MAH(SiM)が語る「アウトレイジ 最終章」|信念を貫く男が、命を懸けるとき

北野武が監督し、ビートたけしとして自ら主演を務める映画「アウトレイジ 最終章」が10月7日に全国公開される。「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」に続くシリーズ完結編となる今作では、韓国に身を潜めていたはずの主人公・大友が日本に舞い戻り、敵も味方も巻き込んだ“全員暴走”の抗争を繰り広げていく様が描かれる。

ナタリーでは本作の公開を記念して、お笑い、ステージ、コミック、音楽、映画の各ジャンルを横断する特集を展開中。第4弾は音楽ナタリーにて、シリーズのファンだと言うMAH(SiM)にインタビューを実施した。「実はヤクザ映画が苦手」と打ち明ける彼が「アウトレイジ」に夢中になった理由とは? その魅力を語ってもらった。

取材・文 / 大橋千夏 撮影 / 後藤倫人

ヤクザ映画のイメージが崩れた

──さっそくですが、「アウトレイジ 最終章」をご覧になった率直な感想から聞かせてください。

MAH

今回の話をいただいてから予告編も観ないようにしていて。本当にまっさらな状態で観させていただいたんですけど、いい意味で裏切られたと言うか……意外なところもありつつ、最後はちゃんと納得させられました。「うん、これは最終章だな」ってうなずけましたね。

──確かに最終章はシリーズの中でも異色と言うか、これまでにない哀愁漂う作品になっていると思います。MAHさんは1、2作目にはどんな印象を持たれていましたか?

1作目は確かDVDで観たのかな。“全員悪人”ってキャッチコピーにパンチがあったし、悪役をやるイメージのない俳優さんたちがどんな芝居をするのか興味があって。で、いざ観てみたら、それまで持っていたヤクザ映画のイメージが崩れ去ったんです。

──イメージが崩れ去ったと言うと?

実はドンパチ系は苦手なほうで、ほかのヤクザ映画はあまり観たことがないんです。「アウトレイジ」も残虐なシーンがクローズアップされがちですけど、単純にストーリーそのものの面白さに衝撃を受けたんですよね。こんがらがって見えた糸が最後にピーンとつながる感じとかは、普通のサスペンスや「大逆転のラスト」と謳っている映画よりずっと魅力的で。それに、決してドンパチがメインじゃないと思うんです。きちんと物語があって、そのうえで必要な暴力や殺人を描いていると言うか。

──なるほど。

「困ったら爆発」みたいな映画は冷めちゃうんですけど、決してそうじゃない。まあ多少やりすぎ感はありますけど(笑)、「このシーンいる?」って場面は1つもないんですよね。「ビヨンド」は1作目より派手になっている印象だったので、「最終章」はどうなるんだろうっていろいろ妄想してました。

「まだ来ない、まだ来ない」が一気に来る

──特に印象に残ったシーンはありますか?

映画「アウトレイジ 最終章」より、左から大森南朋演じる市川、ビートたけし演じる大友。

やっぱり出所祝いのシーンですかね。あれはすごかった、まさに「やりすぎだろう」って(笑)。

──たけしさん演じる大友の感情だったり映画の盛り上がりだったり、それまで抑えられていたものが爆発する感じがありますよね。

そうなんですよね、わりとそこまでは「(なだめるような手振りで)まあまあまあ……」みたいな。観てる側としては「まだ来ない、まだ来ない」と思っていたものが、一気に来る感じ。港でバンに乗るシーンもよかったです。伏線を拾っていくのが気持ちよくて。

──前作以上に、クスッと笑えるシーンも多かったように思います。

バイオレンスシーンとのバランスが絶妙ですよね。3部作の間でその配分が微妙に変わっていくのもすごいなと。最初から監督の中には構想があったのかな。

スタッフ 「ビヨンド」の制作が決定した段階で、「アウトレイジ」シリーズは3部作で終わらせようと決められていたようです。それで、「ビヨンド」と「最終章」の脚本を同時に書いていったと。

なるほどなー。確かにこういう世界で1人の主人公がずっと生き続けるのも、リアリティないですもんね。きっとみんな長生きできないと思う(笑)。

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ナチュラルさが怖い

「アウトレイジ 最終章」
2017年10月7日(土)全国ロードショー
「アウトレイジ 最終章」
ストーリー

元はヤクザの組長だった大友は、日本東西の二大勢力であった山王会と花菱会の巨大抗争のあと韓国に渡り、歓楽街を裏で仕切っていた。日本と韓国を股にかけるフィクサー張のもとで働き、部下の市川らとともに海辺で釣りをするなど、のんびりとした時を過ごしている大友。そんなある日、取引のため韓国に滞在していた花菱会の幹部・花田から、買った女が気に入らないとクレームが舞い込む。女を殴ったことで逆に大友から脅され大金を請求された花田は、事態を軽く見て側近たちに後始末を任せて帰国する。しかし花田の部下は金を払わず、大友が身を寄せる張会長のところの若い衆を殺害。激怒した大友は日本に戻ろうとするが、張の制止もあり、どうするか悩んでいた。一方、日本では過去の抗争で山王会を実質配下に収めた花菱会の中で権力闘争が密かに進行。前会長の娘婿で元証券マンの新会長・野村と、古参の幹部で若頭の西野が敵意を向け合い、それぞれに策略を巡らせていた。西野は張グループを敵に回した花田を利用し、覇権争いは張の襲撃にまで発展していく。危険が及ぶ張の身を案じた大友は、張への恩義に報いるため、そして山王会と花菱会の抗争の余波で殺された弟分・木村の仇を取るため日本に戻ることを決めるが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

大友:ビートたけし
西野:西田敏行
市川:大森南朋
花田:ピエール瀧
繁田:松重豊
野村:大杉漣
中田:塩見三省
李:白竜

白山:名高達男
五味:光石研
丸山:原田泰造
吉岡:池内博之
崔:津田寛治
張:金田時男
平山:中村育二
森島:岸部一徳

※「アウトレイジ 最終章」はR15+作品

SiM(シム)
SiM
MAH(Vo)、SHOW-HATE(G)、SIN(B)、GODRi(Dr)の4人からなる湘南で結成されたレゲエ・パンクバンド。2004年11月に結成され、数度のメンバーチェンジを経て2009年に現編成となる。パンク、ハードコア、スクリーモをベースとする轟音サウンドにスカやレゲエのエッセンスを取り込んだ“レゲエパンク”サウンドで頭角を現す。ライブハウスシーンを中心に活動し、2011年「KiLLiNG ME」のMUSIC VIDEOの視聴回数がインディーズバンドとしては異例の再生回数を記録(現在1600万回以上再生)。同曲を収録したアルバム「SEEDS OF HOPE」もスマッシュヒットを記録した。メジャー10社以上が獲得に乗り出す中、ユニバーサル・ミュージックをパートナーに選び、2013年4月に4thシングル「EViLS」、10月に3rdフルアルバム「PANDORA」を発売。その後も着実にリリースを重ね、2015年11月には日本武道館公演も完売させた。2016年4月には4thフルアルバム「THE BEAUTiFUL PEOPLE」を発売。同アルバムのリリースツアーでは全国26公演すべてがソールドアウトとなる。野外開催2年目となる自身主催イベント「DEAD POP FESTiVAL」を大成功に収め、10月にツアーのグランドファイナルとして行った神奈川・横浜アリーナでのワンマンライブも即日の完売となった。2017年3月から4月にかけて実施したワンマンツアー「THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"」では全国10カ所で28000人以上を動員。7月には「DEAD POP FESTiVAL 2017」を主催した。

2017年10月6日更新