ナタリー PowerPush - ティーナ・カリーナ

関西弁の話題曲「あんた」で注目 気鋭女性シンガーソングライターの素顔に迫る

「なんや田中さんかー」って親近感が湧く

──その後の展開が、すごくドラマチックというか運命的というか。ご自身も送ったのを忘れかけていた頃、仙台の音楽事務所から連絡があったんですよね。しかも、MONKEY MAJIKやGReeeeNを輩出したエドワード・エンターテインメント。

はい。2年前の3月に送って、その直後に東日本大震災があったので到着が少し遅れていたそうなんです。連絡をいただいたときは「まさか仙台の事務所から?」とすごくビックリしたんですけど、6月に一度会いに行ったら歌も気に入ってくださって、契約することになりました。東北のアーティストがメインの事務所なので一緒にやるなら仙台に来てもらうことになるっていう条件も、いろんなことがつながっての縁やなって思ったので迷いはなかったです。

──復興に向けて慌ただしい日々を送っていた同社スタッフの心にティーナさんの歌が響いた……。そう考えるとタイミング的にも本当に不思議な縁を感じますね。

はい。震災は本当に起こってほしくないことなんですけど、それがなければ今の私はいないかもしれない。もっとさかのぼるなら、あのときおじいちゃんが私に声をかけていなければ……って。まあ、おじいちゃん的には孫に結婚のことを訊いたらどっか遠いところに行ってしまったって感じでしょうけど(笑)。

──そうしてアーティスト、ティーナ・カリーナが誕生したわけですが、この名前の由来は?

本名が田中里奈なので、ターナカリーナ、ティーナカリーナ……みたいな。

──あっ、やっぱりそういうことなんですね!?

はい(笑)。田中っていう名字は全国的にすごく多いし、田中里奈ってインパクトがないって言ったらあれなんですけど、パッと見て「なんやこの人、外国人かな?」っていう、「?(ハテナ)」が生まれるような名前がいいと思って。

──私もまさにそう思いました。狙いはバッチリですね。

よかったー!(笑) 元々の私を知ってる人は、「え? マジで?」とか「大丈夫?」って言うんですけど、ティーナ・カリーナから知ってくれた人は「なんや田中さんかー」みたいに、一気に親近感が湧いてくれるみたいなんです。

──そうなんですよ! 私はなんなら最初、外国人かハーフ?って思いましたもん。

そこも狙いです! 「あんた」を聴いて「外国人やのに関西弁うまいねー」とか「すごい外国人が関西弁の曲歌ってる!」ってなったらちょっとおもろいかなって(笑)。

裸で歩いちゃってるような気分(笑)

──先程お話に出た「あんた」ですが、等身大の気持ちを関西弁でつづった強烈に耳に残るナンバーですよね。

この曲はレコード会社の方が私のストックから見つけ出してくれたものなんです。どれをデビュー曲にするかって話になってたときに、「これがいい」って言ってくれて。元々は3年前くらいに部屋で1人ほろ酔いになりながら作ったんですが、当時ここまで自分の胸の内をさらけ出した詞はなかったんです。というか、この曲しか関西弁で書いたこともなくて。

──そうなんですね。もっといろいろ書いてるのかと思いました。

違うんです。それに、ほかの曲でも言いたいことは言ってるんですけど、それでも少し飾ってしまってるというか。これは「むき出し」って言葉が一番ぴったりくるのかなって思うんですけど、ちょっと裸で歩いちゃってるような気分(笑)。恥ずかしくて、最初にライブでやったときは服を着てるけど「見ないで!」って感じでした(笑)。

──あははは(笑)。ところで、歌詞は遠距離恋愛がテーマなんでしょうか?

そうですね。でもこれを書いた当時は遠距離恋愛をしてなくて、マンネリ関係になってしまっていた当時の彼氏に向けて歌った歌なんです。近くに住んでても心がすれ違ったり、逆に近くに住んでるほうが会えなかったりするなって思って、それも心の遠距離恋愛って言えるのかなって。だから好きな人が近くにいても遠くにいても、いろんなリスナーの方が聴いて共感していただけるのかなって気がします。いつも仲良しのカップルも、大切な人がいるってことの素晴らしさにより気付けるかもしれないし。

──「あんた」をライブでやったときのリアクションは?

皆さん、すごく泣いてくれます。仙台のイベントで歌ったとき、たまたま大阪から観光で来てたおばちゃんが「あんた、(彼に)会いにいったらええのに!」って泣きながら言ってきてくれて。

──関西弁だし、なおさら感情移入しちゃったんでしょうね。

そうみたいです。最後には「がんばってな!」とか言って励ましてもくれて(笑)。うれしかったですね。

ニューシングル「あんた」/ 2012年10月17日発売 / 500円 / EPICレコードジャパン / ESCL-3990

CD収録曲
  1. あんた
  2. あんた(Instrumental)

ミニアルバム「ティーナ・カリーナ」/ 2012年9月12日発売 / 1500円 / EPICレコードジャパン / ESCL-3957

CD収録曲
  1. 輝いて
  2. 帰り道
  3. あんた
  4. みつけて
  5. 始まりの朝に
  6. Power of Love
  7. むすんで ひらいて
ティーナ・カリーナ

大阪府池田市出身の女性シンガーソングライター。大学時代より音楽活動を始め、卒業後は大阪市の阪急百貨店で販売員をしながら楽曲制作やライブ活動を行う。2011年春、プロデビューを目指して約50社にデモテープを送付。その中の1社、エドワード・エンターテインメントとの契約が決定し、活動拠点を同社の所在地である仙台に移す。2012年4月にはデビュー前にもかかわらず、POLAのテレビCMソングに彼女の楽曲「輝いて」が抜擢され、話題を呼んだ。2012年9月、ミニアルバム「ティーナ・カリーナ」でメジャーデビュー。この中の収録曲「あんた」は女性の気持ちを関西弁で歌ったラブソングとして大きな注目を集め、10月17日に急遽シングルカットされた。