米津玄師|“終着点”のその先で見つめたもの

米津玄師がニューシングル「Flamingo / TEENAGE RIOT」を10月31日にリリースした。

3月にリリースした「Lemon」が2018年上半期を席巻するヒット曲となった米津。昨年発表のアルバム「BOOTLEG」収録曲の多くや「<NHK>2020応援ソング」として小学生5人組ユニットFoorinに書き下ろした「パプリカ」など、ここ最近はタイアップやコラボレーションをもとに曲を作ることが多かったが、新作は久々に自分自身だけに向き合う中で生まれてきたという。

不思議な和の世界観を持つ「Flamingo」と衝動に満ちた「TEENAGE RIOT」、それぞれの楽曲の背景にあるもの、そして今の彼のビジョンについて話を聞いた。

取材・文 / 柴那典

1つの終着点なのかなって気がしたんです

──新作の「Flamingo / TEENAGE RIOT」は、どういう経緯から制作が始まったんでしょうか?

ここ最近はいろんなタイアップをしたり、誰かとコラボしたり、ゲストボーカルを招いたり、誰かに楽曲を提供したり、そういうことをずっとやってきていて。その反動がありましたね。つまりここ最近やってきたことって、対面に自分じゃない誰かがいたんです。その誰かとの共通点、真ん中にあるものは何かを探していくような作り方だった。

──昨年にリリースされたアルバム「BOOTLEG」の収録曲の多くやシングル「Lemon」、Foorinに書き下ろした「パプリカ」もそういう作り方でしたね。

そうですね。それで2018年になって「Lemon」が出て、この曲があれだけ大きなものになった。それが、自分がやってきたことの1つの答えになった気がしたんですよね。自分は昔Vocaloidをやっていて、そこから出て、邦楽ロックというところを経由して、いわゆるJ-POPというところにたどり着くまでの長い旅をしてきたように思っているわけですけれど、その旅の1つの終着点なのかなって気がしたんです。

──メジャーデビューの頃から「普遍性を持つポップスを作りたい」「誰でも手に取れるような音楽を作りたい」ということをおっしゃっていましたが、「Lemon」が今年を代表する曲の1つになったというのは、それを成し遂げたような感覚があった?

ありましたね。ただ正直、そういう普遍的なものを目指しながら進んできたわけですけど、それが「Lemon」になるとは思ってなかったんです。自分の人生は映画のようなあらすじもないし、先のことなんてわからないわけで。でも、今までたどり着こうとしてきた「普遍的なものを作る」という1つのコンセプトにおいての終着点が「Lemon」だったんだということになって、その瞬間「♪夢ならば……」って急にエンドロールが流れ始めた感じがあった。「あ、俺が今までやってきたことは、ここで終わりなんだ」と思ったんです。それはある種のハッピーエンドなんですけど。じゃあ、次にどうすればいいかっていうことを考えて2018年は生きてきたんですね。そんな中でいろんなことがあって。

──どんなことがあったんでしょう?

1つのトピックスとしては、子供の頃……十代の頃からずっと好きだったような人たちと、立て続けに会うことができたんです。BUMP OF CHICKENの皆さんとか、ジブリの宮崎駿さんと鈴木敏夫さんとか。あとは昔から好きだった実況動画プレイヤーのジャック・オ・蘭たんという方とか。今まで会えなかった人と会えるようになったというのは、ある種ボーナスステージのような感覚があったんですよ。そういう人が興味を持ってくれるだけの存在に、自分がなれたんだなっていう。

米津玄師(Photo by Jiro Konami)

宮崎駿との対話

──宮崎さんとはどんな話をしたんでしょうか?

宮崎さんとは5分くらいしかしゃべってないんですけれど、自分が今27歳だという話をしたときに、彼が「27か。27年前なんて、ついこないだだね」って言ったんです。たぶんなんの気なしに言ったことだと思うんですけど、それを聞いて思うことがあって。今までいろいろ苦労してやってきたような気でいたかもしれないけど、まだまだ先はものすごく長いし、まだまだ生きるに値する人生が待っているんだろうなっていう気持ちにさせてくれたんです。

──宮崎さんの何気ない一言によって、終着点にたどり着いたような気持ちになっていたのが、まだ折り返し地点にも達してないくらいの感覚にされたと。

「Lemon」が出たあと、いろいろ考えてるときにその言葉が入ってきたから、なおさらそう思ったんだと思うし。それは自分の中で大きな経験でしたね。

──BUMP OF CHICKENのメンバーとはどんな話をしたんでしょう?

会ったときは(川谷)絵音と一緒にいたんですけど、BUMP OF CHICKENの方たちから見たらものすごい後輩じゃないですか。でも、干支がひと回りも下の人たちが自分たちの音楽を聴いてこういうふうにやっているのは純粋にものすごくうれしいって話をしてくれたりして。それはすごく印象的でした。

──以前にも米津さんはBUMP OF CHICKENやRADWIMPS、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやスピッツのようなバンドからバトンを受け取ってきたという話をしていましたよね。そういう意味でも、影響を受けた先輩と実際に会ったことや、川谷絵音さんのような刺激を与え合う同世代の友人がいること、そういう関係性自体が自分のエネルギーになったようなところがある。

そうですね。絵音と最初に顔を合わせたのは3年前くらいのフェスで、改めて会ったのは去年なんですけど、あいつとはめちゃくちゃ音楽の趣味が合うんですよ。絵音も子供の頃からBUMP OF CHICKENとかを聴いてきたし、「あれ聴いた?」みたいな話をしたときにも大抵ちゃんと聴いてて話が早いし、俺が好きなものは大体あいつも好きだし。People In The BoxとかTHE NOVEMBERSとか、そういう今まで聴いてきた音楽の話をできる同世代もほとんどいなかったんで、それもうれしいし。あいつはめちゃくちゃ変なヤツで面白くて。歳をとればとるほど、誰かと深い仲になるのって難しいじゃないですか。生まれ育った環境は違うけど、遅れて出会った幼なじみのような感じなんですよね。