第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でワールドプレミア上映された
フォトコールでは、エフィラがサン・ローランのスーツとカルティエのイヤリング、岡本がシャネルのジャケットとプリーツスカート姿で登場。長塚はゼニア、黒崎はTOD'Sを着用し、濱口とともにリラックスした表情を見せた。
がんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・宮野真生子と、臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂による往復書簡をもとにした本作。2020年末から企画を温めていたという濱口は「言葉の多い内容をどう映画にすればいいかわからずにいた」と明かし、「目指したゴールはただ一つ、自分が原作を読んで得た、本当に体が震えるような思いをなんとか映画に移し替えることでした」と振り返る。フランス側プロデューサーのジャン=リュック・オルミエールは、濱口が数カ月にわたりフランスに滞在し、現地の俳優とのワークショップを行って働き方を理解しようとしたことを「例外的で注目すべきこと」と称賛した。
前作「ドライブ・マイ・カー」でも話題を呼んだ「多言語での会話」と、“濱口メソッド”と呼ばれる「感情を排した本読み」について、濱口自身は「俳優が言葉の情報ではなく、体からあふれてくる感情の情報を使って演技ができるのではないか。俳優の集中力を非常に高めてくれるものだと期待して取り入れています」と説明。黒崎は「“濱口スペシャルメソッド”でトレーニングメニューを組んでくれて、乗っかれば自然とたどり着いている、魔法のような演出を受けたという印象でした」と述懐し、長塚も「フランス語のテキストを書き写し、書斎に貼ってその前を通るごとに黙々と読むことを日課にしました。そうやってセリフを覚え、一言一句間違えずに、そのまま、ただ声にするという。『ああ、演技というのはまだこんなにも奥深く、新しい発見があるものなんだな』と思いました」と謙虚に振り返った。
日本語での演技に挑戦したエフィラは「まず『ひらがな』を読むことから習得するように言われました。大変な作業でしたが、これは単なる撮影ではなく、別の世界へ連れて行かれるような、人間としての深い経験でした」と述べる。一方、フランス語での演技に挑んだ岡本も「言語の壁を越えて、身体的・エネルギー的に『本当に通じ合えている』と感じられる瞬間が多々ありました」と手応えを口にした。
会見では、前作「悪は存在しない」との共通点にも言及。同時期に企画が進行していたという2作品について、濱口は「根本的には自分が『何かすごく疲れたな』という気持ちだったと思います。なんでこんなに疲れているんだろうと考えたとき、自分たちがいる社会というものが何かしら作用しているんじゃないかという気持ちが、両作品に反映しているのではないでしょうか」と語る。また本作のテーマである“ケア”については「他者に対する関心」というキーワードを挙げ、「ケアの根本にある、自分たちの関心を奪ってしまう何か」について考えたかったと伝えた。
「急に具合が悪くなる」は、6月19日より全国で公開。脚本には濱口に加え、フランス生まれの通訳・翻訳家であるルディムナ玲亜も名を連ねた。
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小嶋裕一 Yuichi KOJIMA @mutevox
>フランス側プロデューサーのジャン=リュック・オルミエールは、濱口が数カ月にわたりフランスに滞在し、現地の俳優とのワークショップを行って働き方を理解しようとしたことを「例外的で注目すべきこと」と称賛した。 https://t.co/b64X6w3TFh