ナタリー PowerPush - agraph

新鋭エレクトロニカアーティストのアニヲタ疑惑を徹底検証

オタク疑惑検証インタビュー

入り口は「女神さま」「AI止ま」

──えーと、次はですね……。

牛尾憲輔

(率先して)まずオタクの来歴から話していいですか? バンダナにシャツインで。袖まくってもいいですか?

──お任せします(笑)。まず、オタク文化にハマるきっかけになった“原体験”と呼べる作品は何ですか?

最初は1989~90年ぐらい……小学校低学年のときに友達の家で読んだ「ああっ女神さまっ」の1巻で謎のモヤモヤを抱えてしまって。それで小学校4年生か5年生のときに「A・Iが止まらない!」っていう、のちに「ラブひな」や「ネギま!」で大ブレイクする赤松健さんの初期作品で開花してしまいました。それから小学校5、6年生で「ときめきメモリアル」、中学校1年生ぐらいで「BLUE SEED」、このへんがたぶん「新世紀エヴァンゲリオン」前の来歴かな。「エヴァ」で一番熱が上がって、お小遣いは長時間のVHSテープにつぎ込んで、アニメを標準で録るっていう。「ごめん、今日『機動戦艦ナデシコ』録らなきゃいけないから帰るわー」みたいな(笑)。

──ははは。小学校のときとかに観るような、いわゆる子供向けのアニメではなく、完全にオタク目線の作品がアニメ原体験なんですね。

そうですね。一番の原体験はマンガで、「女神さま」「AI止ま」などのいわゆる“落ちモノ系”と呼ばれる「女の子が降ってくるマンガ」としてのちに体系付けられるものを追ってました。それから当時、テレビ東京の夕方枠でやってた「声優倶楽部」や、のちに深夜枠で始まる「渋谷でチュッ!」っていう声優さんが多く出演する番組も必ず観ていて。あとは「アニラジ」! それに「銀吠え」とか「ドラゴンアワー」とか……そのへんでマグマだまりというか、スペシウム袋が……。

──「エヴァ」が大流行した1990年代中盤~後半って、ナードコアに代表されるような、テクノとオタクのクロスオーバーみたいな文化がありましたよね。牛尾さんは世代的にそのあたりから入ったのかと予想していたのですが……。

いや、僕は「エヴァ」より前から完全にオタク側です。

「アレ? 牛尾くんイケるクチ?」

──Twitterなどの影響もあるんでしょうけど、最近ちらほらとオタクであることが漏れてしまっているアーティストをお見かけします。牛尾さんもそのひとりですが。

そうですね。ミト(クラムボン)さんとか。ミトさんはもう本当に、初めて打ち上げで会ったときに「アレ? 牛尾くんイケるクチ?」「……ちょっと席移ろうか?」って感じで。

──アハハハハ。

いろんなアーティストさんが集まってる席だったんですけど、2人で端っこに移動して「いやいやいやいやいや!!『化物語』観ました!?」みたいな。「最近のシャフト/新房作品、熱いッスよね」って話し始めて、帰りにはもう肩組んでる勢いで(笑)。

──他にヲタ仲間っていますか?

アーティストでは他にはいないですね。ミトさんぐらい。

──他にも何人かアニメ好きを公言していたり、人前には出さないけども重度のアニヲタだという方の話を聞きましたよ。とあるバンドのメンバーは、好きな声優さんが出演するイベントのためにわざわざ広島まで行ったみたいです。

えっ、ゲスト出演したわけじゃなく?

──普通にファンとして行ったそうです。インタビュー前に牛尾さんにお願いしたアンケートでは「好きな声優」についても挙げてもらいましたが、榊原良子さん、田中敦子さん、山寺宏一さんという人選がまたオールドスクールというか……。

牛尾憲輔

そこはちょっとイイ感じに見られたかったので、カッコつけてしまいました(笑)。最近の声優さんでは名塚佳織さんが一番好きです。

──今、世間では何度目かの大きな声優ブームが巻き起こっていますが、今はそれほど興味がない?

中学、高校のときは声優の声をエディットしたテープで早押し大会やるぐらいにはハマッてたんですけど、最近はどっちかっつうとキャラを通して純粋に楽しんでます。それでも「あいなま(豊崎愛生)かわいいなー」「沢城みゆきうめえなー」とか言ってますけど。

──先ほどシャフトの名前を挙げていましたが、制作会社で一番気になるのはシャフトですか?

シャフトと言えば、やっぱ新房昭之監督の演出と緻密な作画ですよね。全体的に狂ってて、もちろん気になりますけど、本当に病んでるなって思うのはGAINAXです。今期の「Panty&Stocking with Garterbelt」なんて完全に狂ってますよ。「トップをねらえ!」とか「フリクリ」とか、GAINAX関係のスタッフが手がけた作品はずっと追ってます。鶴巻和哉監督や摩砂雪監督がすごく好きなので。あとは、旧東映チーム。特に幾原邦彦監督の「少女革命ウテナ」なんですけど、あれはもともと東映で「美少女戦士セーラームーン」シリーズにたずさわっていた幾原監督が「美少女戦士セーラームーンR」の後にクリエイター集団「ビーパパス」を設立して最初に作った作品なんです。「ウテナ」は榎戸洋司さんの脚本と風山十五こと五十嵐卓哉さんが……(以下、延々「ウテナ」論)。

──えーと……。

あれ、これ大丈夫ですかね……?

ニューアルバム「equal」 / 2010年11月3日発売 / 2520円(税込) / Ki/oon Records / KSCL-1649

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CD収録曲
  1. lib
  2. blurred border
  3. nothing else
  4. static, void
  5. nonlinear diffusion
  6. flat
  7. a ray
  8. light particle surface
  9. while going down the stairs i
  10. while going down the stairs ii
  11. lib (remodeled by alva noto)
agraph(あぐらふ)

アーティスト写真

牛尾憲輔のソロユニット。2003年よりテクニカル・エンジニアとして石野卓球、電気グルーヴ、RYUKYUDISKO、DISCO TWINSの音源制作やライブをサポート。2007年に石野卓球主宰レーベル・platikから発表されたコンピレーションアルバム「GATHERING TRAXX VOL.1」にkensuke ushio名義で参加。agraphとしては2008年12月3日リリースのアルバム「a day, phases」が初の作品となる。