音楽ナタリー PowerPush - 渡辺美里×WEAVER

世代を超えた“きらめき”対談

音楽の感受性に年齢は関係ない

──コラボすることはどのように決まっていったんですか?

渡辺 私が来年で30周年を迎えるということで、何か面白いことがしたいなと思ったときに、あのフェス以来、私の心の片隅にずっといたWEAVERさんのことがパッと浮かんだんですよ。で、共同プロデュースしてくれてる佐橋(佳幸)くんに話したら「アリだね!」っていう話になり、お願いした感じなんですけど。

WEAVER

河邉 そのお話をいただいたときは信じられないくらいうれしかったですね。美里さんはもちろんですけど、以前に一度、僕らの楽曲でギターを弾いていただいたことがある佐橋さんという尊敬しているミュージシャンの方と一緒にできることも本当にうれしくて。

杉本 僕たちを選んでくれたんだっていうことがうれしかったので、これはもうほんとにいい曲を作らないとなって思いました。

──美里さんがWEAVERとのコラボを決める際、音楽性の共鳴ということ以外に、世代の違いによる化学反応を期待したところもあったんですか?

渡辺 あ、それはまったく考えてなかったです。音楽っていうのは、もちろん感じてきたもの、見てきたものという部分でその人の人生が映し出されるところはありますけど、感受性に年齢は関係ないと思っているんですよ。だから単純に彼らの曲を歌ってみたいなっていう感情だけでした。作曲には、ギターで作る、リフから作る、リズムから作るっていうふうにいろんなタイプがあるけど、今回は鍵盤を使って曲を作る人の上質なポップスを歌ってみたいなっていう思いがあったんですよね。

聴いた瞬間に鳥肌「キター!」

──曲は杉本さんによるものですが、どんなことを意識して作りましたか?

左から杉本雄治、渡辺美里。

杉本 僕らは今年、ロンドンに留学したということもあり、自分たちの個性をもっともっと出していきたいなと思っていたんです。その思いは、今回のコラボレーションのような新しい場においても最初は同じだったんです。ただ、さっきも言ったように美里さんの曲はいつまでも耳に残る、色あせない魅力があると思っていたので、結果的にはその歌声をどれだけ引き立てられる楽曲を作ることができるかという部分に焦点を当てていくことになって。自分たちのエゴよりも、上質なポップソングであることを意識することになったんですよね。

──うん、その思いは最高の形で結実していると思います。美里さんは楽曲を聴いたときにどのような印象を受けましたか?

渡辺 “歌い手の勘”と私はよく言うんですけど、いいメロディっていうのは聴いた瞬間にゾクッと鳥肌が立つんですよ。で、30年間それを信じてやってきてはいるんですけど、そのゾクッとする加減にはいろいろあって。「キター!」っていうこともあれば、「うん、いい感じだね」っていうこともある。鳥肌のツブツブ具合が違うというかね。

河邉 あははは(笑)。なるほど。

──今回の曲は「キター!」のほうだったんでしょうね。

渡辺 そう。渡辺美里にはこういう感じっていうツボを心得たメロディで、しかもみずみずしい。そこで味わったゾクッと感っていうのは、ボーカリスト人生においてなかなか何度も味わえるもんじゃないなっていうひさびさの感覚だったんです。

杉本 光栄です!

レコーディングは“三ツ星団 and WEAVER”

──で、その楽曲はWEAVERと佐橋さんでアレンジされたわけですが、今回は演奏にもWEAVERが参加されているんですよね。それも美里さんが望んだことだったんですか?

渡辺 そうですね。WEAVERさんは3ピースのバンドなのにすごく骨太な音を出す方たちで。その容姿を見てると、「しっかり食べてるか?」っていう感じなんだけど。

奥野 あははは(笑)。3人とも線が細いんで。

左から奥野翔太、河邉徹。

渡辺 「おにぎり食べるか?」って言いたくなるくらい華奢でしょ(笑)。でも音はすごく骨太。それがWEAVERさんたちのよさだと思うから、もちろんきらめきのある楽曲をいただけたことで十分うれしかったんだけど、できることなら一緒にレコーディングもしたいなって思ったんです。ただ、3人と私1人ってなっちゃうとたぶん緊張しちゃうだろうと思ったから、佐橋くんとBO GUMBOSのDr.kyOnさんにも参加してもらって。余計に緊張したかもしれないけど(笑)。

河邉 確かにそうですね(笑)。

渡辺 そんなに知られてないんですけど、佐橋くんとkyOnさんと私の3人で“三ツ星団”っていうユニットを組んでるんですね。なので今回は3対3で、三ツ星団 vs. WEAVERみたいな感じでいこうかなって。あ、“vs.”じゃなくて“and”か(笑)。このコラボレーションはすごくうまくいったと思いますね。いい素材があって、いい料理人もいるわけだから、特上のおいしいものができたというか。

──先行して公開されたレコーディング風景の映像を拝見しましたが、皆さんものすごく楽しそうでしたよね。

河邉 もちろん緊張はしたんですけど、先輩方が僕らをなごませてくれたし、雑談もたくさんしてくださったので、楽しい空気感の中で演奏できましたね。それは演奏のテイクにも表れていると思うし。

奥野 ほんとに楽しかったです。今回はみんなで“せーの”で録ったんですけど、それがすごく新鮮で。僕らは普段3人だけでレコーディングしているし、他の楽器の音を足すにしても後から重ねる感じですからね。

河邉 演奏してても音がほんとにぶ厚いんですよ。たくさんの音が一緒にガッチリ合わさって鳴っているっていうのがこれほど気持ちいいんだっていうことを学べました。

杉本 美里さんの歌も、演奏と一緒に毎テイク歌われるんですよ。それがもうすごいなっていう(笑)。

渡辺 最終的に歌は別でレコーディングしたんですけど、“せーの”でやったものでも全然いいっていうくらいの気持ちでは歌いました。だってね、いい曲だから歌うのが楽しいんですよ。数回歌っただけで、「いいテイク録れたからもういいよ」って言われるのはイヤじゃないですか。「いやいや、もうちょっと歌わせてよ!」みたいな(笑)。

杉本 あははは(笑)。今回のレコーディングを通して、美里さんの歌声の力を改めて感じさせてもらいました。毎テイク全然ブレがないですし、その臨場感とか空気感っていうのが僕としてはすごく刺激的で。僕らが作った曲が一瞬で美里さんの曲になるのを感じられました。あとは、これだけ長いこと歌い続けてこられたから当然なのかもしれないんですけど、自分の歌いたいことが明確にあるんだなっていうことも感じられましたし。本当にすごくいい経験をさせてもらえましたね。ボーカリストとしてもっともっとがんばろうって思いました。

ニューシングル「夢ってどんな色してるの」 / 2014年10月29日発売 / EPICレコードジャパン
初回限定盤 [CD+DVD] / 1500円 / ESCL-4303~4
通常盤 [CD] / 1000円 / ESCL-4305
CD収録曲
  1. 夢ってどんな色してるの
  2. どこにいても
初回限定盤DVD収録内容
  • 「夢ってどんな色してるの」ミュージックビデオ
渡辺美里(ワタナベミサト)
渡辺美里

1985年5月にシングル「I'm free」でデビュー。翌1986年1月にリリースした4thシングル「My Revolution」が大ヒットを記録する。同年8月には西武ライオンズ球場でのコンサートを実施。女性ソロシンガーとして日本初のスタジアム公演を成功させ、以降20年連続公演を達成した。2006年からは「美里祭り」と題して山中湖や横浜港、熊本城など全国各地で野外コンサートを開催している。2014年4月にデビュー30周年に向けた記念シングル第1弾として、大江千里とコラボしたシングル「ここから」を発表。10月29日にはWEAVERとコラボした「夢ってどんな色してるの」をリリース。2015年5月より、全国47都道府県ライブツアーを実施する。

WEAVER(ウィーバー)
WEAVER

杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなる神戸出身のスリーピースピアノバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成に。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビュー。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を、同年8月と9月に亀田誠治をプロデューサーに迎えたアルバム「新世界創造記」を前編と後編に分けて発表した。その後もコンスタントにリリースとライブを重ねる中、3人とも2014年1月末から半年間のロンドン留学を経験する。6月には初のベストアルバム「ID」をリリースし、9月から10月にかけて、「ID」を引っ提げたツアーを開催した。2015年にライブハウスツアーの開催と、シングルをリリースすることが決定している。