ビッケブランカ“再会の約束”誓った「Devil Tour」完走、客席と作った熱狂に「やっぱこれだよなって」

ビッケブランカが3月28日に東京・中野サンプラザホールでツアー「Devil Tour "Promised"」の最終公演を行った。

2020年3月にアルバム「Devil」をリリースし、4月からはこのアルバムを引っさげた全国ツアー「Tour de Devil 2020」の開催を予定していたビッケブランカ。だが、昨年のこのツアーは新型コロナウイルス感染拡大の影響で実施が見送られていた。「Devil Tour “Promised”」は「Tour de Devil 2020」の振替公演として行われたもの。ビッケは全国5カ所の会場でファンとの“再会の約束”を果たし、約1年越しにツアーを完走した。

ステージ上部、DJセットの前に配された大きな「DEVIL」の「V」の字が光ったのを合図に、「Devil Tour "Promised"」ツアーファイナルは幕を開けた。舞台上から放たれる強い光にビッケのシルエットが浮かび上がると、観客は大きな拍手で彼を迎える。ビッケはオープニングナンバー「キロン」をスピンし、力強い歌声を響かせながら鮮やかなDJプレイを披露。1曲目からハイテンションなパフォーマンスを見せ、オーディエンスを一気に自身の世界へと引き込んでゆく。

バンドメンバーをステージに迎え入れたのち、2曲目に「Shekebon!」をドロップしてさらなる盛り上がりを煽るビッケ。ダンサブルなビートにきらめくミラーボール、ゴールドを基調とした華やかな衣装で踊るビッケのパワフルな歌声と、目の前で展開されるきらびやかな世界観に会場の空気はいっそうヒートアップし、観客は楽しげに体を揺らした。ビッケの豊かなロングトーンが広いホールに響き渡った「Golden」、バイオリンも加わったバックバンドの楽しげな演奏に乗せ、軽やかに鍵盤を叩くビッケが起伏豊かなメロディを歌いこなす「Slave of Love」を終えるとこの日最初のMCへ。ビッケはこのツアーを心待ちにしていた心境を明かし「ちょうど1年、後ろ倒しになりましたけど、やれるだけうれしいですよね」と言葉を噛み締めていた。

聞く者を楽しませる高いトークスキルもビッケの魅力の1つだが、ここで彼は「皆さん大事なことを忘れちゃってると思う。ビッケブランカって、愛嬌があるじゃないですか。でも本来はカッコいいミュージシャンだったハズなんです。全員忘れちゃってるから」と唐突に切り出し「皆さんに思い出してもらうために“カッコいいゾーン”に入ろうと思います」と宣言した。その言葉どおり、続くロックナンバー「Black Rover」ではビッケがかき鳴らすエッジーなギターとシリアスなピアノの音色が交錯。スタイリッシュでダンサブルな「Stray Cat」ののちに披露された「ミラージュ」はヘヴィなバンドアレンジが施され、DJブースに立つビッケはマイクを握る手に力を込めながら、感情をさらけ出すような歌声で聴く者を圧倒した。

「派手なのもカッコいいのも見せたので、次は『ちゃんと聴いてもらおうのゾーン』です」という言葉から始まったセクションでは、「白熊」「Lucky Ending」「TARA」といった人気のバラードナンバーが次々と披露されていく。ピアノの前に座ったビッケとバンドメンバーは彩り豊かなアンサンブルを紡ぎ、1曲1曲を丁寧に届けていった。冬が好きなビッケが「雪を思って作った」という「白熊」では彼の代名詞とも言えるクリアなファルセットボイスがホールに美しく響き渡る。インディーズ時代からのレパートリーである「TARA」は、「Devil」にリミックスバージョンが収録された楽曲。ステージに立つ面々は切なさに満ちた歌と演奏で歌詞の情景を鮮やかに描き出し、オーディエンスは圧倒的な演奏に身を委ねるように聴き入っていた。

ラストスパートを前に、ビッケはひさびさのツアーで全国を回った、その心境をファンに明かした。「忘れもしないですね。ツアーが始まって、皆さんが直接こっちを見て拍手を送ってくれるということをひさしぶりに体感したときに『やっぱこれだよな』って。自粛期間も『普段から家にこもってるから何も変わらない』なんて人に話していたけど、それは寂しさに目を向けないようにしていただけだったんだなと思いました。今日は足を運んでくれて、心からありがとうございます」。彼がそう伝えると、観客は歓声に代わる温かい拍手をビッケに送った。

ドラムが刻むボレロのリズムから「Winter Beat」になだれ込むと、ライブはクライマックスへ。右手で「L」の字を作り「LOVE!」と叫んだビッケは、ファンタジックで壮大なバンドアンサンブルに身を任せて飛び跳ね、ミラーボールの光の粒に照らされながら楽しげにボーカルを響かせる。続く「Ca Va?」では冒頭のフランス語のアカペラパートでファンの拍手が起こるほど客席も熱狂。サビでスモークが噴出するド派手な演出の中、ビッケはエネルギッシュで華やかなステージパフォーマンスを見せ、カオティックで自由な世界観を聴衆に提示した。

2本のバイオリンの音色が曲のスケール感を増幅させた「Avalanche」ののち、本編の最後に届けられたのは「ウララ」。底抜けに明るいサウンドが響き渡る中、ビッケはステージを端から端まで動き回ってオーディエンスを1つにまとめ上げていく。華やかな照明演出に彩られた会場にはハンドウェーブが巻き起こり、そんな様子をうれしそうに見つめたビッケは客席の手前から奥まで、くまなく目をやりながら1人ひとりに手を振っていた。

止まない拍手に応えてステージに戻ったビッケは「え、何？ アンコールですか？」ととぼけつつ「今日はアンコールを受け入れたい！ 何度でもやりたい。だってひさしぶりだもん」と言って観客を喜ばせた。アンコールでは最新シングル曲「ポニーテイル」が披露され、ビッケはまっすぐに優しい歌声で曲を歌い上げる。ステージ上段の「DEVIL」の字の上に腰掛ける彼のリラックスした雰囲気や美しい照明効果も相まって、桜の季節にぴったりなさわやかなムードが会場に充満した。

「声を出せないことや客席の間隔が空いていることをイヤなことみたいに言うけど、僕たちからすれば十分すぎる状況です。みんながこっちを向いて、拍手をくれるだけで」。最後にそう言ったビッケは「また次やるときは違う形で、さらに楽しめたらいいなって思いますよね」と未来への期待を語り、最後に「まっしろ」を歌い届ける。ステージ上と客席が笑顔で手を振り合う光景とともに、1年越しの「Devil Tour」ツアーファイナルは終幕した。

なおGYAO!およびLINE LIVE-VIEWINGでは、4月4日（日）23:00まで本公演の見逃し配信を実施中。加えて各音楽配信サイトでは、ライブのセットリストで作成されたプレイリストが公開されている。