篠原涼子が主演を務め、ジェシー(SixTONES)と藤木直人が共演したドラマ「パンチドランク・ウーマン -脱獄まであと××日-」。同作のBlu-ray / DVD BOXが8月5日に発売された。
同作では、未決拘禁者(有罪が確定していない被疑者・被告人)を収容する拘置所を舞台に、ベテラン刑務官・冬木こずえが強盗殺人の罪で起訴された日下怜治と出会い、道を踏み外していくさまが描かれる。篠原がこずえ、ジェシーが怜治、藤木直人が刑事の佐伯雄介に扮した。
映画ナタリーでは、ソフトの発売にあわせてプロデューサーの鈴木亜希乃にインタビュー。企画の成り立ちをはじめとして、キャスティングに込めた思い、作品の世界観を構築するためのこだわり、俳優たちが“修学旅行状態”で楽しんでいたという舞台裏について語ってもらった。
取材・文 / 前田かおり撮影 / 井上ユリ
現実には実行できないことを、一緒に疑似体験できる
──放送終了から約3カ月経ちました。反響はいかがでしょう。
本当にたくさんのお声をいただきました。物語後半で、こずえが一線を越え始めてから、視聴者の方たちの熱量がまた一段と上がった感じがしましたね。放送が終わってからもテレビ局に手紙を送ってくださったり、SNSへの投稿を続けてくださったりするので本当にありがたいなと喜んでいます。
──反響の中で、特に印象に残ったのはどんな内容でしたか?
やっぱり、多くの方がこずえに感情移入して、彼女が何か行動を起こすことを楽しみにしてくれているんです。こずえには「怜治の無実を信じて逃がしたい」という本人なりの“正義”がある。とはいえ、今まで真面目に刑務官としての職務に向き合ってきたのに、その一線を越えて悪事に手を貸すというのは、現実の世界では難しくて、一般の方には絶対にできないですよね。そこがドラマならではの醍醐味。いただいた声の中には、「もっと早くこずえに一線を越えてほしかった」「裏でこずえが教団全体を脅していてもよかった」というものもありました(笑)。皆さん、こずえの行動に爽快感や痛快さを抱いている印象があって、よかったなと思いました。
それから、本当にありがたいことに、ジェシーさんのファンの方からもたくさんの声をいただきました。特に「彼をキャスティングしてくれた方に何度でもお礼を言いたい」「怜治役にジェシーを選んでくれて本当にありがとう」という内容が多くて、印象に残りました。
──改めて、企画の成り立ち、作品に込めた狙いを教えてください。
アメリカのアラバマ州で、優秀な女性刑務官が囚人とともに逃亡したというニュースを耳にしたのがきっかけでした。衝撃を受けながらもすごく共感したというか、うらやましいと感じたんです。この刑務官はずっと真面目に生きて働いてきたのに、自分が築き上げてきたものをすべて投げ捨てても、1人の囚人を逃がして一緒に生きていきたいと思った。そんなことなんて、人間、一生に一度あるかどうか。とてもドラマチックだと思ったし、それほど人を愛すなんて、誰でもできることじゃない。だから、この物語をドラマとして描けば多くの視聴者に共感してもらえると感じたんです。ドラマの魅力は、現実には実行できないことを主人公と一緒に疑似体験できるところにある。そういう意味で、今回は普段鬱屈している女性に向けて届けたいと思いました。
──鈴木プロデューサーは、学生時代から自主映画を手がけられてきたそうですね。いろいろな作品に触れられてきたと思いますが、そんな中で、今回の「パンチドランク・ウーマン」を作るベースになったような作品はありましたか?
私は海外ドラマが好きで、特に「ブレイキング・バッド」が大好きでした。平凡な高校の化学教師がある事情から道を踏み外してドラッグを作り、やがて麻薬組織のボスになる。誰も思い付かないような破天荒なストーリーですが、今でも自分の中ではナンバーワンドラマで、「いつかこんな作品を作ってみたい!」と考えていました。「ブレイキング・バッド」の主人公は中年男性ですが、日本だったら“真面目に生きてきたのに報われずにいる女性”というストーリーが響くと思ったんです。それで4年前くらいにアラバマ州で起きた事件のニュースを観て、自分の中で「あ、つながったな」と感じて。そこから一気に動き出しました。
──実は“脱獄”ということで、同じ海外ドラマでも「プリズン・ブレイク」が最初に頭に浮かんだんです。
そうですね。でも、「プリズン・ブレイク」は男性たちの群像劇の面白さがメインで、私が描きたいところとは違っていました。もちろん、群像劇の面白さも参考にしてはいますが、女性版「ブレイキング・バッド」を作ってみたかったんです。
──海外ドラマがかなりお好きなんですね。
犯罪を題材にした作品が好きで、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」や、麻薬組織の資金洗浄に家族もろとも巻き込まれていく「オザークへようこそ」も楽しんで観ました。当たり前ですが、現実で犯罪に手を染めることはできないからこそ、非日常を味わえるドラマを自分自身が観るときも選んでしまうし、私が作るドラマにはあまりのほほんとしたものはない。というか、たまに暴走しすぎるほどです(笑)。
こんな篠原涼子さんが見たかった!
──キャスティングについてお伺いします。まず主演の篠原涼子さんは、どんな思いから起用されたのでしょうか。
篠原さんのことがもともと大好きで、昔から憧れていました。私の学生時代には「アンフェア」や「ハケンの品格」など強くてかっこいい女性というイメージが強かったのですが、近年は「金魚妻」「人魚の眠る家」など、ちょっと抑制の効いた女性を演じられている。今回、私はこずえを通してヒロインの変化を描きたかったんです。真面目でクールな人が、いろいろな過程を経て爆発することになる。視聴者を物語に引き込んでいくには、やっぱり篠原さんしかいないと思い、オファーさせていただきました。
──非常にキャラクターにハマっていましたね。
篠原さん自身も、私が作りたいと考える企画やテーマに共感してくださったんです。あとから聞いた話ですが、「初めて会った気がしない」とまで言ってくださって。たぶん「こういう物語を描きたい」という思いが伝わって「この人とは通じ合える」と感じてもらえたのだと思います。実際に撮影が始まってからも、こちらの提案を柔軟に受け入れて、積極的に挑んでくださいました。
──篠原さんもちょうど、今回のような役どころを求めていたとか?
ご本人は「クールで表情がない、笑わないキャラクターをやってみたかった」「無表情なのに、悲しさや熱さが伝わる人物を目指したい」とおっしゃっていました。本当にそれを体現してくださったと思います。
──オープニングシーンで車に乗って逃げるときの表情が、まさにそれでしたね。あの表情を見たときに、このヒロインはいったいどんな過去を持っているのか、どんな人なのかと想像力を掻き立てられました。
実は、あの場面が最初に撮影したシーンでした。まだ最終話まで脚本はできてなかったのですが、その後の物語にどうつながっていくのか、篠原さんはしっかりと計算して演じられていましたね。
──それにしても、今回の篠原さんは俳優として一段、二段ステップアップしたというか、いい意味でフェーズが変わった感じがしました。
視聴者の方たちからも「すごく面白い」「こんな篠原涼子さんが見たかった!」といった声をいただいたのですが、篠原さん自身にも今までの殻を破ってみたいという思いがあったように感じました。
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ジェシーさんは予想をすべて超えてくれる


