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宮城聰演出・歌舞伎「マハーバーラタ戦記」誕生、尾上菊之助「身構えずに」

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新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」序幕より。後列左から大黒天(楽善)、シヴァ神(菊之助)、那羅延天(菊五郎)、梵天(松也)。前列左から太陽神(左團次)、帝釈天(鴈治郎)。(c)松竹

新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」序幕より。後列左から大黒天(楽善)、シヴァ神(菊之助)、那羅延天(菊五郎)、梵天(松也)。前列左から太陽神(左團次)、帝釈天(鴈治郎)。(c)松竹

「芸術祭十月大歌舞伎」が本日10月1日に東京・歌舞伎座で開幕。昼の部では新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」が披露された。

「マハーバーラタ戦記」は、今年2017年が日印友好交流年に定められていることを記念して上演される、歌舞伎史上初のインド叙事詩をもとにした新作歌舞伎。尾上菊之助が企画、構想、脚本製作、振付そして主演を勤め、青木豪が脚本を担当。SPAC芸術監督の宮城聰が演出を手掛ける。

争いを繰り返す人間たちを憂う神々と、その神々によって人間界に生を受けた迦楼奈(尾上菊五郎)と阿龍樹雷(尾上松也)、そして鶴妖朶王女(中村七之助)を巡る壮大なドラマが、3幕構成で描かれる本作。太陽神(市川左團次)は人間界を救うため、象の国の汲手姫(中村時蔵 / 中村梅枝)に迦楼奈を授ける。一方、太陽神と対立する帝釈天(中村鴈治郎)は、同じく汲手姫に阿龍樹雷を授け……。

客席には花道に加え仮花道が敷かれ、舞台上には絵巻物に見立てた巨大な屏風絵があしらわれる。衣装はSPAC「アンティゴネ」等を手掛けた高橋佳代が担当。神々はインドのカタカリダンスをイメージしたきらびやかな衣装で登場し、神の衣装と鎧以外は、歌舞伎の役柄に落とし込まれた衣装で演じられる。同じくSPACの棚川寛子により40曲以上が書き下ろされた音楽には、長唄、鳴物、竹本に、木琴や鉄琴が印象的なパーカッションが加わる。

天命を背負う人間達をドラマティックに描く傍ら、両花道を使った華やかなダンスシーンや笑いを誘う“息抜きコーナー”など、緩急ある演出で見せる本作。所作事のシーンも用意されているほか、最後には「戦記」という冠にふさわしい激しい立廻りが待っている。

終演後には、菊五郎、菊之助、宮城が取材に応じた。菊之助は「初日が開いて本当にうれしく思っています」と安堵の表情を浮かべる。「歌舞伎のいいところを抽出した、お客さまに楽しんでいただけるエンタテインメントになってると思います。身構えずに、肩の力を抜いて楽しんでいただけたら」と観客に呼びかけた。

続く菊五郎は、開口一番「疲れた!」と言い放ち、記者たちの笑いを誘う。続けて「宮城先生が教えてくださったのですが」と前置きしながら「インドの神様は面白いですね。自分は今生きているけど、それはただ演じている役で、その中にもう1つ自分があると言うんです」と劇中のエピソードを振り返り、「どんなに浮気しても不倫しても、それは別の人間がやってる、真の人間はやってない、なんてね(笑)」と続け「私も改宗しよう」と発言。会見場を笑いで包んだ。

宮城は2014年から始まったという本作の創作を振り返り、「迦楼奈を主人公にしようという青木さんのひらめきがあったところから、急に車輪が回転し出しました。2つの陣営に分かれて戦っている今日の世界において、どちらの側にも属していて属していない、迦楼奈のような人こそ必要なんですよね。そういう人がこの世を救うのかもしれない。彼はそんな希望を担っています」と思いを語った。

「芸術祭十月大歌舞伎」は10月25日まで。

新作歌舞伎「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」

2017年10月1日(日)~25日(水)
東京都 歌舞伎座

演出:宮城聰
脚本:青木豪
出演:尾上菊五郎尾上菊之助 ほか

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