時速36kmが6月24日にメジャー1stアルバム「目を閉じても残る赤」をリリースした。
4月24日、東京・代々木公園野外ステージで開催したフリーライブ「時速36km presents『時代』」で、メジャーデビューを発表した時速36km。メジャー初のアルバムとなる「目を閉じても残る赤」は、「最大火力を出した」と語った昨年12月リリースのEP「Around us」のその先を示した作品だ。これまでの10年間で培ってきた時速36kmらしさを軸にしながらも、バンドの新たな側面を感じさせる、バラエティ豊かで強力な1枚に仕上がっている。
今作のリリースを記念して、音楽ナタリーはメンバー4人にインタビューを実施。アルバムに込めた思いや、早くも見え始めているという次作の構想、そして今後の展望について話を聞いた。メジャーデビュー発表直前というタイミングで行われた今回のインタビュー。大きな発表を目前に控えた彼らの率直な思いにも注目してほしい。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 斎藤大嗣
メジャーデビュー発表を前に思うこと
──このインタビューの直後、4月24日には東京・代々木公園野外ステージでのフリーライブ「時速36km presents『時代』」が予定されています(参照:時速36kmが野外ライブで迎えたメジャーバンドの夜明け、その日に照らされた時代の節目と未来)。当日はメジャーデビューシングル「その未来 / ハロー」のCDパッケージのゲリラ販売と合わせて、ポニーキャニオンからのメジャーデビュー、6月24日のメジャー1stアルバム「目を閉じても残る赤」リリース、さらにアルバムを携えた全国ツアー「時速36km presents “市民薄明” Tour」の開催も発表するんですよね。
仲川慎之介(Vo, G) フリーライブなのでいろいろな人が来てくれると思うけど、いつも応援してくれている人たちはそれらの発表に対して驚くというより、「メジャーデビューするんだ」「デビューシングルに『ONE PIECE』の曲が入ってるんだ」「アルバムを出すならそりゃツアーも回るだろう」くらいの温度感なんじゃないかと。そういう人たちを挑発すると同時に抱きしめてあげられるような……「どうよ、いいバンドでしょ」「ここまで来たよ」「これからもこんな感じでやっていくし、たぶんカッコいいと思うよ」「また来てね」みたいなことを、言葉じゃなくてライブで伝えられたらいいなと思ってます。
──さまざまな発表を控えている今、どんな気持ちでいますか?
仲川 ワクワクと不安が同じくらいあります。そこは前回インタビューしてもらったEP「Around us」のときから変わらないですね(参照:時速36km「Around us」インタビュー|葛藤と衝突の果てに生まれた新体制EP)。そのあとに発表した「ONE PIECE」のタイアップを経て気持ちが大きく変わるかもしれないと思っていたけど、引き続き、ただただやれることをやるだけという感じです。
オギノテツ(B, Throat) 僕は前回インタビューを受けたときよりも、不安が大きくなっちゃったかもしれないです。「ONE PIECE」のタイアップを発表して、「その未来」のミュージックビデオを公開して、フリーライブの開催を発表して……というここ1カ月の動きの中で、その1つひとつへの反響の見積もりが、実績として更新されていく感覚があって。思っていたよりも反響が大きかったと感じる瞬間もあれば、逆にそうでもなかったという瞬間もありました。なので、またちょっと読めなくなってきたなと思ってます。
石井開(G, Cho) 僕もオギノと一緒で、ワクワクより不安のほうが大きいです。今回のアルバムの11曲と向き合う中で、「これでいいのか?」「もっとよくできるんじゃないか」とずっと自問していて。今も代々木のステージに向けて、手が痛くなるくらい練習しているんですよ。不安を取り除くためにずっと練習しているけど、どこかで力を抜かないと本番でトチるなとも思っていて。
松本ヒデアキ(Dr, Cho) それは抜かないと。スタバ一緒に行く?(笑)
石井 うん、行きたい(笑)。
松本 EPに今回のアルバムと、しばらく制作期間が続いていたけど、今度はライブを見据えて、新曲を体になじませるフェーズに入っていかなきゃいけない。真面目にやらなきゃ、と確かに肩肘張っちゃってますね。でも最近は、いろいろチャレンジすること自体が楽しくなってきていて。ツアーに向けて細かく調整していくのも楽しみです。
自分の哲学の大部分は「ONE PIECE」でできている
──それにしても素晴らしいアルバムですね。聴きながら心の中でガッツポーズをしてしまいました。
オギノ ありがとうございます。作り終えたあとは次の展開を考えていかなきゃいけないから、つい「不安だ」と言っちゃいましたけど、アルバムを届けていくこと自体に不安はまったくありません。前作(2023年9月リリースの「狂おしいほど透明な日々に」)を超えるアルバムを作れた自信があるので。
──今回のアルバムの1曲目が、テレビアニメ「ONE PIECE」のエンディング主題歌「その未来」ですね。主題歌という文脈を抜きにしても、“時速36kmの新曲”として最高の仕上がりだと感じました。冒頭2小節のキメからインパクト抜群です。
仲川 俺らのことを歌っているようにも、「ONE PIECE」のことを歌っているようにも聞こえる曲にしたかったので、そう言ってもらえてうれしいです。「ONE PIECE」は昔から大好きなマンガで、高校生の頃から「もしも俺が主題歌を書くなら」という感じで曲を作っていたんですよ。だから今回のお話をもらったときは、びっくりするよりも先に頭がフリーズして。でも次の瞬間にはもう歌詞を書き始めていました。俺の哲学の大部分は「ONE PIECE」で作られているので、ありのまま書けばいいと思ったし、言葉はいくらでも出てきましたね。アニメのエンディングってサブスクだと飛ばされがちなイメージがあったので、「スキップせず聴いてもらうためには頭から大きなインパクトを」という意識で作りました。そのためには、最初からドタバタするという。
松本 俺と慎之介の間で「このアニメのエンディングは飛ばさずに観ちゃうよね」みたいな話をしたんですよ。そのときに名前が挙がったのが、「シャングリラ・フロンティア」の新しいエンディング。CVLTEの「realitYhurts.」という曲で、いきなりチップチューンで始まるんですよ。
仲川 あれはカッコいいよね。あと、俺の頭の中にはKOTORIの「秘密」(テレビアニメ「アンダーニンジャ」のエンディングテーマ)もあったかな。やっぱりサビから入る曲は強いなと、あの曲を聴いて思いました。
──皆さんが「ONE PIECE」のエンディング映像を最初に観たのはいつですか?
石井 放送の前日に「映像が完成しました」という連絡をいただいて、俺と慎之介はすぐに観ました。
オギノ 僕と松本は放送まで我慢しました。僕は放送を観ても実感が湧かなくて。だけどそのあとにYouTubeで公開されたノンクレジットエンディング映像のコメント欄を見ていたら、実感が湧いてきました。いろいろな言語でコメントが来ていたんですよ。中には「最悪のエンディング」みたいなコメントもあったけど、それもめちゃくちゃうれしくて。
仲川 見た見た。確かにうれしかったな。
オギノ きっと「ONE PIECE」がなかったら、僕らの曲がその人の耳に届くこともなかったと思うので。バンドを10年やってきて、あんなにたくさんのコメントをもらえたことはなかったから、どんな反応であろうとうれしくてたまらなかったですね。
1曲くらいこういう曲があったらうれしいな
──アルバム「目を閉じても残る赤」には、「その未来」のような時速36kmらしい楽曲や、新機軸とも言える楽曲も収録されています。仲川さん作詞による「網膜の奥、ハートの側」、オギノさんが書いた「東京」と、それぞれ6~7分台の大作を書き上げているところにも気合いを感じました。
オギノ 「網膜の奥、ハートの側」と「東京」に関しては、アルバムだからこういう方向性の曲もやろうって話をしたよね?
仲川 そうそう。力が入っているのではなく、むしろ力が抜けているから書けた曲だと思ってます。「網膜の奥、ハートの側」のような曲は、本来やりたいことではあって。今までの俺は、6分を超える曲ができると「どこか削らなきゃ」と考えていたけど、今回は「フルアルバムだし、こういう曲があってもいいよね」という感じで、自然な形で作れたんですよね。
オギノ 僕は書いているうちに、だんだん力が入っていって。恥ずかしいことも気に食わないことも全部書いちゃおうと歌詞を書いていったら、結果的に7分になってました。アルバム全体としては、バラエティに富んだ仕上がりになったと思ってます。
松本 「その未来」や「オーバードライブ」は今までやってきたことの発展形だけど、「Beyond the Sea Above the Lights」とかは新しさがあるよね。
──そうですね。ヒップホップ的なアプローチがかなり新鮮でした。
オギノ バラエティに富んだアルバムを意図して作ったわけではなく、作っているうちに自然とそうなっていった感覚で。
仲川 「Beyond the Sea Above the Lights」に関しても、「新しいことやってやるぜ」というテンションではなく、「1曲くらいこういう曲があったらうれしいな」くらいの感覚でした。
オギノ 作った本人なのに、音像のリファレンスがわかってなかったもんね。今回の制作では、レコーディング前に各曲のリファレンスをメンバー間で共有していたんですよ。エンジニアさんにも「こういう音像にしてほしいです」と伝えていたけど、「Beyond the Sea Above the Lights」に関しては、レコーディング前日に仲川から「どう伝えればいい?」って連絡が来て。
仲川 遊びの感覚で作ったから、リファレンスとかわからなくて(笑)。
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これが等身大の俺らなのか?




