音楽ナタリー PowerPush - the mornings

GOTH-TRADと完成させた“説明不能音楽”

2013年に結成10周年を迎えたthe morningsが、2ndアルバム「idea pattern」をリリースした。

前作から3年9カ月、メンバーの出産や脱退などさまざまな節目を乗り越え、そして全員社会人として仕事に就きながらようやく完成した今作。ミックスを担当した日本のダブステップのパイオニア・GOTH-TRADを迎え、彼らの音楽に起こった変化と今後の行く末について、語り合ってもらった。

取材・文 / 田島太陽 撮影 / 市村岬

 
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今さら音楽を辞める理由が全然ない

──前回ナタリーでインタビューを載せたのが2011年の1月(参照:the mornings「SAVE THE MORNINGS!」インタビュー)ですから、ずいぶん前ですね。

the mornings

ジュンヤ(Vo, G) 曲作って、ライブして、普通に音楽やってましたよ。

けいか(Dr) あと子供産んだり(笑)。

──4年近く経ってますからそういう状況の変化もあったと思うんです。なぜこのタイミングでのリリースに?

ジュンヤ 2013年の結成10周年のときに、「アルバム作ろう」って言い始めたのが最初なんです。けいかが2011年の7月に出産してずっとバタバタしてたけど、そろそろやろうかと。

──ではベースのラリーさんが脱退したのは、アルバムを作ると決めた後なんですね。

ジュンヤ 去年くらいから方向性として、曲をちゃんと演奏しようってモードになってたんですよ。前は「ワー!」ってやって「オー!」ってライブしてたんですけど、それだともう曲が伝わらないからやめようってなって。そしたらだんだん、(ラリーさんとは)方向性が違いますねということが浮き上がってきた。

──もう初期衝動的なライブはやめよう、という変化に至るのに、何かきっかけや節目はあったんですか?

ジュンヤ 前回のアルバムから少し経って新曲ができはじめて、それでライブしたときに気付いたんですよね。もう前みたいなテンションだとできないねって。

──できないというのは?

ジュンヤ ちゃんと曲を作るようになってきてたから、しっかり聴かせたいって思ったんです。勢いだけのライブだとチグハグしちゃうし。

──でも、前作のアルバムだってもちろん“ちゃんと”作っていたわけですよね。それが違う感覚になってきた?

左からワタナベシンペイ a.k.a. ポンタ(Vo, Syn)、キシノジュンヤ(Vo, G)。

ジュンヤ そうそう。前作は1stアルバムだし、結成から7年経ってようやく出せたんですよ。だから過去の曲をまとめるっていう、わりと単純な作業だったのかな。でも今回は、ちゃんと音楽的な作品にしたくて。

ポンタ(Vo, Syn) 去年の5月くらいにライブを減らそうって話をしたんですよ。練習を増やして、曲作るペースも速くして、もっと基礎体力をつけていこうと。そのときに、パッと気持ちが変わったというか、振り切れた感じはありましたね。これまで10年やってきたけど、あのタイミングでスイッチを入れ替えたから今回のアルバムができたのかなと思います。

ジュンヤ うん、そこからすごいがんばったと思う。摩耗し続けたけど、それでもちゃんと作りたかったから、こういう形でアルバムにできてよかったです。

──1stアルバムがリリースできた2011年にけいかさんに子供が生まれて、タイミング的にはそのまま活動しなくなってフェードアウトというパターンもあるんじゃないかと思ってたんです。そこからこうして戻ってくるには、結構なパワーが必要だったんじゃないですか?

ジュンヤ でも俺らは大学卒業してからずっと働いてるし、いわゆる普通の生活をしてるんですよ。だから今さら音楽辞める理由が全然ないというか。

──年齢的にも皆さん30歳前後になって、音楽以外に考えなきゃいけないことも増えてきたと思うんです。

ジュンヤ そうですね。だからかなり、いろんなものを犠牲にしちゃってるんです。仕事で迷惑かけたりとか、子供に対しても。

けいか 寂しい思いをさせてしまってることもあると思う。バランスには悩み続けてます。

バンドのよさは絶対そのまま活かしたほうがいい

──去年くらいからアルバム作りのスイッチを入れたということですが、こんな作品にしたいというビジョンはありましたか?

ジュンヤ 最初は、ちゃんと曲を作るってことだけ。でも常に思っているのは、自分たちが聴いたことがない新鮮な曲で、モーニングスしかやらないことをしようって。それだけは前からずっと考えてたことだから、ビジョンがあったというより、その気持ちの精度がより上がってきたのかな。

──今までは最初から最後までメンバーだけで完結していたわけですよね。それが今回はなぜGOTHさんにミックスをお願いしようと?

ジュンヤ もとは今回も自分たちだけで作ろうって話だったんですよ。10年間やってきたし、メンバーだけの力でいいものにしようって。でもラリーさんが抜けてどうしても人の力を借りる必要があって、それで元SuiseiNoboAzの溝渕(匠良)さんにベースを弾いてもらったら急に曲がよくなった実感があったんです。ということは、やっぱり外の目もあったほうが、曲のポテンシャルを引き出せる部分もあるのかなって。それからはnhhmbaseのマモルさんにスタジオに来てもらってアドバイスをもらったり、ハリネコの沙知さんにポンタ(ワタナベの愛称)が歌を教えてもらったりしていた中で、ミックスも誰かにお願いしようと。

ポンタ 立体的な音を作れる人で、バンド界隈の人じゃないほうがいいよねってことをぼんやりと話してました。

──GOTHさんとしては、最初に話を聞いたときの印象は?

GOTH-TRAD

GOTH-TRAD そもそも、ウチの嫁さんとけいかちゃんがママ友だったんですよ。かなり前に「これ友達なんだ」ってバンドの映像を見せられたこともあったけど、まぁ「ふーん」って(笑)。

けいか 「ふーん」ですよね(笑)。

GOTH 「あ、ドラムは女の子なんだ?」くらいで。

けいか それで、1回家族ぐるみでごはんを食べたんです。まだミックスをお願いしようと思ってたわけではなく、普通に。

──ジュンヤ・けいか夫妻と一緒に。

GOTH そうそう、嫁さんに「友達とごはん食べるから来て」って言われて。俺はよくわからないまま子供連れて行ったんだけど、そこでしゃべったらなんか気が合っちゃって。

ジュンヤ 僕はもともとGOTHさん大好きだったから、そのあと2人で飲みに行かせていただいたりもして。それで、しれっとお願いしてみようかなって。

GOTH 「アルバム作るって言ってたじゃないですかー、それで、お願いしたいんですけどー」ってね(笑)。俺はバンドの人間じゃないからって話をしたんだけど、後日デモを聴かせてもらったらアティチュードがすごく伝わってきたんです。イメージが湧くし、アイデアもすごく面白いなと。それで春くらいに正式に話をもらって、ちょうど俺も時間があったから、じゃあやりましょうという話になって。

──この言い方はモーニングスに失礼ですけど、GOTHさんのキャリアとしては受けなくてもいい依頼だったと言いますか。

けいか うん。そう思います。

──でも受けることにしたのは、何か理由があったのかなと。

the mornings

GOTH 純粋に、面白そうだと思ったんですよ。音もよく作り込まれてるし、こっからさらによくするにはどうするかという部分で。でも正直に言えば、受けてから実際に作業を進めていくと、もう完成されてるから迷った部分もあって。俺はプロデューサーではないから、どこまでやっちゃっていいのかな?って。期待しすぎないでほしいというか、頼られすぎても困るし。

ジュンヤ そうだったんですね。

GOTH ミックスバランスを整えたり、ちょっとしたエフェクトは考えるけど、アレンジやプロデュースの面ではバンドのポテンシャルに任せたほうが絶対いいと思ってるんです。だから今回も、本当にちょっとエディットした程度ですよ。

ジュンヤ 今回はGOTHさんに頼むってことが決まってたから、レコーディングでパートごとにプレーンに録ったんです。そこからはGOTHさんがなんとかしてくれるだろうと思って(笑)。今までは一発録りでギャンギャン鳴らしてたから、これは新しい試みだったかもしれない。

GOTH 俺も10年ぐらい前は作り込みすぎるタイプで、それがいやになったんだよね。今はできるかぎり音数を減らしてシンプルにして、カッコいいものを作りたいと思ってる。だからモーニングスの音源もかなりすっきりしてるのが気に入って、エフェクトで少し空気感を出すだけで十分だなって。それくらい展開がしっかりしてたよ。

ジュンヤ GOTHさんと飲み屋で話したときも、バンドの音はシンプルなミックスのほうがいいって言ってたんですよ。自分のエゴを出すのではなく僕らに寄り添って作ってくれる人なんだなってわかって、それがお願いしようと思った決め手になったかもしれない。

けものけいか(Dr)

GOTH 正直に言うとね、打ち込みでバンドに近付けようとした音って俺はカッコよくないと思うんだよ。逆にバンドが打ち込みっぽくするのも同じで。

けいか でも流行ってる印象ありますよね、そういう音。

GOTH 俺はそれは劣化だと思ってるんだよね。バンドのよさは絶対そのまま活かしたほうがいいよ。

ニューアルバム「idea pattern」 / 2014年10月29日発売 / 2101円 / ハリエンタル / HET-04
ニューアルバム「idea pattern」
収録曲
  1. fuji
  2. 最近のアメリカ人
  3. VSCOM
  4. B/S/D BLADE
  5. ケチャンゲリオン
  6. グリーンメタル
  7. お腹の痛い敵
  8. キラーサーカス
  9. ベースは森
the mornings “idea pattern” release party
2014年11月19日(水) 東京都 下北沢SHELTER
OPEN 19:30 / START 20:00
料金:前売 2000円 / 当日 2500円(ドリンク代別)
出演:ゲスバンド / bronbaba / the mornings
the mornings 出演ライブ情報
2014年11月8日(土) 京都府 GROWLY
SANMA SONIC 2014
2014年11月22日(土) 愛知県 SONSET STRIP
LUMP vol.2.0 ~the mornings & folk enoughダブルレコ発!!~
2014年11月27日(木) 東京都 新宿dues
ディスクユニオンpresents “otori × the mornings 同時レコ発”
2014年12月12日(金) 東京都 下北沢ERA / 下北沢リンキィディンクスタジオ1st全部屋 / Bar Space ERAのうえ
みんなの戦艦presents“みんなの戦艦リンキーディンク4”
the mornings(モーニングス)

the mornings

ワタナベシンペイ a.k.a. ポンタ(Vo, Syn)、キシノジュンヤ(Vo, G)、けものけいか(Vo, Dr)による3人組バンド。2003年結成。ハードコア、ニューウェーブをベースにしたサウンドをもって怒涛のライブを展開。若手バンドが集った「TOKYO NEW WAVE 2010」のほか、術ノ穴主催のコンピレーションでtofubeats、環ROYらと名前を並べるなどジャンル/シーンを越境しながら活動ペースを一層活発にし、2010年には満を持しての1stアルバム「SAVE THE MORNINGS!」を発表。2013年、アメリカテキサスで行われた「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」に参加。

GOTH-TRAD(ゴストラッド)

the mornings

ミキシングを自在に操り、さまざまなアプローチでダンスミュージックを生み出すサウンドオリジネイター。2001年、秋本"Heavy"武士とともに REBEL FAMILIAを結成。2003年に1stアルバム「GOTH-TRAD I」を発表し、国内でソロ活動を本格的にスタート。積極的に海外ツアーを始める。2005年には2ndアルバム「The Inverted Perspective」をリリース。同年11月にはMad Raveと称した新たなダンスミュージックへのアプローチを打ち出し、3rdアルバム「Mad Raver's Dance Floor」を発表。このアルバムに収録された「Back To Chill」がロンドンのDUBSTEPシーンで話題となり、2007年にUKのSKUD BEATから「Back To Chill EP」を、DEEP MEDi MUSIKから、12インチ「Cut End / Flags」をリリースした。以降、国内外からリリースを続け、ヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニア等、世界中でコンスタントにツアーを重ねる中、2012年にはアルバム「New Epoch」を発表し「FUJI ROCK FESTIVAL'12」に出演。2011~2014年にかけては、欧米のビッグフェスにも出演してきた。2006年より開始した自身のベースミュージックパーティ「Back To Chill」のレーベルが、2014年始動。第1弾となるコンピレーションには、GOTH-TRADやENAはもちろん、100mado、DUBTRO、Karmaなど国内外のレーベルからリリースを重ねる精鋭による録り下ろしの10曲が収録されている。