内田勘太郎と甲本ヒロトによるブルースユニット・ブギ連が、初のライブアルバム「ブギる心」をリリースした。本作には2024年に開催されたライブツアー「第2回 ブギる心」の京都・磔磔公演より、選りすぐりの計7曲を収録。「危険!脳天に穴開く衝撃音!」というアルバムのキャッチコピーに偽りなく、ライブ当日の熱量やパワーが臨場感たっぷりにパッケージされている。
歌、ハーモニカ、ギターというシンプルな編成ながら、即興性のある演奏でリスナーを引きずり込むブギ連。そんな彼らの結成の発端は、2013年に神奈川・横浜のライブハウス「THUMBS UP」で開催された内田の定期ライブ「YOKOHAMA MEETING」に、甲本がゲスト出演したことだった。今年9月、入居する総合施設・相鉄ムービルの閉館および取り壊しにより、28年の歴史に幕を下ろす同店。音楽ナタリーではライブアルバムの発売とTHUMBS UPの閉店という節目に際し、内田とTHUMBS UPのオーナー・佐布仁之氏の対談をセッティングした。内田と甲本が初めて共演した日の思い出や、ライブアルバムの聴き応えについて2人に語り合ってもらった。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / 吉場正和
「あ、ブルースだな」甲本ヒロトと初めて音を合わせた日
──内田さんがTHUMBS UPで「YOKOHAMA MEETING」をスタートさせたのは2007年。もう20年近く前ですね。
佐布仁之 今まで50回以上やっていただきました。ヒロトさんに出演いただいたのは2013年の11月で、そのときすでに21回目だったんですよね。もともと勘太郎さんにソロでライブをやってもらっていたところ、「誰か連れてきて何かやろうかな」と言っていただいて、そこから始まった感じです。
内田勘太郎 そうだね。年に何回か、定期的に。
佐布 「『YOKOHAMA MEETING』というタイトルで何かやろう」って。もともと有名なミュージシャンのお知り合いがいっぱいいるから、僕としては本当にありがたいお話で。「ぜひぜひやりましょう」と答えました。
内田 1回目、誰か覚えてる?
佐布 誰ですっけ……?
内田 ダイアモンド☆ユカイ。
佐布 ユカイさんだ! ユカイさんはステージにいるときと飲んでるときのテンションがまったく変わらないのが面白いですよね。
内田 一緒なんだよね、誰といるときも。作り物ではないんだよ。
佐布 ちょっとした天然な感じが、飲んでるときもまったく同じで。「面白い人だな」と思いました。
内田 いろんな人とやったけど、エディ藩さんと厚ちゃん(ゆずの岩沢厚治)が一番出演回数が多かったよね。あと、斉藤和義さんに来てもらったときは店がパニックだった。お客さんが前日の夜中から並んじゃって。
佐布 うちのスタッフが慌てて整理番号のチケットを配ったら、「そんな話は聞いてない!」ってファンの人たちに詰め寄られて、えらいことになっちゃった。僕らとしても、そういうふうにわーっとたくさんの人が来るイベントは初めてだったから。
内田 人気者なのはもちろんわかってたけど予想以上で、和義くんには「断ってくれてもよかったのに」と言いました(笑)。
佐布 そのときの経験から、岩沢くんや、ヒロトさんにも出てもらったときはスムーズに開催できましたね。
内田 ヒロトさんに出てもらえたのはすごくうれしかったな。「一緒にやろう」とはずっと言ってたんですよ。ことあるごとに。彼には抱えてるものもあるから軽はずみには行動できないと思うんだけど、「やってみるか」という話になったときに家に呼んでもらって。最初の取っかかりは特になかったけど、ブルースの曲を日本語でやり始めたんです。そしたらすごくいい天気の日だったのに、一天にわかにかき曇り、豪雨が降って雷が鳴り出して「あ、ブルースだな」と思ったんですよね。そうして終わる頃には鳥がチュンチュンと鳴いて、いい天気になった。そのあと、お酒も飲めるおいしいカレー屋があるからって誘われたんだけど、浅草で親戚と会う約束があったから、後ろ髪を引かれながらヒロト宅を出たのをよく覚えてますね。
佐布 そうだったんですね。
内田 で、ライブの本番の日になったら、彼はすごく早く会場に来て楽屋でハープを吹いてたんです。その姿がめちゃめちゃ絵になっていて。ワンステージ2時間やってとてもいい感じで終わり、「もうこれでアルバムも作れるのにな」と思ったんです。曲もそろってたし。それで「アルバム作ろうや」と言ったんですけど、ヒロトさんはただほほえんでるだけでした。何も言わずに流されましたね(笑)。ブギ連の1stアルバム(「ブギ連」)を出したのが2019年だから、ライブから6年も経ってるわけで、さすが慎重だよね。でも俺と2人でやることに関して、ヒロトさんの中では途切れてはないんだと思います。ちゃんと頭の片隅にある。
佐布 勘太郎さんはいろんな人と「YOKOHAMA MEETING」をやってますけど、相手の方がレジェンドである勘太郎さんに対してリスペクトの心がありすぎて、萎縮しちゃうときもあるんですよ。その一方で、お互いに張り合うようなライブのときはすごいですね。「行くぞ! 行くぞ!」という空気が。勘太郎さんも相手のほうから来たら絶対に応えるし。別に目で合図するでもなく、音だけで盛り上がっていく雰囲気がヒロトくんのときはものすごく感じられたんで、すごくいいライブでしたよ。
内田 そういう場を与えていただけることが非常にラッキーだよね。演奏ってもともと予定調和なものではないから。時間や場所を約束してやるのが普通だけど、本来は「あ、来てんだ?」「じゃあやろうや」みたいに始めるもので。
佐布 予定調和じゃないときのいい“ズレ”にやっぱりゾクゾク、ワクワクしちゃいますね。
ブギ連では奇跡のようなことができちゃう
──ヒロトさんが出演した「YOKOHAMA MEETING」では、ザ・ブルーハーツの「ラブレター」が演奏されました。お客さんにとっては驚きの選曲だったと思います。
内田 俺、知らなかったんだけど、ヒロトさんは普段、昔の曲をやらないんだってね。
佐布 会場から帰っていくお客さんがみんな興奮していました。
内田 曲を始めたら「は? え?」という空気が広がったね。ブルーハーツが公園のベンチに座って「ラブレター」を歌ってる映像をテレビで観て、「あの曲すごくよかったよ」「あれ、やりたいね」とヒロトさんに言ったら「そうっすか」って別に拒否する感じでもなくて。そのあと2人で少し演奏を合わせたら、彼の中でバッキングに対するこだわりがしっかりあって「ここはこうしてください」「好きにしていいところは好きにして大丈夫です」と言われたのを覚えています。封印していたということすら知らなかったから、よかったのかどうか(笑)。でも好きな曲ですね。
──ヒロトさんは以前インタビューで、この日のライブについて「もう修行みたいな感じでしたね。ガチガチに緊張してた」とおっしゃっていました(参照:ブギ連「ブギ連」インタビュー)。
佐布 えー! 全然そうは見えなかったです。
内田 やっぱり、人間力が半端ない感じがするよね。
──ヒロトさんは「『昔憧れていたあのギターを4、50cmの距離で聴けるぞ。最前列より近いぞ。いい機会だから、恥かいてもいいから参加したい』と思って参加させてもらった」ともおっしゃっていました。
内田 めちゃめちゃ謙虚ですよね。堂々としたもんでしたよ。さすがだなと思いました。
佐布 さっき言ったように、緊張しちゃって力を出し切れないような人もいるけど、ヒロトさんはそういう雰囲気が全然なかった。むしろ乗っかって上から行くぞ!という姿勢に見えました。
内田 緊張はするんですよ、誰だって。だけど緊張して手が動かなくなるようではダメだし、緊張しないような人もダメなんですよね。ヒロトさんはそこをうまくいいほうに持っていくんだと思う。
佐布 そうですよね。
内田 ヒロトさんとは歳は離れているものの、ブルースで違和感なくつながってる感じがあって。普段は彼も忙しいし、会うこともなく酔っ払って電話をかけるくらいなんですけど、2年前に「アルバム、2枚目作りますか」という話になったんですね。で、3分の曲は3分で録音が終わるし、そのあと明るいうちに飲みに行っちゃうという。なんていい加減なんだろうと思う人もいるかもしれないけど、「音楽ってそういうもんだ」とも感じるんですよ。ブルースという大きなお題があるからすごく自由度が高いし、たった2人であっという間に曲ができちゃう。自分たちで言うのもなんだけど、甲本ヒロトという人間のすごさだよね。感性とボーカルとハープのトーンのすごさ。奇跡のようなことができちゃう。あえて作り込まずに録音に臨んで、そのときのぶつかり合いで曲ができる。
──そういった流れで2024年に2ndアルバム「懲役二秒」をリリースしたと。
内田 そして今回はライブのアルバムが出るという。これもすごく興味深いよね。ブギ連は、まさしくライブのためのデュオだから。
佐布 ホントにそうですね。
内田 しかも古巣である京都の磔磔で録って。「とりあえず回しとこうか」という温度感で録音していたんですけど、音源を聴いたら、ヒロトさんとしても「これは音源で出そう」と思ったみたいで。
佐布 ライブアルバムを聴かせていただきましたが、とにかくパワーがすごいなと(笑)。のっけから終わりまで迫力があって。すごいライブ盤だなと思いました。
内田 たった2人だけど、2人じゃない感じがするよね。
佐布 そうですね。音圧もあって。
内田 いやあ、録っといてよかったですね(笑)。
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ちゃんとしたステージを作ればミラクルが起きる


