AK-69が活動30周年を迎え“出禁”の武道館に帰還、その歩みと熱狂の瞬間をプレイバック

今年アーティスト活動30周年を迎えた愛知県小牧市出身のラッパーAK-69が、通算6回目となる東京・日本武道館公演「THE ENLIGHTENMENT in BUDOKAN 」を6月9日に開催した。

4年前の2022年に開催した前回の公演で武道館を“出禁”となっていたAK-69。その後も彼は止まることなく幅広く活動を続け、2025年には横浜アリーナでの単独公演を成功させるなど、アーティストとして存在感を増し続けてきた。この記事では、武道館帰還に至るまでのAK-69の歩みを振り返りながら、当日の模様をレポートする。

取材・文 / 大塚雄二撮影 / Masahiro Yamada、Kosuke Ito、Daiki Miura

お茶の間でも大活躍

AK-69が開催した2022年の前回公演「START IT AGAIN in BUDOKAN」から現在までの歩みを振り返る中で、いわゆる「お茶の間」的な活躍が大きな注目を浴びていることは間違いないだろう。2025年5月にABEMAでスタートした「AK-69のNGナイトフィーバー」でメインMCを務め、高いバラエティ適性を見せた彼は、Netflixで昨年配信された“ヤンキー純愛リアリティショー”「ラヴ上等」でMCを担当すると、的確なトークスキルや情報把握力、持ち前の茶目っ気を発揮。メディアスターとして大活躍し、共演したお笑い芸人の永野に「ヒップホップ界の美輪明宏さん」と言わしめたほどだ。

ネット配信番組にとどまらず、千鳥が司会を務める「相席食堂」でのぶらり旅ロケや、「しくじり先生」への出演も果たした。後者では、過去の逮捕や少年院での経験、下積み時代の苦労、ライブでの失敗談などを赤裸々に語り、自身の経験を教訓として視聴者に届けている。加えて、2026年2月放送のテレビ朝日「ガリベンチャーV」では、名古屋の台湾料理店「矢場味仙」の公式社歌「LOYALTY」を、同じく名古屋をフッド(地元)とする盟友・DJ RYOWとともに制作。3月には読売テレビ「秘密のケンミンSHOW極!」に愛知県代表として出演するなど、多岐にわたるメディア展開で圧倒的な存在感を示している。

東海にルーツを持つラッパーとしてのブレない存在感

このような“お茶の間”に向けた幅広い活動を展開する一方で、自身の音楽活動においてはタレント的な動きに流されることなく、「アーティスト」「ラッパー」としての本分をぶらさず提示し続けている。特筆すべきは、東海エリアのニューヒーローとして存在感を確固たるものにしている¥ellow Bucksとのクリエイションの動きだろう。

2020年の「Bussin'」から始まったコラボレーションは、2024年にジョイントアルバム「Flying To The Top」として結実。同作は、東海圏におけるヒップホップの血脈とその結束の強さ、そして精神性の継承を明確に示した。また、収録曲「Bussin' (feat. MaRI & C.O.S.A.) [REMIX]」では、彼らと同様に東海エリアにルーツを持つMaRIとC.O.S.A.を起用。この点においても、「ローカルとは、フッドとは何か」という問いに対する答えを改めて形にしている。

ジャンルや世代を超えた幅広いコラボレーション

そういった動きと並行して、CHANSUNG(2PM) & AK-69 feat. CHANGMIN(2AM)名義での「Into the Fire」を制作。さらに、クロスカルチャーを象徴するようなアプローチを見せるMIYACHIとのフィーチャリング作「DO ME feat. AK-69」をリリースするなど、アプローチの幅広さを具体的な作品として証明した。

こうした多様なコラボレーションを含め、彼の多角的な活動が1つの結実を迎えたのが、2025年1月にリリースされたソロアルバム「My G's」である。中でも、客演にILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、トラックメイカーにdj hondaを迎えた「道 feat. ILL-BOSSTINO」は大きな話題を呼んだ。

ストリートやアンダーグラウンドを出発点としそれをぶれさせない姿勢、リスナーを鼓舞するタフなリリシズムなど共通点は多いものの、これまでシーンや作品、そしておそらくリスナー層でも交わることのなかった2人がタッグを組み、日本のヒップホップシーンを黎明期から支えるdj hondaのビートの上で共演を果たすという事実は、多くのリスナーが驚きをもって迎えた。そしてその作品性においても、1990年代後半から2000年代前半にかけて名を刻み、現在もフロントラインに立ち続ける2人が、これまでの歩みを振り返りラッパーとしての哲学を語る姿からは、「組むべくして組んだ」という必然性が感じられた。

加えて、同い年(1978年生まれ)である般若、タイトル曲「My G's」で共演したSEEDA、そしてYZERRやWatsonといった、シーンの価値観や意識を現在進行形で転換させているキーマンが多数参加している点も見逃せない。

精力的なコラボレーションの先にあったのが、キャリア初となる横浜アリーナでのワンマンライブ「69 -My G's in YOKOHAMA ARENA-」の開催だ(参照:AK-69が横浜アリーナで語った“本質”と“使命”)。MA55IVE THE RAMPAGEなどアルバム参加アーティストに加え、TAKUYA∞、ISSEI、木梨憲武らもゲストとして駆けつけ、彼のステージに華を添えた。

現場の「皮膚感」を忘れないという矜持

さらにその直後、AK-69はライフワークとも言えるライブハウスツアー「AK-69 LIVE TOUR 2025 ENLIGHTENMENT Ⅱ – Road to 30th year –」を開催した。オーディエンスと至近距離で向き合うライブ体験を重視する姿勢には、現場の「皮膚感」を忘れないという彼なりの矜持が表れていると感じさせられる。

そして2026年1月14日にはベストアルバム「BEST OF AK-69 "Yellow Gold"」をリリースした。この作品には「START IT AGAIN」「And I Love You So」「Ding Ding Dong~心の鐘~」「THE RED MAGIC」といったキャリアを彩るクラシックを含む20曲をすべて歌い直し、ミックスやマスタリングも新たに刷新して「2026 Remastered」として収録。現代の音質で再提示することで、それらが色褪せないクラシックであることを改めて証明した。

続けて彼は5月29日に新曲「THE ENLIGHTENMENT」を発表。2024年のツアーからテーマに掲げてきた「Enlightenment(啓蒙)」を楽曲へと昇華して自身の行動原理や根底にある意識を提示し、さらにリスナーのマインドを変革させるという、現在の彼の指向性を作品として顕在化させた。

その意識は、前回の武道館公演である2022年の「START IT AGAIN in BUDOKAN」でもつまびらかになっていた。コロナ禍の波の中にあった当時、マスクの着用やワクチン接種に対する疑義、そしてその風潮に対する憤りをMCで語り、実際にライブ中でもマスクを外すことをアピールしたため、以降は武道館を“出禁”となっていた。