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佐藤は宮松がたばこを吸いながら振り返り、笑顔を見せるシーンに言及。「あのカットにびっくりして。軽やかで、自然な、裏のない幸せな笑い。あの笑顔を作る秘密は教えてくれなかったんですけど、かつて相当な努力をされたらしいです。香川さんの内部に、どんな状況でも、あの顔を作る構造がある」と語る。また日差しが強い場面では本番中にまぶしい顔をしないよう直前に太陽をじっと見つめ、目を慣らしていた香川の様子を紹介。後日、香川本人から「私が新人の頃に先輩の役者さんに教わったんです。まぶしいと目を細めてしまう。その前に太陽を見て目を“焼き殺す”んです」と聞いたことを明かした。
続いて関は「劇中劇は、“本物の撮影”に見せないといけない。エキストラとしての演技のうまい下手のさじ加減も、香川さんの中でいろんなバリエーションがあった」と述懐。香川はテイクごとに異なる芝居を見せており、平瀬は「エキストラとして斬られるときも、もっと芝居が大きいものもあった。『これは(斬られてないことが)バレる。こんなエキストラの方がいたら画面から外してしまう』と感じさせるようなカットもありました」と明かし、佐藤も「香川さんは超プロですから、かつらをかぶることにも慣れちゃってるんですね。そこでも慣れていないかぶり方を模索する必要がありました。香川さんはすごく頭を働かせていたと思います」と話した。
関は最終日に、香川から「3人の監督は初めてだったけど、いいことだらけだった。OKにも3人分の重みがある。安心して次のシーンに切り替えることができた」と声を掛けられたことを回想。5月は東京藝術大学映像研究科の佐藤の研究室から生まれたユニットであり、佐藤は「3人が同時に企画して、原作・脚本を書いて、撮影・編集するのは、世界でも稀有なこと。各々が集まり、そこから新しい5月という個性が生まれた。我々が標榜しているのは、手法がテーマを担うということ。そこを追求した新しい形が、新しい表現を生むんじゃないかと思っています」と、3人で監督することの強みに触れた。
最後に関は、ある取材でインタビュアーから「2回目に観るとき、途中を早送りしたら、何をやってるのか全然わからなかった」と言われたことを振り返り「そこで気付いたんですが、この映画は早送りすると面白さが生まれない。物語を追って終わりのタイプの映画ではない。迫力も派手さもないですが、そういう意味でもぜひ映画館で観ていただきたい」と呼びかける。また平瀬は「これまでお茶の間で観られてきたのは、激しい動きでみんなを楽しませる“動の香川さん”。この映画に映っているのは、もっと静かな香川さん。そんな香川さんを今観られるのは、この映画だけだと思います」と語った。
「宮松と山下」は新宿武蔵野館、シネクイント、シネスイッチ銀座ほか全国で上映中。
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香川照之の映画作品
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みゅう @yesusclear
香川さん演じる
『軽やかで、自然な、裏のない幸せな笑い』
この笑顔に監督陣は驚かされた。
3人の監督陣がここまで話して下さる香川さん、やっぱりスゴい。
#宮松と山下
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