大和市が教えてくれた“課題”の取り組み方

──カッコよく歌いきれた秘訣ってなんだと思います？

うーん……。これまでの私の曲は“自由研究”で、今回の曲は“課題”だって考えてみたからかなあ。

──ある教科の授業の一環という意味では一緒なんだけど、これまでの楽曲は、上坂さんが自由にテーマを設定して、そのことがらについてやっぱり自由に調べる“自由研究”的だったということ？

そうですね。でも今回は先生からもらった“課題”について、先生に教わりながら研究を進めていった感じなんです。学生の頃、班に分かれて神奈川県のことを調べようっていう社会科の課題があって。班のみんなでそれぞれ神奈川の各市について調べることになったんですけど、私、大和市の担当になって……。

──横浜の出身ですよね？

だから「いや私、横浜市民……」「あれっ!?」ってなって（笑）。でも当たり前なんですけど、大和も横浜と同じ神奈川だったというか。調べてみたら横浜とちょっと違うんだけど、でもやっぱり神奈川っぽくて。「わからない！」って慌てちゃったり、警戒したりする必要はなかったんだなって気付いたことがあったんです。

──今回のレコーディングはその大和市の研究に似ていた？

そうですね。基本的に私は「あっ、それ知ってる」「わかるから好き」っていうものばっかり集めがちではあるんですけど、「閻魔大王に訊いてごらん」という“課題”をきっかけに、それまで私とは縁がないと思っていた「カッコよく歌うこと」が実はすごく楽しいことだったんだって知りましたから。それかあれですね？ 「上坂すみれ」というクラスに「閻魔大王に訊いてごらん」という新しい転校生がやってきた感じ（笑）。

──そして転校生は存外いいヤツだった（笑）。

はい（笑）。すごくいい人で、その人と一緒の班だったから楽しくカッコよく“課題”に取り組めたんだと思います。

「ふんどしが似合うなあ」

──カップリングは和嶋慎治さんプロデュース、人間椅子の面々の演奏による「冥界通信～慕情編～」。この曲は“自由研究”ですよね。

まさに“自由研究”だと思います（笑）。

──ラジオ番組のゲストに2週連続で呼ぶくらいの人間椅子ファンですもんね（参照：上坂すみれ緊張！ラジオで人間椅子に2週連続インタビュー］）。人間椅子との出会いはいつ頃？

高校生のときですね。大槻（ケンヂ）さんの映像を探していて、人間椅子の皆さんが参加した「君は千手観音」っていう曲を見つけたのがきっかけで。ちょうどその頃バンドブームの系譜を調べるのも好きだったので、人間椅子についても調べてみて、まず「ふんどしが似合うなあ」ということに気付き……。

──鈴木（研一 / B, Vo）さんのユニフォームですもんね（笑）。

そのビジュアルが気になってCDを聴いてみたら、すごくおどろおどろしいものを書いていらっしゃって。それ以来のファンなんですけど、実は鈴木さんは私の大学の先輩で（鈴木、上坂ともに上智大学外国語学部ロシア語学科出身）。しかもありがたいことに、3人揃って私のラジオに来てくださったり、あと、私が観に行った去年の「OZZFEST」に出ていらっしゃったりもして。なので最近は勝手にシンパシーを抱かせていただいてます（笑）。

意外ながらも、人間椅子イズムばっちりの1曲

──だから実は上坂さんにはもともとメタル的素養があったんじゃないかっていう気がするんですよ。本格的にハマったのは大学時代なのかもしれないけど、Black Sabbathの影響下にあって「OZZFEST」にも呼ばれる人間椅子を高校生の頃から愛聴していたわけですから。

そうかもしれませんね。今回和嶋さんに作っていただいた「冥界通信」も最初は70年代のハードロックやヘヴィメタルみたいな、ゆっくり重たい感じで始まりますし。

──ただ大正琴でリードを弾くイントロや、Aメロ、Bメロこそ、おっしゃる通りドゥームメタル的。「確かに人間椅子らしいな」って感じなんだけど……。

突然さわやかになりますよね（笑）。

──サビに入ったら、急に景気がよくて明るい80年代ハードロック、Van HalenやNight Rangerみたいになって（笑）。

しかもそのあとアコースティックギターが入ったワルツっぽくなって（笑）。でも私が言うのはおこがましいくらい、すごいプレイヤーさんたちだから、その3つがすごくスムーズに融合していて。「閻魔大王に訊いてごらん」は最初バラードっぽく始まって突然メタルになるっていうギミックを効かせてるんですけど、私自身はこの曲を聴いたときのほうがビックリしました（笑）。しかもそれでいてちゃんと人間椅子イズムがばっちり表現されているから、ホントにすごい1曲だと思ってます。