キャラクターソングは誰のもの？

──ふわりPさんも楽曲に映像が付いたら聞こえ方は変わった？

ふわりP　前回のインタビューでもお話させてもらったんですけど、最初は「『ゆゆ式』のために自分が役に立てることは？」っていう思いで最大限のものを作ったので「自分のための作品だ」という意識は薄いんですね。もっと素朴に単純に「アニメも曲もいいなあ」「ステキやな」って思ってて（笑）。で、放送が終わってしまってすごく寂しい気持ちでもいるんですけど、それも好きなアニメが終わって寂しいっていう気持ちなんですよね。

Morinaga　私は「渡したいけど、渡したくない」みたいな気持ちですけどね。アニメの世界観と自分が女子校に通っていた頃の気持ちを同期させて歌ったつもりなので、半分は私のもの。「私と一緒にみんなで青春を思い出そうぜ」って感覚はどこか残ってます。

──キャラクターソングの場合は？ アニメキャラって言ってしまえば実在しないキャラじゃないですか。そのいない人のための楽曲って、作った人にとっては、完全にその人に渡した曲という扱いなのか？ それともあくまで自分のものなのか？

164　僕はふわりPさんと一緒。置いてきた感じですね。「歌ってください、あなたの曲ですよ」って。

YM　僕は両方が同居している感覚。今回の曲に限らず「歌ってみた」の歌い手さんのために書き下ろすときもそうなんですけど、自分の好きなフレーズを詰め込んで作るので、自分が書いたっていう意識が自分の中にはあるものの、どこか「もうその曲はその人のところに行っちゃったんだな」っていう。ちょっと寂しい感覚もあります。子供を見ている感覚ですね。僕の分身じゃなくて、血は分けてるんだけど、他人というか。

ヘリP　僕も共存している感じですね。キャラクターが歌っているところを想像できるように作りつつ、でも「そこに自分はないのか？」って言われれば自分らしさはある。すごく複雑な感じなんですけど。

キャラクターソングは3次元から2次元へのメッセージ

デP　というか、そもそも質問が間違ってるんですよ！ キャラクターはいない人じゃないんです！

──へっ!?

デP　キャラクターはいるんです！ 3次元にいないだけで、2次元にはいるんです！

──ディメンションが違うだけだ、と（笑）。

デP　そうなんです！ そもそも音楽とはなんぞや？って考えると音の振動なんですよ。こんなもの2次元ですらない。実在しないという意味ではキャラクターと一緒なんですよ。だからキャラクターに曲を書くっていうことは我々が2次元に行くためのステップなんです！

164　ゼッテーそんなこと考えながら曲作ってないでしょ（笑）。「音の振動」とか言い出したときにはホントに「ウソつけ！」と思ったもん。

デP　考えながら作ってるから言えるんだよ！（笑） もちろん僕らは次元を超えられないんだけど、キャラクターっていう次元の違う住人に音楽を提供することはできる。次元を超えてコミュニケーションするために僕は曲を書いてるんですよ！

ふわりP　カッコええなあ（笑）。

YM　ちょっと気持ち悪いけど（笑）。

「『ゆゆ式』っぽいなって思えればOK」

──亜沙さんは？

亜沙　164さんやヘリPさんよりもうちょっとキャラクター側というか。「オレが作っている以上、オレの曲だ」っていう意識はあるんですけど、もう基本的にはキャラクターのために書いてるって感じですね。なんて言うんですかね？ まあ、音の振動なんで（笑）。

──それでオチがつくと思わないでください！（笑）

デP　ネタじゃないから！

──Another Infinityさんは、このメンバーの中でも特に楽曲提供することが多いですよね。人に渡した曲って自分たちの中ではどういう扱いになってるんですか？

ST　人に提供する曲を作るときは、自分の色を出したり、自分の曲だって主張したりすることよりも、どれだけ作品の色に自分を染められるかっていうことを意識しますね。だからキャラクターやアニメ作品に曲を預けている感覚でいるんだと思います。ただキャラクターソングって、原作者にしか理解できないキャラクターの特徴を自分なりに解釈して表現をしなければならないものなんですけど、それが成功したかどうかはレコーディング当日までわからないんですよね。レコーディングが終わったとき「あっ、キャラっぽいな」「ゆゆ式」っぽいなって思えればOK。その「ゆゆ式」っぽさっていうのも厳密に言えば原作者にしかわからないことではあるんだけど、僕らもいち視聴者的な目線には立てるので。今回の2曲はその視点に立った上で「あっ、あのキャラっぽい」って言えたのですごくうまくいったとは思ってます。羽ばたいていったな、って。