ローソンチケットpresents「ここだけの話 ~クリエイターの頭の中~」02. 上田大樹×ムーチョ村松|お客さんが感動するのは、テクニックじゃなくてもっとシンプルなこと

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映像はインターナショナルランゲージになる

上田 ムーチョはこの間までモントリオールに行ってたんでしょ。自主的に?

ムーチョ ルパージュにおいでって言われたんです。さっき話した新作に今、通しで付いてて。

上田 現場に付いてるの?

ムーチョが映像を担当した「ポリグラフ-嘘発見器-」。(2014年、撮影:引地信彦)

ムーチョ うん、クリエーションに。気持ち的には学生って感じなんだけど、何か自分にやるタスクがなくても居たい現場ってあるんですよ、昔から。吹越さんの稽古場に最初行ったときも、正直仕事をさせてもらえると思って行ったわけじゃなく、見学するつもりで行ったら「じゃあ考えようか」ってネタ作りに参加することになって。そのときは「騙された!」って思ったけど(笑)、今回もとりあえず稽古初日から全部、ルパージュの現場を観てみたいと思ってモントリオールに行きました。ルパージュの現場も新感線やジョビジョバと一緒で、クリエイティブスタッフがチームで動いてて、その1人、ビデオプランナーの人に僕、「ルパージュを世界一理解してる男」と言われて(笑)。そもそもルパージュを知ったのは、吹越さんが「ポリグラフ-嘘発見器-」を演出することになったからで、ルパージュの舞台を観たことがないまま、まず台本を読んだんですね。で、初めての経験なんですけどハマったという。27ページの英語の台本をどっぷりと3年間読み続けていたら、いわゆる“妄想女子”的に想像が膨らんで、台本には7と8って数字は特に出てこないんですけど、CGで7と8を作って、1から9までひっくり返したりして考えていたら、7と8の数字が持つ意味を発見したりしたんですね。って話をディレクターにしたら爆笑されて、「絶対あなたはルパージュに会ったほうがいいわ。次の公演のタイトルは『887』だから」って。

上田 へえー!

ムーチョ村松

ムーチョ で行ってみたら、もう! ほかのスタッフから毎日「今日は何を発見したの?」って聞かれるくらい(笑)。その作品ではノーマン・マクラレンのアニメとカナダのナショナルバレエのダンサーが共演するんです。マクラレンの作品をどんどん3次元化していくんですけど……最後はバカ感動する!(笑) 6月にトロントでプレミアなので、ぜひ観てほしい!

上田 それは観たい。僕は最近、やっぱり「TeZukA テヅカ」や「プルートゥ PLUTO」で一緒に仕事した(シディ・)ラルビ(・シェルカウイ)の影響を受けていますね。

ムーチョ 外国人には影響を受けるよね。

上田大樹

上田 考え方が違うからね。日本人同士だと、以心伝心みたいな部分があり、演出家とそんなに長い打ち合わせはしないけど、それと比べて、ディスカッションしながらお互いに提案して作り上げていく感じかな。自分の意見を出すことをすごく求められるというか。

ムーチョ 僕たちの仕事って、インターナショナルだなって感じがしない?

上田 する。

ムーチョ ルパージュもドゥクレフも、やってることは同じだなと思った。だからどこでも働けるなって。

上田 そうだね。言語以外、海外でやるときも作業はまったく変わらなかったから、普通に海外で仕事できるなって思った。

舞台と映像はよりシームレスな時代へ

ムーチョ これまで舞台映像では熱の問題が大きかったけど、レーザーが使われるようになったり、点灯のオンオフが一瞬でできるようになったりして、このあと発光装置の進化が始まっていくと思います。あと機材の形態が変わっていくことで、例えば舞台装置の一部に機材が仕込めたり、もっと舞台上に映像が侵入してくると思いますね。

上田 そうだね、今は音がうるさいからそうしてない部分もあるけど。

ムーチョ そのうえで、目に見えないものが表に現れるという意味で“表現力”が必要になってくるかなって。

上田 “想像力”も。僕の場合、ムーチョのようにこれがやりたい、と言うよりは、とにかくダサいのをやりたくないっていうのがあって(笑)。そう思って1人で作業していると、ついついマニアックな映像表現が楽しくなってしまうことがあるんだけど、誰でも楽しんでくれるメジャー感、わかりやすさみたいなことも大事だなと思っていて。結局、お客さんは映像のテクニックで感動するわけじゃなくて、すごいシンプルなことに驚いたりするから。

ムーチョ “誰もやってないこと”に挑戦するのは原動力になるけど、大事なのはその次だからね。現場で何か表現上の問題が起きたときに、映像って一番解決策が残ってると言うか、問題解決ツールだったりするんですよね。意外と映像だと簡単に解消できることを、みんな思いつかなかったりして「え? できるの?」みたいなことがよくある。そういうやりとりが楽しい。結局舞台そのものが好きで、映像だけが好きなわけじゃないんですよ。

左から上田大樹、ムーチョ村松。
上田大樹(ウエダタイキ)
1978年生まれ。クリエイティブスタジオ「&FICTION」代表。早稲田大学在学中より劇団の主宰を経て、映像制作を始める。NYLON100°C、劇団☆新感線、大人計画、阿佐ヶ谷スパイダースなどの劇中映像や、MVおよびCMのディレクション、TVや映画のタイトルバック、CHANEL銀座ビルのファサードアニメーション、LIVEの演出映像、ショートフィルム、グラフィックデザインなどを手がける。第23回ぴあフィルムフェスティバル 準グランプリ受賞、第25回ぴあフィルムフェスティバル グランプリ受賞。近年の仕事にシディ・ラルビ・シェルカウイ演出「TeZukA テ ヅカ」、スーパー歌舞伎II「ワンピース」、映画「バクマン。」オープニング映像&プロジェクションマッピング、東京・IHIステージアラウンド東京での劇団☆新感線「髑髏城の七人」など。2018年1月に「プルートゥ PLUTO」の再演を控える。
ムーチョ村松(ムーチョムラマツ)
1974年生まれ。トーキョースタイル代表。明治大学在学中に演劇サークル・騒動舎にて演劇活動を開始し、映像制作を始める。「フキコシ・ソロ・アクト・ライブ」シリーズ、ハイバイ「霊感少女ヒドミ」「ある女」、「ポリグラフ-嘘発見器-」のほか、これまでに大人計画、ウーマンリブ、ジョビジョバ、阿佐ヶ谷スパイダース、森山開次作品、城山羊の会、TEAM NACS、地球ゴージャス、劇団四季、イキウメ、HIGHLEG JESUS、劇団鹿殺しなどの映像を手がけている。「中丸君の楽しい時間2」が11月18日まで東京・東京グローブ座、11月21日から25日まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。また2018年6月にカナダにてロベール・ルパージュの新作「Flame by Flame」がワールドプレミアを迎える。