YOUR SONG IS GOOD「Extended」発売記念特集|サイトウ“JxJx”ジュン×髙城晶平(cero)対談 カクバリズムに集う個性の連鎖

「気持ちのいい面白さ」の追求

──じゃあ、アルバムを作るうえでは「Waves」の「バレアリック~レゲエ経由のユルいダンスグルーヴ」というイメージが念頭にあった、と。

JxJx そうです。あともう1つあったのが、「OUT」で気付いちゃった「ミニマルなフレーズの面白さ」をどうするか。でも、それを押し進めてしまうと、7人編成でやる意味がなくなっちゃうなと思って(笑)。

サイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)

髙城 そこがバンドの難しさですよね(笑)。

JxJx 「この7人でやる方法は何かないかな?」と思って、いろいろ考えたんだよね。ミニマルなんだけど、オーセンティックな大らかさもあって、なおかつ一定のテンションで永遠に続くダンスミュージック的なグルーヴがあって……。

髙城 なかなかのオーダーですよね……。

JxJx そうなの(笑)。「Waves」ではその解決法としてレゲエのグルーヴをうまく使って解決するということがあったわけだけど、次にできたのが1曲目の「Cruise」「Waves」よりもさらにディスコ的なグルーヴで、このままダンスミュージック的な気持ちよさ、「気持ちのいい面白さ」を追求してみよう、と。

髙城 ジュンさんほどバンドもDJもガッツリやってる人ってそんなにいないと思うんですけど、やっぱり、DJの活動がバンドの方向性にフィードバックした部分は「OUT」以上に大きいんですね。ここでドラムを抜いて、ここでベースを入れて……という展開の作り方なんてまさにDJ視点だし、バンドマンの作り方じゃない。

──ceroの場合はそういうDJ的発想で曲を作ることはないんですか。

JxJx 髙城くんもDJをやってるもんね。どうなの?

髙城 DJとしてはジュンさんとタイプが違うというか、もっとユルい感じですね。ガッツリつないだりしないし。ただ、アルバムの中でも曲にバリエーションを持たせたいという点では何か影響があるのかもしれない。DJ用のレコードバッグの中に自分のイメージするレコードを1枚ずつ入れていく感覚に近いというか。さっき「『OUT』のときにバレアリック的な曲がなかったから今回やってみた」という話をジュンさんがしてましたけど、ceroもアルバムを作るときは同じようなことをよく考えてるんですよ。

あくまでも「フツーに」人力ダンスグルーヴを

──ceroが昨年12月にリリースしたシングル「街の報せ」(参照:cero「街の報せ」インタビュー)は生演奏と打ち込みの境界線が曖昧な作りになってましたよね。今回のYSIGのアルバムは打ち込みこそ使ってないものの、キーボードのシーケンス的なフレーズの割合がぐっと増えて、一聴しただけでは生演奏なのかシーケンサーを使っているのか判別できない曲もある。この2作品にはそういった共通点もありますよね。

髙城 そうか、このアルバムってマシンを使ってないんですよね。考えてみると、それってすごいことですよね(笑)。

JxJx そうなんだよね(笑)。「打ち込みと生演奏をどういうふうに使い分けるか問題」って昔からあるじゃない? でも、その問題が取り組まれるようになってからずいぶん時間も経ってるわけで、生演奏と打ち込みが当たり前のように共存する時代になりつつある。

髙城 そうですね、そういう時代になってきましたね。

左からサイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)、髙城晶平(cero)。

JxJx ceroも「Obscure Ride」のときはヒップホップ的なリズム感覚を生演奏で表現してたけど、そういうことってかつてのディアンジェロやThe Soulquariansもやってたことじゃない? 当時はそれがすごく斬新なことだったけど、ceroはパンクバンドが3コードを鳴らすかのごとく、すごく自然なものとして表現していた。その感覚がものすごく新しくて、大いに刺激を受けた部分でもあったんだよね。で、今回の我々のアルバムの場合もダンスミュージック的な考えや構成を持ち込んでいるけど、それをバンドという形態で当たり前のようにやる、それこそが重要だった。ディスコリエディットを人力でやる「On」みたいに変な曲もあるけど(笑)、そこは奇をてらった感じではやってない。そこがポイントで。

──「人力でダンスグルーヴを再現するんだ!」と肩肘張るのではなく。

JxJx です、です。あくまでも「フツーにやる」。それこそ、好きなスニーカーを履くぐらいの感覚というか。

──それは「OUT」で一度ダンスミュージックを吸収したからこそ、好きなスニーカーを履くぐらいの感覚でカジュアルに取り組むことができたということでもある?

JxJx そんな気がしています。DJをする中で、自分のグルーヴがだんだんできあがってきたところもあるのかな、と。

髙城 肩肘張らずにできたアルバムだからこそ、人力のDISC 1を聴いたあとに、初回特典盤のDISC 2のリミックスを聴いても全然違和感がないんですよね。人力とマシンの間に距離があんまりないし、リミックスも含めて1つの作品として不思議なまとまりがある。

YSIGとceroでカクバリズム15周年イベント

──ここに入ってる曲がライブでどのように発展していくのか気になりますね。

JxJx そうだよね。でも、実はオーセンティックな要素も強いので、ライブバンドっぽいワサワサした感じも出しやすいんじゃないかと思ってて。ここからライブ用にいろいろ考えていかなきゃいけないんでヤバいんだけど(笑)。

──その成果を観れるのがリリース後のワンマンツアーとなりますが、7月8日にはカクバリズムの設立15周年を記念した岡山のイベントでYSIGとceroの2マンがありますね。

髙城 そうそう。カクバリズム10周年を経て15周年でも一緒にやらせてもらえるんでうれしいですね。ひさびさのリユニオンというか。

JxJx いやー、超楽しみだね。ステージ裏がすごく楽しそう(笑)。

──しかし、カクバリズムも早15周年なんですね。

髙城 そうなんですよね。最初は社長の物差しでそのバンドをカクバリズムに入れる / 入れないを決めるわけですけど、みんなどんどん音楽性を変えていっちゃうから、今やYSIGもceroも社長の趣味が反映されなくなってる(笑)。

JxJx そういやそうだね(笑)。そんな感じで楽しくやってますよ、と(笑)。

YOUR SONG IS GOOD「Extended」
2017年5月10日発売 / カクバリズム
YOUR SONG IS GOOD「Extended」初回限定盤

初回限定盤 [CD2枚組]
3348円 / DDCK-9006

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YOUR SONG IS GOOD「Extended」通常盤

通常盤 [CD]
2808円 / DDCK-1050

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収録曲
DISC 1
  1. Cruise
  2. New Dub
  3. Mood Mood
  4. Double Sider
  5. Palm Tree
  6. On
  7. Waves
DISC 2(初回限定盤のみ)

Remixes

  1. The Cosmos(Being Borings Remix)
  2. Changa Changa(Lord Echo's Disco-Remix)
  3. Re-Search(FORCE OF NATURE Remix)
  4. Waves(Gonno Remix)
  5. Double Sider(XTAL Remix)
cero「街の報せ」
2016年12月7日発売 / カクバリズム
cero「街の報せ」CD

[CD]
1080円 / DDCK-1049

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YOUR SONG IS GOOD 6th ALBUM Release ONEMAN TOUR
  • 2017年5月20日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2017年5月28日(日)宮城県 enn 2nd
  • 2017年6月3日(土)大阪府 Shangri-La
  • 2017年6月11日(日)福岡県 Early Believers
  • 2017年7月1日(土)東京都 WWW X
何かにつけて打ち上がる会 ~YOUR SONG IS GOOD「Extended」レコ発ツアー金沢場所~

2017年6月17日(土)石川県 金沢マニール
<出演者>
YOUR SONG IS GOOD / ホテルニュートーキョー

YOUR SONG IS GOOD「Extended」レコ発&カクバリズム15周年キックオフイベント「NEW MEMORIAL HITS」

2017年7月8日(土)岡山県 YEBISU YA PRO
<出演者>
YOUR SONG IS GOOD / cero

YOUR SONG IS GOOD(ユアソングイズグッド)
YOUR SONG IS GOOD
1998年1月に結成されたインストバンド。初期はエモやメロディックハードコアパンクなどからの影響が強く感じられたが、次第にブラックミュージックのテイストを強く感じさせるダンスサウンドへと移行していく。2002年にミニアルバム「COME ON」を、2004年にはフルアルバム「YOUR SONG IS GOOD」をカクバリズムより発表した。現在はサイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)、ヨシザワ“MAURICE”マサトモ(G)、シライシ“JICHO”コウジ(G)、ハットリ“SHORTY”ヤスヒコ(Tb)、タカダ“DAATAKA”ヒロユキ(B)、タナカ“ZEERAY”レイジ(Dr)にサポートメンバーの松井泉(Perc)を加えた7人体制に。個々の活動にも精力的で、フロントマンのJxJxはDJやMCとしても活躍している。2017年5月に通算6枚目となるオリジナルアルバム「Extended」をリリース。アルバムリリースツアーに加え、7月にはceroと共に岡山・YEBISU YA PROでカクバリズムの設立15周年キックオフイベント「NEW MEMORIAL HITS」を行う。
cero(セロ)
cero
2004年に髙城晶平(Vo, Flute, G)、荒内佑(Key)、柳智之(Dr)の3人により結成された。グループ名のceroは「Contemporary Exotica Rock Orchestra」の略称。2006年には橋本翼(G, Cho)が加入し4人編成となった。2007年にはその音楽性に興味を持った鈴木慶一(ムーンライダーズ)がプロデュースを手がけ、翌2008年には坂本龍一のレーベル・commmonsより発売されたコンピレーションアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2-」への参加を果たす。2011年にはカクバリズムより1stアルバム「WORLD RECORD」を発表。アルバム発売後、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退し3人編成になった。2015年5月には3rdアルバム「Obscure Ride」、2016年12月には最新シングル「街の報せ」をリリース。2017年4月には2度目の東京・日比谷野外大音楽堂ワンマン「Outdoors」を成功に収め、8月には東京・新木場STUDIO COASTで自主企画イベント「Traffic」を開催する。