ヒット作はこうして生まれた! Vol. 13 [バックナンバー]
「超かぐや姫!」SNS施策の裏側とは?宣伝プロデューサーが語る“ファンと一緒にインターネットを楽しむ姿勢”
ファンが盛り上がった投稿、印象深い施策を振り返る
2026年6月18日 18:15 31
2026年1月22日にNetflixで世界独占配信がスタートしたアニメーション映画「
「超かぐや姫!」がここまで熱狂的なファンを生んだ理由の1つには、SNS宣伝施策の秀逸さがあげられるだろう。完成度の高いアニメーションだからこそできた場面カットだけのポスト、武器となった“Live2Dかぐや”、Netflixと映画館の一体感を生んだポスト可能上映などその手法は多彩だ。
ヒット作の裏側を関係者に取材する本企画では、SNS施策に大きく関わってきた宣伝プロデューサー・橋本実咲氏にインタビュー。ファンと一緒にインターネットを楽しむ姿勢や、SNS施策の実例について語ってくれた。SNSで大バズりした「しかのこのこのここしたんたん」宣伝で“面白さの塩梅”を深く考えた橋本氏とチームの試行錯誤とは。
取材・
情報解禁翌日にXフォロワー1万人突破
──まずは、劇場での興行収入25億円突破、おめでとうございます!
ありがとうございます! 劇場上映するにあたり、社内でも興行収入の目標額は立てていたのですが、それを上回る反響をいただけて驚くばかりです。山下(清悟)監督もたびたび言及していますが、「超かぐや姫!」が発表されて以降の反響はすべてが予想外なんですよね。そんな中でどんな施策をすればいいのか、常にスタッフ陣と話し合って、宣伝展開も決めるようにしています。
──それこそ、本作の情報が解禁される以前に目標とされていた数値は、すぐに上回ったのではないですか?
そうですね……。オリジナル作品は、そもそも認知していただくことが原作のある作品と比べるとどうしても難しい部分があり、「放送前にX公式アカウントのフォロワーが1万人いけばいいほう」という考え方が通例としてあります。なので、まずはそこを1つ数値的な目標にしていました。ところが、情報解禁翌日(2025年11月6日)には達成して。そこからは順次目標を更新するようになりました。
──さて、「超かぐや姫!」の宣伝施策について詳しくお話を伺いますが、橋本さんは事前にどのような指針を立てられていたのでしょうか?
SNSアカウントの運用に限って言えば、あまり宣伝・告知らしさが出ないように意識しつつ、ファンの方々と一緒にインターネットを楽しもうという気持ちで取り組んでいます。以前携わっていた「しかのこのこのここしたんたん」もインターネットを中心に広がった作品ですが(※)、その経験が生きたように感じています。とはいえ、SNSアカウントから担当の自我が見えすぎるのもよくないので、絶妙な塩梅になるよう意識していました。それから、SNSアカウントはXとTikTokだけではなく、Instagramやニコニコ動画まで作ろうと最初から決めていましたね。やはりオリジナル作品ということで、やれることは全部やりたかったですし、作品的にも絶対にニコニコ動画でも動画を出すべき、と感じていましたから。
※編集部注:「しかのこのこのここしたんたん」は、2024年から放送されたツインエンジンが製作・宣伝に携わるテレビアニメ。第1話放送開始前の時点で、YouTubeなどで公開されたオープニングテーマ「シカ色デイズ」イントロ耐久動画、Xでシカに関連するニュースがポストされると即座に反応するなど猛烈な“シカプッシュ”が話題に。さらに放送開始後には「シカ色デイズ」のノンクレジット映像が公開5日で再生回数1000万を突破するなど、大きな反響を呼んだ。
どのフレームで切り抜いても自信あり、場面カットだけで勝負
──山下監督をはじめとしたスタッフ陣とは、どのように共同歩調を取られていたのでしょうか。
本作はオリジナル作品ですので、アカウントのテンション感がイメージと合っているのか、初期は山下監督をはじめとしたスタッフ陣に都度確認をしていました。そんな中で、場面カット4枚だけを貼ったポストが特報発表時のポストよりいいねの数が伸びて……。
──月見ヤチヨのライブシーンを切り抜いた4枚の場面カットが貼られたポストですね。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho_KaguyaHime) | X
すべてのフレームで表情がコロコロ変わるキャラクターのかわいさを伝えたい!という意図のポストでした。この反響には、山下監督やアニメーションプロデューサーの桃原(一真)さんも驚かれていました。「超かぐや姫!」はどのフレームを切り抜いてもきれい、となるほど完成度が高いので、私自身とてもやりたかった宣伝方法だったのですが、想像以上の反響をいただけてとてもうれしかったです。小ネタ的な動きを見つける楽しさもあるので、公式で出しすぎないようには心がけていますが、今後も施策の1つとして継続的にポストできればなと思っています。
「超かぐや姫!」公式Xより、切り抜きカットの例
武器を見つけた!Live2D素材を活用
──Live2Dのヤチヨやかぐやも、宣伝用のオリジナル動画に登場しますよね。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho-KaguyaHime-PR) | YouTube
Live2Dは本編で使用されているので、モデルが存在していたんですよ。それならば宣伝でも使わせてほしい!とお願いしたことがきっかけでした。映像の内容は山下監督や原案協力のフジヤマ(ルリ)さんにもアイデアをいただきつつ、宣伝チームで動画編集まで一貫して制作しています。
──Live2Dを使用した初めての動画が投稿されたタイミングは、まだNetflixでの配信前でした。
私はVTuberさんの動画をよく観るのですが、切り抜きで存在を知ってから長尺の配信アーカイブに辿り着くことがあって。それと同じ構造として、Live2Dのショート動画からキャラクターの存在を知って、「超かぐや姫!」本編へ辿り着く人を作りたかったんです。また、本編ではかぐやたちが配信活動をしている描写はあまり多くないので、そこを補完できるようにしたいという意図もありました。かぐやのLive2D初出し動画として、かぐやがニコッと笑っているだけの動画を投稿したのですが、予想以上に反響があって。ただ笑っているだけでもキャラクターをかわいいと思ってもらえるような、へちまさんのキャラクターデザインの強度を改めて感じましたし、宣伝施策の1つとして武器を見つけた瞬間にもなりました。
「超かぐや姫!」公式 (@@Cho-KaguyaHime-PR) | YouTube
「ONE PIECE FILM RED」に学んだ“歌ってみた動画”
──Netflix配信前の大きな宣伝施策として、かぐやとヤチヨによる歌ってみた動画の存在もありましたよね。
歌ってみた動画自体は、宣伝チームが動き始める以前から制作が決まっていました。歌の選定は、企画チームや桃原さんを中心に行っていました。そのうえで、歌ってみた動画をよりお客さんに楽しんでもらうために、自分の発案でYouTubeの概要欄に歌詞の一部を書いたんですよ。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho-KaguyaHime-PR) | YouTube
というのも、数年前に「ONE PIECE FILM RED」が大ヒットを記録しましたが、劇中に登場するウタの楽曲のMVが映画公開前にYouTubeにアップロードされていて。その中の1曲である「私は最強」を聴いたときに、ウタは自分のことを強いと喧伝したいのではなく、そう自分に言い聞かせている、実は弱いところのある子なんじゃないか、と感じたんです。つまり、楽曲の歌詞から、キャラクターへの想像をふくらませたわけですね。そのときに感じたことを転用できればと思い、かぐやとヤチヨの歌ってみた動画には、彼女たちのバックグラウンドやキャラクター性に興味を持ってもらえるようなフレーズを引用して、概要欄に記載しました。
記念ポストは作品関連の数字でお祝い
──先ほどお話に出たX公式アカウントのフォロワー数が1万人に達成したタイミングでのポストについてもお話を伺わせてください。あのときは「1万人達成」ではなく、8000歳という設定の月見ヤチヨにかけて、あえて「8000人達成」を祝うものになっていました。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho_KaguyaHime) | X
宣伝チームのメンバーから上がってきた案でした。ヤチヨの8000歳であったり、(主人公の)酒寄彩葉の語呂合わせである168、(作中に登場する仮想空間の)ツクヨミの語呂合わせである2943だったりと、作品関連の数字でお祝いしたほうがキャラクターや世界観をより知ってもらえるきっかけになるかなと思い、8000人達成記念ポストをしたんです。(1万、10万といった)区切りとなる数字以外でも記念ポストをすることが自分たちの首を絞めることになったのですが……。
──YouTubeにアップロードした動画が100万再生されたタイミングなどでも逐次ポストをしていますからね(笑)。その際にはデフォルメ姿のかぐやのビジュアルもよく使用されている印象があります。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho_KaguyaHime) | X
キャラクターが楽しそうにしている様子が伝わる画像のほうが、単に数字のスクリーンショットを貼るだけよりも親しみやすさを感じてもらえるかと思って。なので、基本的にお祝いごとはキャラクタービジュアルを使用してポストしています。一方で、上映イベントなどで関連ワードがトレンド入りしたタイミングでは、スクリーンショットを並べたり、キャラクタービジュアルをいっぱい使用したりと、ただ報告するだけにはならないように宣伝チームのみんなで知恵を絞っています。
オリジナルキャラのビジュアル画像で注目→声入りPVでブースト
──YouTube上の動画といえば、劇中曲のMVが多数投稿されていますよね。
当初MVの数は少なかったのですが、私は「サビだけでもいいからできれば全部作りたい」とずっと言っていて。なんなら自分で動画制作を勉強して作ろうとすら思っていました(笑)。途中でプロジェクトの方針が変わり、Black onyXの「OnyXXX」まで作ることが叶いました。「OnyXXX」のMV制作は、歌ってみたMVも担当してくださったSHIGさんにお願いできて、とてもかっこいい内容になっています!
オリジナルアニメ映画「超かぐや姫!」より、ブラックオニキス「OnyXXX」ミュージックビデオ
──ちょうどBlack onyX の名前が出ましたが、橋本さんが予想外に拡散されたと感じているものの1つに、Black onyXのキャスト発表があったそうですね。
かぐやたちもそうですが、予告映像の中にはメインキャラクター全員のセリフをマストで入れなくてもいいだろう、と考えていたんです。なので、Black onyXの(駒沢)乃依は先にキャラクターデザインがお披露目されている状態になっていたのですが……。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho_KaguyaHime) | X
予告映像の解禁翌日に声が付いたキャラクターPVを投稿したところ、かなりの反響があって。松岡(禎丞)さんがかわいらしいキャラクターを演じることがまず注目されていた状況がありつつも、声が出てブーストが掛かったように感じています。この反響の大きさは、配信前は誰もキャラクターのことを知らないオリジナル作品ならではの流れでしたね。
「超かぐや姫!」公式 (@Cho_KaguyaHime) | X
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