友成空

Travelin' Man & Woman Vol. 15 [バックナンバー]

友成空がつづる旅エッセイ

「僕にとって旅をすることは、『自分自身のリハーモナイズ』である」

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5月16日は松尾芭蕉が奥の細道に旅立ったことから“旅の日”に制定されています。多くの人にとって人生における大切な要素である“旅”。この連載では、旅好き / ツアーなどで各地を飛び回るアーティストに、旅をテーマにエッセイをつづってもらいます。

今回登場するのは、全国ツアー「友成空 ONEMAN TOUR 『心象風景』」を実施中の友成空さんです。2025年11月リリースの1stアルバム「文明開花 – East West」では“音楽で世界地図を描く”ことに挑戦した友成さんが、今度は自身にとっての旅を音楽になぞらえて表現してくれました。友成さんセレクトの“移動中に聴きたい旅プレイリスト”とともにお楽しみください。

/ 友成空

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そんな時、僕は無性に旅へ出たくなる。

僕の好きな音楽的手法に、「リハーモナイズ」というものがある。

ある曲のメロディはそのままに、後ろで鳴っているコード進行を別のものに入れ替える手法のことだ。たとえば僕は曲を作るとき、1コーラス目と2コーラス目の同じメロディに対して、この手法を必ずと言っていいほど使っている。あるいは、他のミュージシャンの曲をカバーするときにも、積極的にリハーモナイズを試みる。

リハーモナイズの面白い点は、全く同じメロディが、それを取り巻く響きの違いによって、全く別の聞こえ方になるところだ。1コーラス目では輝く朝日のように聞こえたメロディが、2コーラス目では、ふいに夕陽のような切なさを帯びて聞こえてくる。音符は一つも変わっていないのに。面白いでしょう?

なぜ旅にまつわるエッセイで、初っ端からこんな気取った音楽の話をしたかというと、僕にとって旅をすることは、「自分自身のリハーモナイズ」だからである。

さあ、いよいよ本格的に格好つけてしまった。ここまで来たらもう後戻りはできないのだから、いけ好かない僕の自分語りを最後まで読んでほしい。

仮に自分自身を旋律に例えるなら、日常という慣れ親しんだ進行の中にいると、どうしても自分というメロディが予定調和に聞こえてきてしまう。それは、1コーラスだけ作ったデモ曲を、完成させないまま、ずっとループして聴いているような感覚に近い。そりゃあ、飽きてくる。飽きてくると同時に、「この先、曲はどう展開していくんだろう」と知りたくなるのだ。

そんな時、僕は無性に旅へ出たくなる。

ところで、僕は昔から夕暮れという時間が好きだ。思い返せば、僕が10歳のころ初めて作った曲も、オレンジ色の夕陽が水平線に沈んでいく様子を描いたピアノ曲だった。

僕という人間の根底には「夕暮れを愛でる」という旋律がずっと流れ続けている。このメロディ自体は、どこへ行っても、何歳になっても変わることはないだろう。けれど、旅をして訪れる場所、つまり僕を取り巻く「コード進行」が変われば、その旋律が持つ意味は劇的に変化する。

台北の街角、夕暮れ時。
斜陽が差し込んだ「騎楼(チーロウ)」には、無数のバイクが所狭しと停めてある。向こうの店先には、見たことのない南国の果物たち。プラスチック製の椅子に腰掛けて談笑する婆婆(ポポ)。そこに住む人からすれば、なんてことのない夕方の一コマ。けれど、その雑多でカラフルな夕景の中に身を置くと、僕は自分でも驚くほどの、えもいわれぬ郷愁を抱くのだ。

台湾の市街でよく見られる、「騎楼(チーロウ)」という伝統的な建築様式。50年前のフィルムカメラで撮影。差し込む夕陽がお気に入りポイント。

台湾の市街でよく見られる、「騎楼(チーロウ)」という伝統的な建築様式。50年前のフィルムカメラで撮影。差し込む夕陽がお気に入りポイント。 [高画質で見る]

あるいは、鹿児島。
桜島をのぞむ海沿いの国道で、あてもなく車を走らせる。日が沈んでいくのと同時に、世界の彩度が落ちていく。ついにはヘッドライトが照らす一本道と、静かな波の音だけが残る。周囲のすべてが少しずつ目を閉じていくようなその時間に、僕の心は限りなく安らかになっていく。

鹿児島でのドライブの際、窓の外の夕焼けを見て、思わず車を停めたコンビニの駐車場から。

鹿児島でのドライブの際、窓の外の夕焼けを見て、思わず車を停めたコンビニの駐車場から。 [高画質で見る]

ヴェネチアでは黄昏時になると、だんだんと運河の水位が上がっていく。上下左右どこへ目をやっても絵画のようなこの街に、今日もポツポツと灯りがともり始める。仕事終わりの老若男女が小さな店へ集まり、プロセコを片手にお喋りを楽しんでいる。この街の夕暮れは、鮮やかな夜が始まる予感そのものだ。

2月のヴェネチアで、夕暮れの運河をバックに撮影。

2月のヴェネチアで、夕暮れの運河をバックに撮影。 [高画質で見る]

夕暮れが好きな自分。それは幼いころから変わらない、僕という旋律の主題である。しかし旅をして、その土地土地の夕陽を眺めるたびに、僕は新しい自分に出会うことになる。郷愁を抱く僕、安らぎを感じる僕、夜への期待に胸を躍らせる僕。

メロディは一つでも、背景となる「場所」というコード進行が書き換わるだけで、自分という存在が持つ意味合いまでが、鮮やかに変化していく。

旅をしたいと思うこと。
それは外の世界をもっと知りたいという好奇心であると同時に、自分自身の輪郭を明確にさせたいという切実な自己確認でもある。

今はまだ、1コーラスしか書き上がっていない僕という旋律。これからも自分をリハーモナイズし続けて、いつの日か、納得のいくフルバージョンを完成させられたらいい。

移動中に聴きたい旅プレイリスト Selected by 友成空

01. HONNE「Coastal Love」
02. Fourplay「Flying East」
03. Blueboy「Sea Horses」
04. MARO「Flying to LA」
05. PREP「Cheapest Flight」
06. Waa Wei「我在紐約打電話給你」
07. Earth, Wind & Fire「September」
08. 92914「Sunset」

プロフィール

友成空

2002年生まれのシンガーソングライター。小学4年生で作曲を始め、それ以降独学で楽曲制作を続ける。高校2年生のときに事務所へ送ったデモテープをきっかけにシンガーソングライターとしてのデビューが決定。2021年3月の高校生活最後の日に5曲入り音源「18」を発表しデビューを果たした。2024年発表の楽曲「鬼ノ宴」がストリーミング再生1.6億回を突破し、同年5月発表の「睨めっ娘」もバイラルヒットを記録。2025年11月に“音楽で世界地図を描く”をテーマにした1stアルバム「文明開化 - East West」を配信リリース。2026年5月から7月にかけて全国ツアー「友成空 ONEMAN TOUR 『心象風景』」を実施。

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友成空(TOMONARI SORA) @TomonariSora

🗒️コラム掲載🗒️
【短期集中連載】Travelin' Man & Woman👜

友成空がつづる旅エッセイ
「台北の街角、夕暮れ時。 あるいは、鹿児島。 ヴェネチアの黄昏時。 その土地土地の夕陽を眺めるたびに、 僕は新しい自分に出会うことになる」

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