2026年4月から6月にかけて放送されたTVアニメ「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」。同作は乙女ゲームの悪役令嬢を自称するバーティアと、その婚約者の王太子・セシルのラブストーリーだ。セシルの幸せのために自身は悪の華となって散ろうとするバーティアと、バーティアの言動に興味を引かれ彼女を“観察”するセシルの恋模様が描かれる。最終回では見事結ばれたバーティアとセシルの、結婚式のエピソードが放送された。
最終回放送の約2週間前となる6月14日、バーティアとセシルの結婚にちなんで、東京にある結婚式場・TRUNK BY SHOTO GALLERYで11話と最終12話の先行上映会が開催された。コミックナタリーは、当選者のみが参加できるこのイベントに潜入。セシル・グロー・アルファスタ役の小林裕介、バーティア・イビル・ノーチェス役の富田美憂、ヒローニア・インデロン役の宮本侑芽、山元隼一監督がドレスアップして登場し、アフレコや制作の裏話を明かしたイベントの様子をお届けする。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 小川遼
ドレスアップしてリムジンから登場、華やかな幕開け
東京・渋谷の繁華街と住宅街の境目あたりに位置する、欧風のクラシカルモダンな建築物。その華美な装飾を排しつつもエレガントなファサードが、厳かにゲストを迎え入れた。建物内へ一歩足を踏み入れると、眼前にはバーティア、セシル、ヒローニアの麗容をあしらった描き下ろしイラストの等身大パネルや、色とりどりのバルーンアートで飾りつけられた瀟洒なエントランスホールがお目見え。これからここで行われるのは、TVアニメ「自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。」のリアルイベント「バーティア様を愛でる会主催“自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。”アニメ第11話・最終話先行上映会inチャペルですわ!」だ。同作では初のリアルイベント開催となる。
この日の会場に選ばれたTRUNK BY SHOTO GALLERYは、実際に結婚式場として利用されている人気のチャペル。アニメ作品の上映会としては極めて異例のロケーションだ。ジューンブライドシーズン真っただ中の同会場には、この貴重な機会を逃すまいと、高倍率を勝ち抜いてチケットを手にした約80人の幸運なファンが駆けつけた。気品あふれるクラシック音楽が流れる中でウェルカムドリンクが振る舞われ、まるでバーティアたちの生きる西洋貴族の世界に迷い込んだ錯覚を起こさせるムードを堪能するように、しばし歓談や写真撮影、グッズ購買などに興じるゲストたち。皆一様に“バーティア様を愛でる会”の一員としての自覚をドレスアップした服装で表現し、さながら本当にバーティアの結婚式が今から行われるかのような光景が広がった。
やがてイベント開始時刻を迎え、キャスト陣が真っ白なリムジンで会場に到着。やおらエントランスの扉が開かれると、スーツを着込んだセシル役の小林裕介を先頭に、華やかな黄色いドレスに身を包んだバーティア役の富田美憂、ふわっとしたピンクドレス衣装のヒローニア役・宮本侑芽、さらにタキシード姿の山元隼一監督が続き、4人はレッドカーペットの上をファンの拍手に囲まれながらにこやかに闊歩していく。大広間の奥の階段前まで進んだところで横一列に整列し、小林が「本日は皆様、お集まりいただきまして誠にありがとうございます」とキャスト陣を代表して来場者に挨拶。「ひとまず上映をお楽しみください。またのちほど!」と快活に呼びかけると、会場は大きな拍手に包まれた。
その後ゲストは上階のチャペルに場所を移し、アニメ第11話および最終第12話の“世界最速先行上映”を楽しんだ。祭壇付近にスクリーンやスピーカーが設置され、観客は参列者席に着いてこれを鑑賞するスタイルだ。珍しいシチュエーションでアニメの結末が見届けられたのち、イベントはキャスト陣と監督によるトークショーへと移行した。
バーティア役は即決、アニメは声に調和するよう制作
トークコーナーの司会は小林が担当。富田、宮本、山元監督に適宜話を振りながら、自らもエピソードを語る二刀流スタイルでイベントを盛り立てた。まずキャスト3人で、アニメ化発表からの流れを年表とともに振り返り。放送直前に行われた生配信番組の中で小林と富田が「じしょあく」という略称を命名したエピソードに話題が及ぶと、「おかげで言いやすくなった」と宮本から感謝の言葉が述べられる。また本作のWebラジオ番組で初めてラジオパーソナリティを1人で務めることになった富田を気遣ったファンから、宮本のSNSに「美憂が助けを求めています。宮本さん、助けてあげてください」とのメッセージが多数届いたという逸話なども明かされた。
続いて山元監督が呼び込まれ、4人での作品深掘りトークがスタート。これまで悪役令嬢ものにあまり触れてこなかったという山元監督だが、原作については「コメディからドラマに持っていく構造が見事」だと高く評価する。伏線回収の構造なども含め情報量の多い原作をアニメ化するにあたっては、脚本を担当した井上亜樹子と綿密に構成を練ったうえで「原作の魅力をできるだけアニメでも同じように伝えられるといいな、と思いながら作っていました」と振り返った。
そこへ小林が声優オーディションの話題を持ち出すと、山元監督の口からキャスト3名の起用理由が明かされた。本作ではスタジオオーディションは行われず、すべてテープオーディションで決定したといい、山元監督は「ディレクションなしで演じていただく段階で、すごく役を汲み取っていただいた」と役者陣の理解度に感服する。セシル役を務めた小林に関しては、「クールな役柄から人の心を持っていく過程を描くにあたって、繊細な声質を持った方がいいのかなと。その点で小林さんはすごくよかった。そこに、支えてあげなきゃいけないと思わせる儚さもあったりして」と論評した。
バーティア役の富田については「太陽のように明るいキャラクターというところで、富田さんの声は唯一無二。『バーティアってこんな声なんだ』と感じられた」と手放しで絶賛。なおかつセシルやヒローニアとの対比として「聴いていて安心できる声」であることも重視したという。あまりにも即決だったため、スタッフ間では「こんなにすぐに決まっていいのか?」と戸惑いの声が上がるほどだったそう。
また、「ヒローニアを演じるにはすごく演技力が必要」だとする山元監督は、「コミカルな部分からヒール役まで担わないといけない。その両面を演じられる方だなと思っていました」と、別作品でも顔を合わせたことのある宮本の技術を評価。「アフレコが早い段階で終わっていたので、逆に画のほうをお三方のお芝居に負けないように、調和が取れるようにがんばりました。お三方あっての画面になっている」と最大級の賛辞を送った。
貴重な資料が続出、ファンも感嘆のため息
和気あいあいとしたムードで順調にトークが進行する中、視聴者が普段あまり見ることのできない設定資料などもスクリーンを使って惜しみなく開示された。「表情集」と呼ばれる各キャラクターのさまざまな表情が描かれたイラスト資料、オープニング映像のビデオコンテ(絵コンテに動きをつけた映像)など、貴重な資料が続出。集まったファンは拍手や歓声でリアクションしつつ、ときにため息も漏らしながらレアな資料素材に見入った。
全12話を通してのお気に入りシーンについての話題では、宮本が第3話のヒローニアの昼寝シーンをピックアップ。コントを思わせるようなコミカルなひと幕だが、台本には「以下アドリブ」と書かれており、役者としての対応力が問われるシーンでもあったという。山元監督からは「オーディションもこのシーンだった」との証言も飛び出し、ヒローニアというキャラクターにとって非常に重要なシーンであることを示唆。宮本は「このシーンがあったことで、後半でヤンデレみたいになる展開でより新しい引き出しを開けられた」と手応えを口にした。
富田は、第7話でセシルと関俊彦演じる父王・ケインが腹を割って話し合うシーンをチョイス。2人のやり取りが好きだと熱く語る彼女に対し、宮本は親子役のキャスティングについて「すっごい血つながってそう」と声の印象が似ていることを指摘する。「わかるー!」と激しく同調した富田は、キャスト香盤表に関の名前を発見した瞬間に「血を感じる!」と心底納得したのだそう。セシルの幼少期を演じた井上麻里奈も含めて親和性の高いキャスティングだったとの見解が示され、「今年一番うれしいかもしれない」と小林を喜ばせた。なお、小林と関の親子役としての共演は本作が初めてだった。
その小林が選んだのは、同じく第7話よりセシルとバーティアが口論を繰り広げる場面。それまで人間らしい感情に乏しかったセシルが、初めてムキになってバーティアを突き放すような言葉をかけてしまうシーンだ。小林は「すれ違いって、すごくつらいなって。僕的には、ここがティアとの接し方の転換点になったかな」と振り返り、「ここからはもう、自分のやり方でやらせてもらうよって(笑)」と当時の演技プランを明かした。セシルの心に共鳴するように空が曇っていくこのシーンについて山元監督は、「コミカルなシーンとの落差を作りたいなと思って、セシルの気持ちに合わせて画面の彩度を落とした」と演出意図を解説。全体的に彩度の高い画作りが行われた本作において、特別な意味を持つ1シーンであることが示された。
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「じしょあく」の肝は“自己犠牲”

