いずこねこ、Maison book girl、クマリデパート、クロスノエシス、Ilieなどを輩出してきた音楽制作会社ekomsでは、どのアーティストも代表・サクライケンタが生み出す音楽性や世界観を踏襲しつつ、個性的な魅力を発揮してきた。2024年にデビューを果たしたdiigもまた、メンバー自身が「アイドル界隈で浮いた存在と思われている」と語るほど、自由奔放な佇まいで存在感を示している。
そんなdiigは1年半以上の活動を経て、6月9日に初のフルアルバム「persona」をリリースした。これを記念し、音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを実施。diigのオーディションを受けたきっかけや、まったく性格の異なる5人が団結していったエピソード、初アルバム完成後の心境など語ってもらった。さらに6月10日に急遽リリースされ、トゥルーパンクバンド・moreruが制作に参加したシングル「制服器官」についても紹介する。
取材・文 / 南波一海撮影 / YOSHIHITO KOBA
引きこもりだった瑠香、看護学生から転向のさら、ノリで来た未沙
──diigの基本的なことから伺っていきたいと思っています。まずは皆さんがdiigに入ろうと思い至ったきっかけを教えてください。
瑠香 何をしようか悩んでいたときにインターネットでekomsのオーディションを見つけて、母に話してみたら、応募してくれました。私、そのちょっと前に鬱になって、引きこもっていたんです。そこからだいぶ元気になって、外に出ようとしていたタイミングでオーディション参加者の募集が始まったので、自分にとってはきっかけの一歩っていう感じです。
──外に出て、何かをしたかった。
瑠香 でも、やりたいことは特になくて、留学しようかなと思っていたんです。オーディションを受けるだけ受けて、ダメだったら留学しよう、くらいのテンションで応募しました。
──それまでアイドルをやってみたいと思うことはあったのでしょうか。
瑠香 まったくなかったです。母にオーディションを勧められたときはネガティブな時期だったので、最初は「受からないからやめようよ」って言ってて。落ちたら余計ショックじゃないですか。でも、「じゃあママが応募してみていい?」という感じで、全部やってくれました。それで鳥取から出てきて。
──それは思い切りましたね。
瑠香 大学進学に合わせて関東に出ることも考えていたんです。高校を不登校になる前、小中高はめっちゃ勉強していて、将来は関東の大学に行こうと思っていた時期もあったので。そこまでハードルの高さは感じていなかったです。
──続いて、さらさん。
さら 自分は看護学校をどうしても辞めたくて、オーディションに行きました。
──学校を辞めたいというのが先にあったんですね。
さら とにかくイヤだったんですよ。そのときはやりたいこともなかったんですけど、かてぃちゃん(Haze、悪魔のキッス)が好きだったのもあって、diigのオーディションを見つけました。
──ちなみに看護学校に入学したのはどんな経緯だったのでしょうか。
さら お姉ちゃんが看護師で、母も歯科衛生士をやっていたので。流れでなんとなく、というか。
──それで進んでみたものの、自分とはあまり合わなかった。
さら はい。それで静岡から東京に来ました。離婚した父方のおばあちゃんの家で、小学生のときに拾った猫を飼っていたんですけど、おばあちゃんちが浸水して、飼えなくなっちゃって。「殺処分しなきゃいけない」と言われたので、東京に行くとき一緒に連れてきました。それで猫と住んでます。
──それは大変でしたね……。そして優しいエピソードをありがとうございます。続きまして、未沙さん。
未沙 「アイドルをずっとやりたかったしな」みたいなノリでオーディションに応募して、2回目で合格しました。1回飛ばしちゃったんですよね。
サクライケンタ(diigプロデューサー) え、そんなことあったっけ?
──面接に行かなかったということですか?
未沙 行かなかった(笑)。ほかのメンバーには言ってなかったですけど。
なのは 初めて聞いた!
未沙 そのときは大学に行くか行かないかという時期で、最終的に進学を選んでオーディションを飛ばしたんですけど、入学してすぐに「絶対向いてねえわ」「周りと違いすぎて無理やん」と感じて辞めちゃったんです。そのときにもう1回オーディションをやっていたので、「やるしかねえな」と思って応募したら、受かりました。
──一度行かなかったオーディションを受けようと思ったのがすごいです。気まずかったのでは?
未沙 いや、けっこう図々しいところがあるので「全然いけるっしょ」って(笑)。親もめちゃくちゃユルいんで、「なんでもいいんじゃね?」みたいなノリで。そうしたら受かって、「うちアイドルやるわ」「ガチか」とか話しましたね。
──もともとアイドルに興味があったんですよね。
未沙 中学生くらいのときはアイドルが好きでした。そのあとは金子理江ちゃんとサクライ(ケンタ)さんがやってたIlieが好きで、めっちゃライブを観に行ってました。
かてぃ推薦のシノ、唯一のアイドル経験者なのは
──そしてシノさん。
シノ 自分はもともとかてぃちゃんがめっちゃ好きで。かてぃちゃんに近付こうと思って「ミスiD」を受けたら賞をもらったんですけど、そのことをかてぃちゃんにDMしたんですよ。「見てもらいたいな」くらいの気持ちで。そうしたら「一緒にお仕事しよう」って返信が来て、LINEのQRコードが送られてきたのが始まりです。当時は15歳くらいで、Haze(※かてぃが結成したガールズバンド)の曲「引きこもりロック」のミュージックビデオにも出演させてもらいました。
──そこからdiigにつながっていくんですね。
シノ かてぃちゃんは東京に行くたびに会ってくれました。悩んでいたことも相談に乗ってくれたんですけど、あるとき「次、東京来るとき教えて」って言われたんです。それで会ってみたら「アイドルを作ろうとしてるんだけど、シノちゃんどう?」みたいな話になりました。自分は高校を卒業したあと行く場所がなくて、モデル事務所をめっちゃ受けたんですけど、全部落ちてしまって。「どうしよう」と思っていたときにかてぃちゃんが声をかけてくれたので、「これはやるしかないな」と思って加入しました。
──そのタイミングで上京してきたんですね。
シノ 愛知から上京しました。東京がずっと好きで、何者かになりたい気持ちはずっとあったので。もしdiigが結成されていなくても、いつかは上京していたと思います。
──シノさんは唯一のオーディションを受けてないメンバーということでしょうか。
シノ そうです。顔合わせの3日前くらいに呼ばれたので(笑)。サクライさんとかてぃちゃんの面接があって、あとはカラオケで歌う動画も送りました。
──なのはさんはグループ唯一のアイドル経験者ですよね。
なのは 私はもともと別のグループに所属していて、サクライさんが提供してくれた楽曲が好きだったので、ekomsのオーディションを受けました。
──そのグループが解散したあともアイドル活動を続けたいと思っていたのでしょうか。
なのは はい。解散することになった時点で、前の事務所の方から「ほかの事務所さんからも声がかかってるよ」って教えてもらっていたんですけど、私は途中で加入したので、今度は新しいグループでイチからがんばってみたいなと思っていて。ekomsのオーディションは新グループを作るため、ということだったので受けようと決めました。
──ほかにオーディションを受けたりはされたのでしょうか?
なのは いえ。「曲が好きじゃないとできない」というこだわりが自分の中にあったので。
──以前所属していたグループに対し、不完全燃焼みたいな思いもあったのでしょうか。
なのは そうですね。いい状態で解散したわけではなかったですし、初めて所属したグループだったけど、9カ月しか活動できなかったので。また始めたいという思いはありました。
第一印象は「ぶつかりそう」、怒られまくって徐々に団結
──というような背景があり、グループが始まるわけですが、メンバーと顔合わせしてみて率直にどう思いましたか?
瑠香 ぶつかりそう。
なのは ヤバそうだとは思ったよね(笑)。
未沙 私はすごい話しかけました。瑠香となのははレスポンスしてくれて、さらとシノはしゃべってくれなかった。
瑠香 (シノに対して)顔合わせの日、1回も笑わなかったよね。「この子は笑わない子なんだ」と思った。
シノ いや、普通に人見知りだもん。女の子と仲よくできるタイプじゃないんだよ。だから、仲よくせんでいいかなって。未沙は話しかけたって言うけど、ずっとツムツムやってたよ。
瑠香 そうそう、一番気まずい空気作ってたよ。
未沙 ツムツムやってたのは顔合わせが始まる前ね。私が一番乗りだったから、待ってる間に。
瑠香 シーンとした空気の中、ツムツムを音ありで。
──初対面の人同士で集まっているのに、音を出してやってたんですね(笑)。面白すぎます。
未沙 それは音ありでやりたいから。ハマってたんです。クエストとかやらないといけなくて。でも、みんなといるときにやってたか?
なのは やってたよ!
シノ 帰りのエレベーターでもやってた。
未沙 えー、記憶ない。
──ぶつかりそうと思ったというのが容易に想像付きますが(笑)、そこからどうやって打ち解けていったのでしょうか。
未沙 初めにカバー曲として練習した(悪魔のキッスの)「カスタムラブドール」の振り入れのときかな?
瑠香 そこでちょっと仲よくなって、その次の「vanilla」で深まったんだよ。
シノ そうそう、「vanilla」の振り入れのときに、うちらがめっちゃ先生に怒られちゃったんです。マネージャーさんに「長文でLINE来てるよ」と言われ、「マジか」ってざわついて。それで、私もメンバーのみんなに「メンタル大丈夫?」とか送りました。
未沙 なのはからも連絡来たね。
瑠香 「がんばろうね」ってやりとりした。
シノ グループLINEでも「うちらがんばってるし、一致団結しようよ」とか、熱い話をしたね。
瑠香 でも落ち込んだとかじゃなくて、「そんな怒られんの?」みたいな感じだった気がする。
未沙 「死ぬほどやってるのになんで?」とか思ったけど、怒られてはいるから、内心はしょんしょんしてる、みたいな。
──先生は何に対して怒ったのでしょうか?
シノ 態度がナメてる、とか。
瑠香 振付を覚えるのも遅いって言われたよね。
シノ 普通に下手だったんだよね、ダンスが。
瑠香 なのは以外の4人はアイドルの経験がなくて、何もわからない状態だったので。
──進むのが早いのか遅いのか自体もまだわからないでしょうしね。なのはさんは経験者として皆さんをリードしたりする場面はあったのでしょうか。
なのは いや、恐ろしくて何も言えなかったです(笑)。「新しいアイドルグループでがんばるぞ」と思っていたら、すごいお姉様方が現れて、ビビっていたので。「どうしよう、これやっていけるのかな」というのが最初にありました。
瑠香 ちょっと年の差もあるしね。でもなのはは「カスタムラブドール」の振り入れのときにけっこう引っ張ってくれたんです。うちらと違って経験者はすごいなと思ったし、めっちゃ気を遣いながら教えてくれました。
──そうして仲が深まっていったわけですね。
シノ 怒られることが多かったのは大きいかも。
さら ライブでも毎回怒られてたよね。「ちゃんと挨拶しなさい」とか。
シノ そのたびにみんなで話し合ってました。
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5人のうち、誰か1人でも欠けたらdiigじゃない


