イラスト / トモマツユキ

平成ドラマ委員会~懐かしドラマを令和に観てみた~ Vol. 5 [バックナンバー]

ひらりさと「のだめカンタービレ」| おもしれー女とおもしれー男のポジティブフィードバック

千秋もめちゃくちゃ「おもしれー男」だった!

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そこまで昔というわけではないけれど、改めて観るとなぜかセンチメンタルな気持ちになる……。そんな“微妙に懐かしい”平成ドラマの魅力を再発見するべく、映画ナタリーでは「平成ドラマ委員会」を発足。4人の委員会メンバーと、それぞれの思い出深い作品を振り返り、現代に生かせる教訓を探っていく。

Vol. 5では2006年放送の「のだめカンタービレ」を取り上げ、文筆家のひらりさによる「おもしれー女」シリーズ第2弾をお届け。改めて「のだめカンタービレ」を観返したひらりさは、天真爛漫型の“おもしれー女”であるヒロイン・のだめだけでなく、エリート学生である千秋にも“おもしれー男”の素質があることに気が付く。そして劇中で描かれる「おもしれー女とおもしれー男のポジティブフィードバック」に、同作の魅力を見出した。

/ ひらりさ(コラム)、尾崎南(作品紹介) イラスト / トモマツユキ

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コラム

平成ドラマはおもしれー女ヒロインにあふれていた

平成ドラマについて振り返る本連載。私は勝手に、「平成ドラマのおもしれー女」を振り返る、という縛りを設けている。まだ「おもしれー女」なんてミームが流行る前から、私の中の、おもしれー女になりたいという思いを育ててくれたのが、平成ドラマたちだったのだ。そこは、常識はずれの行動がかえって周囲に影響を与えて物語を動かすような、おもしれー女ヒロインにあふれていた。

そんなわけで、平成ドラマの「おもしれー女」代表として絶対に取り上げたかったのは……音大を舞台に学生たちの人間模様を描いた「のだめカンタービレ」のヒロインで、上野樹里が演じた“のだめ”こと野田恵! 

2001年からKissで連載されていた同名漫画を原作に制作されたドラマ版は、2006年に放送。なんとぴったり20年前! 平成元年生まれで現在36歳の私は、高校生(中高一貫女子校)だった。音楽と人間関係に悩みながらわちゃわちゃとじゃれあっている桃ヶ丘音大Sオケの面々を見て、大学生活への甘酸っぱい憧れを募らせていたなあ……。ちなみに、世に美大に対するファンタジーを広めたとされている「ハチミツとクローバー」の実写映画も2006年公開のようです。

奇人変人づくしの音大の中でも、「珍獣」レベルにエキセントリックなヒロイン・のだめ。人の弁当を勝手に食べるし、部屋はゴミ屋敷だし、風呂にも数日入らないし、ところかまわず奇声をあげるし……。ドラマを観返したところその辺りの描写にも手加減がなく(部屋の小蠅とか……千秋の部屋にまで染み出していた謎の液体とか……)、「見た目が上野樹里だとしてもキツイぞ!」な彼女のヤバさがフル出力で表現されていた。

そんな激ヤバな女が月9のヒロインとして成り立つのは……彼女が圧倒的なピアノの才能を持っていると同時に、「ピアノを楽しむ」を徹底することで周囲に影響を与えていく、天真爛漫型の「おもしれー女」だからだ。

のだめの影響を最も受けるのが、玉木宏演じる千秋真一。ピアニストと資産家令嬢の一人息子でピアノ科首席というハイスペエリートでありながら、飛行機・船恐怖症ゆえに海外留学ができず、指揮者になる夢の前で足踏みをしていた千秋。放送当時の私は、数多い登場人物の中でも、傲慢な俺様のようで小心者で、天才ではなく「秀才」枠な千秋のキャラクターにいたくシンパシーを抱いていたのを覚えている。破天荒なのだめに感化されて千秋がどんどん図々しくたくましくなっていく様子を見て、なんだか自信をもらっていたのだ。結果として海外留学への切符を掴むのだが、そこに至るまでの「自分のいる場所(千秋の場合、日本)でまだまだやれることをやろう」というマインドに、遠い将来ばかりを見据えて鬱々としていた高校生の自分は、大いにヒントをもらった。

観返して思い出した。っていうか千秋も、めちゃくちゃ「おもしれー男」だった! のだめによって「おもしれー男」になっていくのだ。圧倒的な才能を持ちながらもグジグジしていた彼は、のだめや、落ちこぼれ集団・Sオケの面々から受け取った心持ちのおかげで、“孤高の千秋様”から、世にクラシックを波及させていく指揮者の卵へと変わっていくのだ。そうして成長してゆく千秋に後押しされて、のだめもまた、音楽との向き合い方を変えていく。おもしれー女とおもしれー男のポジティブフィードバックが回り合い、相思相愛のパートナーシップへと成熟していくさまが、とてもいい。このレベルで切磋琢磨して、才能で対等になろうとしあうカップルって、なかなか珍しいような。ラストの展開は、もはや少年漫画の域だった。

20年前の作品ゆえに、また、大学という日常の場を舞台にしたコメディドラマであるぶん、現在の倫理観の差にウッとなるシーンもあるはある。のだめが千秋にボコボコ殴られるのとか、シュトレーゼマンのセクハラ言動とか、千秋に恋する男性キャラクターに対する同性愛いじりとか。そういう点に心の中でNOと言いつつも、やっぱりこんな大学生活送りたかったなあ……でも音大生じゃないし千秋様いなかったしなあ……と、存在しなかった学園生活を懐かしみたくなる傑作なのでした。

「のだめカンタービレ」(2006年放送 / フジテレビ系)

「のだめカンタービレ」DVD-BOXが販売中。(発売:フジテレビ 販売:アミューズソフト)©2007 フジテレビ

「のだめカンタービレ」DVD-BOXが販売中。(発売:フジテレビ 販売:アミューズソフト)©2007 フジテレビ [高画質で見る]

原作は、二ノ宮知子による同名マンガ。音楽大学を舞台に、一風変わったピアノ科の学生・“のだめ”こと野田恵と、指揮者を目指す超エリート学生・千秋真一が織りなす青春ラブコメディだ。上野樹里と玉木宏がダブル主演を務め、瑛太(現:永山瑛太)、水川あさみ小出恵介竹中直人らが出演。連続ドラマ放送後は「特別編」がオンエアされたほか、続編として劇場版が2部作で公開された。現在はDVD-BOXが販売中。またFOD、Netflixで配信中だ。

ひらりさ プロフィール

ひらりさ

ひらりさ [高画質で見る]

平成元年、東京生まれの文筆家。女オタク文化からフェミニズムまで、女性と現代社会にまつわる文章を執筆する。最新刊に「まだまだ大人になれません」(大和書房)。単著に、「沼で溺れてみたけれど」(講談社)、「それでも女をやっていく」(ワニブックス)、上坂あゆ美氏との共著に「友達じゃないかもしれない」(中央公論新社)。オタク女子ユニット「劇団雌猫」メンバーとしても活動。

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なる @HayatoWo72025

@eiga_natalie めっちゃ共感!のだめのポジティブフィードバックは見ていて元気出るよね🎵

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