今日もあの街で名曲が 第6回 [バックナンバー]
kurayamisaka清水正太郎がくらやみ坂で語る「kurayamisaka yori ai wo komete」
始まりは“くらやみ坂というバンドがいたらいいな”
2026年6月10日 12:30 14
“地名をタイトルに冠した楽曲”を発表してきたアーティストに、実際にその場所でインタビューを行うこの連載。「なぜその街を舞台にした曲を書こうと思ったのか」「その街からどのようなインスピレーションを受けたのか」「自分の音楽に、街や土地がどのような影響を及ぼしているのか」……そんな質問をもとに“街”と“音楽”の関係性をあぶり出していく。
東京事変、横浜銀蝿、仙台貨物……特定の地名を冠したバンドはいくつもあれど、坂の名前を名乗るバンドは珍しい。品川区は大井町をホームタウンとする
取材・
kurayamisaka清水正太郎がくらやみ坂へ【今日もあの街で名曲が】
お互いに干渉しない感覚が心地いい
──清水さんは、ご出身は愛知県でいらっしゃるんですよね。
愛知です。知多半島という、漁業が盛んなところで育ちました。ウイスキーの「知多」とかが有名なところなんですけど……まあ、ひと言で言えば田舎町という感じです。
──大井町が生活拠点になったのはいつ頃のことなんですか?
上京してすぐの頃は溝の口に住んでいて。就職を機に、大井町に引っ越したんですよ。それが2019年だったので、もう7年は住んでいます。
──数ある街の中からなぜ大井町を選んだのでしょうか?
溝の口で友人とルームシェアをしていたんですけど、その友達が大井町の会社に就職することになったんです。で、なぜか僕も一緒に引っ越して。
──もう一度ルームシェアを始めた。
そうなんですよ。結局僕も大井町で就職することになり、その友達は別の場所に引っ越して……という流れです。
──自ら選んだというわけじゃなく、なりゆきで大井町に住むことになったんですね。
完全になりゆきです。
──もともと大井町にはどういうイメージを持っていましたか?
大手町とよく間違える……。
──そうですよね(笑)。真っ先にそれが出てきますよね。
あとは大井町線の果てというイメージですかね。寝過ごしたときに着いちゃう場所というか。もともとは、そういう印象しかなくて。だから、まさか自分がここまで大井町に愛着を持つことになるとは思わなかったです。
──住み始めてからはどのような印象を持つようになりましたか?
とにかく便利という印象です。都心へのアクセスもいいし、必要なお店はだいたいそろってますからね。ひと昔前のようなネオンを掲げた飲み屋街もあれば、駅から少し離れたところには静かな空間もあって。かなり住みやすいと思います。
──実際に住んでいるからこそわかる大井町ならではの特色はありますか?
特色かあ……。目立った特徴があるかと言われたら、正直あまりないんですよ。でも、だからこそ生活になじみやすいし、お互いに干渉しない感覚が心地よくて。大井町特有のカルチャーみたいなものも感じたことはないけれど、そういう場所のほうが“帰ってきた感”を感じやすいというか。
──カルチャーが強く根付いている街よりも、生活感のある街のほうが肌に合う?
それはそうかもしれないです。カルチャーが根付いている場所に行くこと自体はすごく楽しいし好きだけど、住むとなるとまた別ですよね。大井町のような場所のほうがなんか落ち着く。住めば都というか、別の場所に住んだら住んだで楽しいだろうし、なじむとは思いますけど。でもやっぱり大井町に住んでみて、すごくいい街だなと感じるし、自分にはこういう場所のほうが合ってるのかなと思います。
「くらやみ坂」という名前のバンドがいたら……
──お話をお聞きしていると、やはり大井町には相当強い愛着を持っていらっしゃるんですね。
ずっと住んでいるので、さすがに愛着は湧いてきますよね。kurayamisakaが「from 大井町」とアピールしているのも、最初は自分で「なんだそれ」と思っていたし、「まあでも逆にいいか」くらいの気持ちでやっていたんですよ。でも、それも言ってるうちに愛着が湧いてきちゃって。
──kurayamisakaはメンバー5人全員が大井町にゆかりがあるんですよね。
そうなんですよ。でもこれは本当にたまたまで。特に阿左美(倫平 / B)と堀田(庸輔 / Dr)はもう出身が大井町。フクダ(リュウジ / G)も自転車圏内に住んでいたから、これは“大井町バンド”を名乗るべきだなと。
──大井町という場所が5人を引き合わせたのではなく、蓋を開けてみたらみんな大井町にゆかりがあったと。それは確かに「大井町のバンドだ」と言いたくなりますよね。
ほかに“大井町のバンド”と謳っている人は、自分が知ってる範囲ではいなかったので。じゃあ謳ってみようかなと(笑)。
──大井町の中でも、くらやみ坂という特定の場所をバンド名として付けようと思ったのはどうしてだったんですか?
「旧仙台坂(くらやみ坂)」と書かれた看板みたいなものが東大井のほうにあって。通勤時に毎日その看板の前を通っていたんです。自転車に乗りながら毎日看板を眺めていたら、なんかいいなと思い始めて。くらやみ坂って名前いいな、そういう名前のバンドがいたらいいな……じゃあ作るかと。で、作りました。
──あ、バンド名が先なんですね。まずバンドがあって「バンド名はどうしよう」と考えたわけではなく、「くらやみ坂というバンドがいたらいいな」でバンドを作り始めた?
そうですね。完全に名前が先です。
──それはなかなかレアですね。
確かに珍しいかもしれないです(笑)。そこからメンバーを集めだして、この5人でやることになりました。で、結果的に5人とも大井町にゆかりがあって。
──なんとも運命的な。でも、ここまでローカルな地名をバンド名に冠することにためらいはなかったんですか?
あまり深く考えてなかったかもしれない(笑)。
──やりたい曲の雰囲気に合いそうだなとか、そういう予感はあったりした?
いや、どういう曲にするかとかもまったく決めてなかったので。バンド名を決めて、メンバーを集めて、「曲を作らないとポシャっちゃうな」と思って作り始めて……という順番でした。
──本当にバンド名先行だったんですね。
ただ、僕自身は就職してからずっとライブ活動を続けていて。「せだい」というバンドをやっていたんですけど、そのサブプロジェクト的な感じでもう1つバンドをやろうかなと思ったんです。せだいでの活動を通じてノウハウが蓄積されてきた感覚があったから、この状態で内藤さち(Vo)の歌を生かしたバンドを作ったらいい感じのものになりそうだなと。それで始めたのがkurayamisakaです。
──ちなみに、はっぴいえんどの「暗闇坂むささび変化」という曲もありますが、あれは麻布にある暗闇坂という坂のことなんですよね。
「暗闇坂」という名前の坂は、そこも含めて10カ所ぐらいあるらしいですね。以前「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系で放送されていた番組)で暗闇坂を特集していて。「一番暗い暗闇坂はどこだ」という企画をやっていたんですけど、大井町のくらやみ坂が一番明るかったんですよ(笑)。
──あははは。先ほど自分も初めて行きましたけど、確かに想像以上に大通りに面していて、人通りも激しかったです。
イメージと違ったらすいません(笑)。
街として好きだから掲げてる
──kurayamisakaはプロフィールでも「大井町の5人組バンド」という肩書きを掲げていて、ある意味で大井町をレペゼンしていると思いますし、それは1つのイメージとしてリスナーも持っているものだと思います。ただ、ご本人的には先ほどおっしゃっていたように、単に「ほかにやってる人がいないから」という感覚?
それも本当に何も考えてなくて……。「自分たちがこの街を盛り上げよう」という気持ちはあまりないというか、そもそも僕らがいなくても盛り上がってますからね。僕らが盛り上げなくても再開発は進んでいるし、むしろそれに乗っかろうかなという感覚のほうが強いかもしれない(笑)。まあシンプルに「街として好きだから掲げてる」というところが大きいですね。
──大井町という地名を出し続けてきて、活動に影響はありましたか?
駅前にできた「OIMACHI TRACKS」という商業施設にTOHOシネマズがあるんですけど、そこのご担当の方が「大井町レペゼンバンドということで、よかったらライブの上映会しませんか?」と言ってくださって(参照:「劇場版 kurayamisaka」上映決定、地元・大井町の劇場で4日間)。それは「大井町のバンドだ」と言い続けてきたから実現したことだろうし、うれしかったですね。言い続けてきてよかったなと思いました。
──住み続けてきた街の映画館で自分たちのライブが上映されるのは、どんな感覚でしたか?
感動と困惑が……。
──困惑も(笑)。
まあでも素直に感動が一番強かったかな。そもそも、まさか自分の曲が映画館で流れるとは思っていなかったので。すごくいい経験だったし、お客さんもたくさん来てくれてありがたかったです。
──そもそも大井町に“音楽シーン”みたいなものはあるんですか?
ないですね……。ただ、「シブヤ楽器店」という4階建の音楽スタジオがあって。その4階がライブスペースとしても使えるんですよ。100人ぐらい入るし、ちゃんとステージもあって。そこで社会人バンドみたいな人たちが集まってライブをやったりとか、そういうことはあります。僕もせだいで一度ライブをやりました。
──でも、そのライブスペースによく出ているバンドがいて、界隈みたいになっている、みたいな感じではない?
ではないです(笑)。もっと各々が好き勝手に、自由に使ってる感じで。バンド同士の連帯感みたいなものはない気がします。でも、その空気が非常にいいなあと、僕は思ってます。
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Dino Vibes Daily @DinoLeadingNews
@natalie_mu Oh, that’s such a cool origin story—random thought turned into a real band. Gotta love how these things start.