映画「
本作は、骨折した義父の世話をするために田舎町へやって来た雄太を軸に、家族の記憶と記録を映し出す物語。雄太は義父の誠が営む昔ながらの写真館の仕事を手伝いながら、東京にいる妻や娘と、スマートフォンで撮った映像を送り合う。大きな事件は起こらないが、日々のささいな出来事により、やがて“家族の人生”という長い時間の存在が浮かび上がってくる。柄本が雄太を演じ、穂志もえかが妻ゆき、イッセー尾形が誠に扮した。
「得も言われぬ色気が漂っている」脚本
柄本が「高校の後輩なんです」と坂西を紹介し、和やかな雰囲気で始まった本イベント。MCのSYOが「素晴らしい映画でした。本作の着想はどのように生まれたのか?」と聞くと、大学時代を思い返す坂西は「なんでもないような日常を誰かに伝えるときに、しゃべり言葉や文章よりも映像で伝えるほうが面白くできるのではと思っていたんです。その初期衝動は卒業してから10年が経つ今でも変わらずある」と口にする。柄本はそんな彼の長編デビュー作となった脚本について「初めて読んだとき、得も言われぬ色気が漂っているように感じて……。『どこへ向かう映画なんだ』と、とても興味深く思いました」と語った。
そんな脚本の構築にトークテーマが移ると、坂西は「“記憶”や“記録”といった大きいテーマをまず書き、そこから自分の観念や実際の出来事をいくつもメモのようにつづって、それらを積み木のように並べていく作業でした。だから僕にとっては“設計図”のような感覚ですね」と丁寧に説明する。SYOが「では現場で気付くことも多かったのでしょうか?」と柄本に目線を送ると、柄本は「いや、現場の雰囲気や物語の背景がけっこう台本に落とし込まれていましたので、現場に行って『こんなところなんだ』と思うことはそんなになかった」と回想。撮影を大分県で行った理由を問われると、坂西は「最初は“記憶と記録”といったテーマだけで脚本を書いていたのですが、僕が通っていた大学の先生でもあった編集の鈴木歓さんから『記憶と記録を、もう九重と阿蘇の野焼きで燃やしてしまおう』とアイデアをいただいて。最初は乱暴だなと思ったんですが、ソリッドでいいご意見だと感じたんです」とエピソードを話した。
役者が自由に考えて持ってきたものを、柔軟に受け止めてくださった
続けて「雄太は歩くシーンが多いんですよ」と切り出す柄本は、「いろいろな音がしたり、鳥が鳴いたりするのにちょっとずつ反応したりして。監督の包容力をもって許してもらいながら、その中でいろいろと大胆に動きました。役者が自由に考えて持ってきたものを、柔軟に受け止めてくださったんです」と坂西の演出に感謝の意を表する。坂西は特に散歩のシーンで綿密に打ち合わせをしたと言い、「テストも含めて、佑さんがちょっとずつ違う散歩を見せてくれて。違和感がなければそれはもう“雄太”だなと、僕自身は初めての観客として『あ、映画になっていってる』と楽しませてもらっていた」と笑顔を見せる。ただ2人は事前に作品の話はほぼしなかったそう。柄本は「近所で飲んだときも、僕が好きなアニメの話をしたり(笑)。でもそんなコミュニケーションも作品には落とし込まれているはずで、そういう時間こそがむしろ大事だったのかなと思います」と言及した。
イッセー尾形はチャーミング、穂志もえかは心強かった
共演者の印象に話が及ぶと、坂西は尾形の芝居に関して「脚本に最低限のことしか書いていない中、シーンに少しユーモアや、観客を楽しませる要素を入れてくださる。佑さんもナチュラルにそれを受け止めていて、脚本以上の融和が生まれていった」とコメント。「ほぼ初対面だった」という柄本も「イッセーさんは本当にシャイで、かつ役を非常に深く掘り下げて考えてくださる方。チャーミングですし、僕も非常に助けられた部分が多い」と続ける。またSYOが「穂志さんのお芝居も本当にすごい。僕も(ゆきの娘・花と)同じくらいの子供がいるので……」と話しかけると、坂西は「花役の井上紫葵ちゃんは初めての映画だったので、現場のルールなどはわからない。それを助けてくれていたのが穂志さんで、横で抱っこしてあげている光景をそのまま映画の“匂い”に残せる方法がないかを考えていた」と述懐。そんな彼女の姿を「心強かった」とたたえる柄本は「穂志さんともそんなに役の話はしなかったけれど、奔放な花ちゃんを緊張させることなく、このまま自由な状態でいさせてほしいということが共通認識としてあった。2人でなんとかうまく距離感を作っていけたと思います」と伝えた。
“策士”坂西だなと
完成した作品を観た感想を聞かれた柄本は、「けっこう撮っていたので『何分の映画になるのかな』と思っていたのですが、初号試写で97分と知って『監督、意外に淡々と狙っていたんじゃないか』と感じましたよ」と答え、「作品を観てそれが確信に変わり、“策士”坂西だなと(笑)。過不足ないスピード感で、おおらかさを保ちつつも時間内に収まっている。どこかで計算していた?」と坂西に質問。坂西は「現場では3時間になるんじゃないかと……」と苦労をのぞかせていた。
最後に柄本は「ヒーローが怪獣を倒す映画がある中で、本作のような日々の営みをじっくりと感じさせてくれる映画が生まれるのもまた必然かなと思います」と吐露。坂西は「昨年の7月に完成したのですが、お客様に観ていただくまでは“完成感”がないなと思っていた。今日こんなに多くの人に観ていただけて本当にうれしいです」と喜びをあらわにした。
「メモリィズ」は6月12日に東京・新宿ピカデリーほか全国で公開。梅沢昌代、伊佐山ひろ子、成田裕介、占部房子、香椎由宇もキャストに名を連ねた。
映画「メモリィズ」本予告
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