RHYMESTER

「さんピンCAMP」とその時代 第3回 後編 [バックナンバー]

RHYMESTERが語るヒップホップ史に残る名シーン|「さんピンCAMP」のステージでMummy-Dが発した言葉の真意とは?

宇多丸、Mummy-D、DJ JINにとって「さんピンCAMP」までが青春だった

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伝説のヒップホップイベント「さんピンCAMP」の全貌に迫るべく、当時の関係者や出演アーティストへのインタビューなど、さまざまなコンテンツをお送りする連載企画「『さんピンCAMP』とその時代」。第3回の前編では、RHYMESTERの3人に日本のヒップホップシーンが大きな変化のうねりの中にあった「さんピンCAMP」前夜、1993年から1995年の日々について振り返ってもらった。

エイベックス傘下のcutting edge所属アーティストのためのイベントという側面もあった「さんピンCAMP」に、RHYMESTERはどのような思いで出演したのだろう? 後編ではMummy-Dが日比谷野音のステージで放った「日本のヒップホップシーンは俺たちだけで作ってるもんじゃねえ!」という言葉の真意、彼らにとって「さんピンCAMP」はどんな意味を持つイベントだったのかを語ってもらった。

取材 / 猪又孝、高木“JET”晋一郎 / 高木“JET”晋一郎 撮影 / 大城為喜 スタイリング / 小林里絵 ヘアメイク / 岩城舞

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出演者とリスナー、どちらも初めて見る光景だった

──「さんピンCAMP」のオファーを受けたときのことは覚えてますか?

Mummy-D 確か、まず俺のところに石田さん(ECD)から電話がきたんだ。「『さんピンCAMP』というイベントをやることになって、いろんなクルーからラッパーを呼びたい。ついてはRHYMESTERに出てほしい。ただ尺的にクルーのほかのグループは呼べないんだけどいいかな?」って。それで「メンツに関しては石田さんが決めることだから、そういうのは気にしないでいいんじゃないですか?」という話をしたね。

宇多丸 俺も同じような話をされたよ。「全員出すのは無理なんだから」と俺も答えた。俺たちの出番はかなり前のほうだったから、「まあそういう感じだよね」って納得もしていたし。

Mummy-D だからFGの代表として出たという感じではあったのかな。

宇多丸 でも、当然だけど石田さんが主催者だったというのが、何よりも大きかったよね。

──石田さんが主催に立ってなかったら?

宇多丸 もっとカオスなものになってただろうし、その部分でも石田さんの功績は大きい。でも石田さんも大変だったと思うよ。年齢的にもシーンにいる誰よりずっと上(注:宇多丸と比較すると9歳差)だったから、俺ら世代のラッパーの輪の中にいるだけでも、実はひと苦労だったんじゃないかな。

──その時点で「さんピンCAMP」はビッグイベントという印象でしたか? それとも数あるイベントの中の1つ?

宇多丸 野音という規模でやるんだから、もちろんスーパービッグイベントだよ。当時のラッパーはまだ誰もそんな場所に立ててないし、あの人数、規模感は経験したことがなかった。実際、ステージからの光景は、出演者全員にとって初めて見るものだったよね。

Mummy-D イベントが始まった瞬間、演者がみんなステージの袖から客席を見て「おー、すげえ!」って盛り上がってて。3000人がヒップホップで体を動かす光景は初めて見るものだったし、やっぱり感動したよ。

──以前、Dさんにお話を伺ったとき、「初めての規模だから、出る側も観る側も緊張しちゃって、処女と童貞のセックスみたいにギクシャクしちゃってた」とおっしゃっていて(笑)。

Mummy-D ひどい比喩だし、よくそういう発言を覚えてるな(笑)。

宇多丸 1回こっきりのドキドキとピリピリと……。Dの言わんとすることはわかる(笑)。それくらい、あの感覚は本当に特別なものだったと思う。

Mummy-D お客さんも、こんなにヒップホップリスナーがいて、それが一気に集まるというのは初めての経験だし、光景だったと思うんだよね。だからお客さんはお客さんで、自分たちがワーッと盛り上がってる状況に対して感動してたんじゃないかな。あの空気は二度と味わえないと思うよ。

宇多丸 出る側も晴れ舞台だったから。「この場に立つまで何年苦労してきたと思ってんだ!」という気持ちもあるし、それまでの活動の集大成でもあるし、勝負の場であるってことで、すごく気合いが入ってた。同時に、もろもろの建て付けからして、「とは言えあくまで“cutting edgeの”イベントでもあるわけだから」という感じも、出演者の間にはそれなりに強く漂っていた気がします。その時はそんなこと知らなかったけど、結果として“小室マネー”の恩恵でもあったわけだから。

Mummy-D ヒップホップシーンはもっと小室哲哉さんをリスペクトしたほうがいい(笑)。

宇多丸 いつか会う機会があったらみんな最敬礼で「ありがとうございました!」って言わないと(笑)。

RHYMESTERとILLMARIACHIだけの打ち上げ

──トップアーティストの利益を新規開拓に投資するのはレーベルの機能として当然とも言えます。ただ、当時の「MASS 対 CORE」的なスタンスからすると、その構造を手放しで肯定するのは難しいですよね。ゆえに極端な見方をすれば、「メジャーがアンダーグラウンドシーンを利用した」という捉え方もできる気がします。

宇多丸 いやいや、その読みはさすがに意地悪すぎるよ。そこまでは感じてなかった。ただ、デカいチャンスではあるし出るからには一番盛り上げるつもりでやるけど、さっき言ったようにそもそもcutting edgeのためのイベントだしなぁ、というような気分はなんとなくみんなに流れてたと思う。例えば、さっき言った92年暮れからのペイジャーショックからすれば最重要人物であるはずのTWIGYは、出演しなかったしさ。「TWIGYらしいと言えばTWIGYらしいし、気持ちはなんかわかる気もする」と思ったもん。

Mummy-D 今思えば、「さんピン」に出ないことがブランディングだったのかな。

宇多丸 「We Are The World」に参加する人、しない人みたいな(笑)。

Mummy-D TWIGYはプリンスだね。参加しないほう(笑)。

宇多丸 打ち上げを渋谷CAVEでやるとは言われたんだけど、「絶対、誰も来ないよ」と言ってたら、本当に俺らとILLMARIACHIしか来なかった(笑)。初対面だったTOKONA-Xと「そっちも横浜出身なんだー!」みたいな話で盛り上がったのを覚えてる。

Mummy-D 聞きつけて遊びに来るやつもいなかったもんね。

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──その打ち上げの状況は、YOU THE ROCK★さんが「さんピン」の最後にやったシャウトアウトの熱気とは裏腹な感じもありますね。

宇多丸 俺らは俺らで自分たちの道を行かないとって考え始めた時期だし、みんなそうだったと思う。だから「大イベントというチャンスを最大限生かそう」って感じだったんじゃないかな。少なくとも俺らはそうだった。

──バックステージはどんな雰囲気だったんですか?

DJ JIN みんな楽屋にいなかったよね。

Mummy-D 客席からステージを観てたんじゃないかな。俺も客席で観てた時間が長かったと思う。

宇多丸 バックステージのテンションは高くなかったよね。緊張もしてただろうし。

Mummy-D うん、和気あいあいではなかった。

宇多丸 正直、出る側のパフォーマンスは総じて普段よりはよくはなかった気がする。あの日いつも以上によかったのはRINOくらい? みんな普段のほうがよかった。ブッダだって途中でやり直ししてたしね。コンちゃん(DEV LARGE)がブッダのライブのあとに「全然ダメだった」ってめちゃくちゃキレてたのは覚えてる(笑)。

Mummy-D あー! そうだったね。

リハーサルでも手の内は隠してた?

──リハーサルは覚えてます?

Mummy-D 確かリハは用賀のデカいスタジオでやったんだよ。

宇多丸 よく覚えてるな(笑)。普通はそんなデカいとこは取らないから、やっぱり大舞台だから、ということかな。

Mummy-D みんなで一緒にやる曲もないのに、まとめて集められて。

宇多丸 しかも、誰もちゃんと来なかったんじゃなかったっけ?(笑)

DJ JIN でも、そのリハーサルでギドラがDJ KEN-BO、DJ KENSEIの2DJ体制でライブをしてるのを観て、すげえなと思ったな。

──MUROさんがリハーサルに来なくてDさんがすごく怒っていたというエピソードを聞いたんですが、その真相は?

Mummy-D それは覚えてないなー(笑)。

宇多丸 俺らは真面目だから「みんなちゃんと気合い入れろよ!」みたいな気持ちがあったのかな。

Mummy-D あとね、あの頃いろいろ怒ってたの、俺。石田さんが「さんピン」を盛り上げるために「ブッダにケンカを仕掛けたRHYMESTER」みたいなことをいろんなインタビューで言ってたんだよ。でも俺からしたら「ケンカ売られたのはこっちだよ!」って話じゃん。それで「石田さん、その状況を見てたじゃないですか!」って怒ってたんだよね。そういう流れで、MUROくんが来ないことにも怒ったのかもしれない(笑)。

一同 はははは!

宇多丸 その頃になると、それぞれのグループの自負もデカくなってたしね。一方、石田さんは石田さんで、イベントを盛り上げるためにいろいろ考えなきゃいけないことがあったんでしょう。だから、やる前からもう、疲れ果ててるなと思ったもん。

宇多丸

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Mummy-D そんなときに俺も突っかかっちゃって。悪いことしたね(笑)。

──本根(誠)さんは「MUROさんはリハを欠席することで、手の内を見せないようにしてたんじゃないかな」とおっしゃってました。だから、リハでRHYMESTERが手の内を一方的に見せることになったことに、Dさんは怒ったんじゃないかと推測されていて。

宇多丸 いやいや、それで怒ることはないと思う。俺らも普段からリハでわざと違う曲やったりしてたし。

──みんな、そういう感じだったんですか?

宇多丸 俺らは主に対EAST ENDだったけどね。手の内見せずに本番であっと言わせてやる!って感じは間違いなくありましたよ。やっぱ、やってることの真価を本当に理解してくれるのは、当時は客よりほかの出演者たちだったからさ。

──本番と違う曲やったら、リハの意味がない気もしますけど(笑)。

Mummy-D ホントだよな(笑)。

──でも、それだけ周りを驚かせたかったということですよね。

宇多丸 まあ、そもそもMUROくんの現場滞在時間が最短なのは昔から有名だから(笑)。リハに来なかったのも他意はなかったと思うよ。

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「耳ヲ貸スベキ」に感じていた手応え

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読者の反応

山田耕史 @yamada0221

まさかのTK笑
小室哲哉は日本のヒップホップシーンの超重要人物!笑

RHYMESTERが語るヒップホップ史に残る名シーン|「さんピンCAMP」のステージでMummy-Dが発した言葉の真意とは? | 「さんピンCAMP」とその時代 第3回 後編 https://t.co/StC49LMW0W https://t.co/iqPRpglvUj

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