執念深いお手紙をかわいらしく書くボーカルスタイル

──「冥界通信」のボーカルなんですけど、さすが“自由研究”。「閻魔大王に訊いてごらん」とはまったく違うアプローチになりましたね。

いただいたデモには和嶋さんの仮歌、「もうこれをそのまま出したほうがいいよ」っていう素晴らしい仮歌が入っていたんですけど（笑）、その和嶋さんのように歌う女性の姿、女性ボーカルバージョンの「冥界通信」がうまくイメージできなくて。和嶋さんは“謡”（うたい）のような独特の節回しで歌っていらっしゃっていて。でもそれをそのまま私がトレースすると、ものすごく執念深くて未練がましい女の手紙みたいになるなっていう気がしたんです。

──サビは「あなた 永遠にお慕いします」「あなた 時に終わりはないわ」「闇の果てで お待ちしてます」だし、ワルツっぽいパートでは「覚えてますか」「鎮守の杜の 月夜の褥」って突然エロいことを歌いだすし。確かにこの女、面倒くさいしおっかないです（笑）。

ふふふふふ（笑）。そういう手紙、先立ってしまった女の子が現世にいる男の子に宛てて書いた手紙っていう形式の歌詞だったので、私よりちょっと年下の女の子、10代の女の子が執念深いお手紙をかわいらしく書いてるイメージで歌おうと思ってました。

「人間椅子にそんな短い曲はありません」

──ボーカルレコーディングに人間椅子の皆さんは？

和嶋さんにディレクションしていただきました。

──じゃあその上坂さんのボーカルプランについては和嶋さんはなんて？

やっぱりかわいい方向で歌わせようと考えていらっしゃったみたいです。「これは女の子がお手紙を書く曲なので、あまり恐ろしくならないほうがよいかと思います」っていう、すごく紳士的なディレクションをいただいて。だから「いやー、よかったです」っていう気分ですね（笑）。

──「私のプランに間違いはなかった」（笑）。

この曲をかわいく歌うことで、CDを聴く人に私の声の違いを楽しんでいただけたらな、とも思っていましたし。

──「閻魔大王に訊いてごらん」のカッコいい上坂すみれと、「冥界通信」のかわいい上坂すみれを。

同じ「メタル」といっても「閻魔大王に訊いてごらん」と「冥界通信」では曲調も全然違いますし。それなら声も違っていたほうが面白いかな、と思っていたので。

──確かに全然違うタイプの曲ですよね。「閻魔大王に訊いてごらん」は上坂さんがさっき言っていた通り、アニメソング的。ある意味機能的というか、テレビサイズの89秒でもちゃんと楽しめる構造になっているんだけど「冥界通信」は……。

「人間椅子にそんな短い曲はありません」って感じの曲ですよね（笑）。「1コーラスって何？」って感じでどんどん変わっていく曲調を楽しんでいただけるとうれしいです。

上坂すみれ、“架空のアニソン”を歌う

──そして通常盤限定のカップリング曲「罪と罰 -Sweet Inferno-」なんですけど、実はこれけっこうな問題作だと思っていて。「閻魔大王に訊いてごらん」以上にアニメソング的。ピアノが印象的なハードロック仕立てで、スケール感のある1曲ではあるものの、実はこの曲、何も言ってないですよね？

はい！ すごくカッコいい単語が並んでるんだけど、全然具体的ではない。すごくざっくりとしたことだけを歌ってみました（笑）。

──「流星群の夜 この胸を 射貫かれて散らばる 幾千のSecret」「『どうして生きるの？』と泣きながら」「『何故朽ちてゆくの？』舞うフィロソフィー」ですもんね（笑）。「上坂さん、何言ってんスか？」っていう感じというか。

ふふふふふ（笑）。だから私も曲をいただいたとき「“自由研究”ではないけど“課題”でもなさそうだし、これはなんだ？」ってすごく不思議な気持ちになったんですけど、おっしゃる通り、これはアニソンなんです。

──でもこの曲、ノンタイアップですよね。

だから架空のバトルアニメのテーマ曲なんです。

──繰り返しますけど「上坂さん、何言ってんスか？」。

あはははは（笑）。逆にこの曲を聴いた皆さんが思い思いのバトルマンガやバトル系のライトノベルを書いてくれたら面白いなあ、と思っていて。言葉がざっくりしているぶん、逆にどうとでも解釈できる。どんな物語でも書けると思うんですよ。

──そしてそのマンガやラノベがアニメ化された暁にはテーマソングは当然「罪と罰 -Sweet Inferno-」で、ヒロイン役の声優は上坂さん、と。

皆さんの作品、お待ちしてます（笑）。