミングでkazuyaに「やっぱりギター、差し替えない?」って言いましたし(笑)。

kazuya そこに関しては僕もクエスチョンがあったから、「やっぱりそうですよね」って(笑)。楽しくやりましたよ。ただ、SHUN.がソロを弾いていた曲が多く含まれていたので、もちろん難しさや大変さもありました。そこはちょっと自分流にアレンジしてやらせてもらいましたけどね。しかも、あいつがファナ(FANATIC◇CRISIS)のときから使ってるレスポールを今回使ったんですけど、僕はレスポールに慣れていないので、めちゃくちゃ弾きづらい。でも、このレスポールを使うことでSHUN.がそこにいる匂いはするのかなと。

──ギター以外の機材もお借りした?

kazuya いや、それ以外は全部最新のプラグインを使いました。ぶっちゃけ、「Love Me」とかは僕の中の思い出が美化されすぎているから、自分で再録したいと言いながらも本音では「原曲を超えるのは無理なんじゃないか」という思いもあって。でも、最終的にはいい感じの音色を作れたんじゃないかと思います。