音楽ナタリー PowerPush - 残響のテロル

菅野よう子&Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)メールインタビュー 予測不能のストーリーを彩る音楽の世界

菅野よう子&Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)メールインタビュー

菅野よう子

──渡辺信一郎監督とのタッグは「マクロスプラス」「カウボーイビバップ」「坂道のアポロン」に続く4作目となりますが、今回は監督からどのようなオファーがあったのでしょうか。具体的なリクエスト、イメージの伝達などはありましたか?

菅野よう子

いつもそうなのですが、どんな「言葉」で監督から伝えられたかはあまり覚えていないのです。ただそのときは、このタイトルでは放送できない、という題名が付いていました。放送できないそのタイトルからスタートしているので、少々「ヤバい」ところに踏み込んで曲を作り始めました。

──「残響のテロル」はどのような作品だと感じましたか? また音楽を手がける上で意識したことは?

言葉にしにくい(だからアニメにしたとも)。意識したことは体感温度の低さ。マイナス7~9度くらいを想定。

──劇中曲のレコーディングにおけるエピソード、注意した点など教えてください。

アイスランドは行くのも録音するのも初めて。ガイドブック等の情報もあまりなく、なんとなくごはんがまずそうと思って行ったらおいしくてビックリ。4月なのに横殴りの雪でした。初めての国、初めてのミュージシャンなのに、皆さんが世界観をすぐに把握して下さって、「深い」録音ができたと思います。いつも以上に音響にも凝りました。

──今作ではオープニング&エンディングテーマでYuuki Ozaki(from Galileo Galilei)、Aimer、青葉市子という3人のアーティストとの初コラボが実現しました。3人の印象を教えてください。

尾崎君、Aimerさんとも、北の声を持っていると感じました。私にとって「北」は彼岸、天国に近い世界です。絶望と希望が入り交じり、若さの切れ味も鋭く、お2人とも素晴らしいボーカリストです。尾崎君には先に詩をいくつか書いていただいたのですが、どれもザワザワするカッコよさがあって、ご本人には聴かせてないけれど全部に曲を付けてしまいました。Aimerさんは、デモを渡したのが録音前日にもかかわらず、いきなりOKテイクの連発で驚きました。あとで、尾崎さんは北海道が本拠地、Aimerさんは昨年アイスランドでライブをやったと聞き、北っぽい印象と思ったのは間違いじゃなかったと思いました。エンディングの歌詞を書いてくださった青葉市子さんとは、初めてお会いして打ち合せした日に、詩や作品のテーマをめぐる不思議な出来事がいろいろあって。彼女の物語に巻き込まれ、漂い、詞先で曲ができました。

──3人からアーティストとして刺激を受けたところはありますか?

3人とも、自分の世界を持っていらっしゃること。そりゃーもー、カッコいいなーと。

──テーマソングのレコーディングでそれぞれ印象に残ったことがあれば教えてください。

尾崎君の音程のよさ。Aimerさんの勘のよさ。声が素晴らしいので、OP、EDとも、歌がとても大きく目立つミックスになっていると思います。

──「残響のテロル」登場キャラクターで一番好きなキャラ、感情移入できるキャラは誰ですか?

主人公の2人のどっちか、あるいは両方だとは思うのですが、そもそもまだ謎が多過ぎて。

Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)

──菅野よう子さんとは今回が初めてのタッグになりますが、どんな形で作業を進めましたか? また菅野さんが作る音楽に対してどんなイメージを抱いていましたか?

Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)

まず最初はメール、電話でのやり取りでした。僕たちは札幌に自宅スタジオを持っているので、そこで歌を録って菅野さんに送るという感じでした。それからレコーディング直前に菅野さんに直接お会いして、メロディーや歌詞の最終確認をした後、スタジオで歌を録りました。

菅野さんの楽曲は小さい頃から好きでした。僕が4~5歳の頃、菅野さんが音楽を担当している「大航海時代II」というゲームを母がやっていて。そのBGMがとても好きだったので、よく母の隣に座ってプレイを観ていました。バンドで曲を作るようになってからも「創世のアクエリオン」を聴いて衝撃を受けました。もちろん「カウボーイビバップ」も好きでしたし、バンドメンバー全員が大好きなアメリカのバンドFleet Foxesのフロントマン、ロビン・ペックノールドが、インタビューで菅野さんのことをリスペクトしていると言っていたのも印象深いです。なので今回のコラボは本当に心から光栄でした。

──「Trigger」を聴いたときの第一印象を教えてください。

退廃的なムードと神々しいイメージを同時に感じて、不思議な曲だなあと思いました。メロディーや音にしっかりとした世界観を持った曲だったので、歌詞も書きやすそう!と安心しました。

──菅野さんとの共作を通して影響を受けたことがあれば教えてください。

このコラボで菅野さんから学んだことはたくさんあって。歌詞に対する考え方、楽曲全体と綺麗に絡み合うコーラスワーク、リズムの取り方……。特にリズムについては、菅野さんから直々にアドバイスをもらったので、すべてメモったりしました。ちなみに最近もらったリミックスの仕事では、気付かないうちに菅野さんの手法を意識していました(笑)。

──作詞を手がける上で意識したことはありますか? 「残響のテロル」で描かれる世界を意識した部分があれば教えてください。

主人公2人の関係性が面白いなと思ったので、そこを中心に言葉を組み立てていきました。「残響のテロル」が明確なテーマを持った作品だったので、エモーショナルな気持ちをずらーっと書くより、世界設定をある程度固めてから書いたほうがいいなと思い、登場人物や彼らが置かれている状況を考えることから始めました。

──Galileo Galileiで楽曲を作るときや、バンドで歌うときとの違いはありましたか?

バンドの楽曲アイデアも基本的には1人で作っているので、大きな違いは特にありませんでしたが、尊敬する作曲家が作ったメロディを歌う、という喜びがありました。

──「残響のテロル」に登場するキャラクターの中で自分に近いのは誰ですか? その理由も教えてください。

メインキャラクターに自分に近い人物がいないので、たぶんテロに恐れおののくモブキャラです。

──好きなアニメ作品は? また自身の制作活動に影響を与えた部分はありますか?

「未来少年コナン」「ポポロクロイス物語」「ねこぢる草」「アドベンチャータイム」「ハイスクール奇面組」「花田少年史」「おくびょうなカーレッジくん」「ベルサイユのばら」「銀河鉄道999」……10代の頃にアニメからもらったイマジネーションは、自分の歌詞や考え方の中で生きています。

菅野よう子「『残響のテロル』オリジナル・サウンドトラック」 / 2014年7月9日発売 / 3240円 / アニプレックス / SVWC-70009
菅野よう子「『残響のテロル』オリジナル・サウンドトラック」
収録曲
  1. lolol
  2. von (feat. Arnór Dan)
  3. ess
  4. saga
  5. fugl
  6. hanna (feat. Hanna Berglind)
  7. veat
  8. lava (feat. POP ETC)
  9. walt
  1. birden (feat. Arnór Dan)
  2. Fa
  3. nc17
  4. ís (feat. POP ETC)
  5. 22 (feat. Ryo Nagano)
  6. seele
  7. lev low Yoko Kanno
  8. ili lolol
  9. bless (feat. Arnor Dan)
「残響のテロル」オープニングテーマ Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)ニューシングル「Trigger」 / 2014年8月27日発売 / SME Records
Yuuki Ozaki(from Galileo Galilei)ニューシングル「Trigger」
初回生産限定盤 [CD+DVD] / 1600円 / SECL-1562~3
通常盤 [CD] / 1300円 / SECL-1564
「残響のテロル」エンディングテーマ Aimerニューシングル「誰か、海を。」 / 2014年9月3日発売 / DefSTAR RECORDS
期間生産限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / DFCL-2080~1
通常盤 [CD] / 1500円 / DFCL-2079
菅野よう子(カンノヨウコ)

作曲家 / 編曲家 / プロデューサー。早稲田大学在学中にロックバンド、てつ100%のキーボーディストとしてデビュー。バンド解散後より作曲 / 編曲 / プロデュース業を行うようになる。SMAP、今井美樹、坂本真綾、小泉今日子、T.M.Revolution、湯川潮音、元ちとせといったさまざまなアーティストを手がけるほか、CM音楽のジャンルで多数の広告音楽賞を受賞。アニメ作品のサウンドトラックも「カウボーイビバップ」、「攻殻機動隊S.A.C」、「マクロスF」など数多く手がけ、国内外で熱狂的なファンを獲得。2005年には作・編曲を手がけたアニメ「創聖のアクエリオン」のオープニングテーマ「創聖のアクエリオン」が大ヒットを記録した。2013年夏よりレーベル「PIANO」での活動を開始。グランドピアノの演奏とプロジェクションマッピングを融合させた独自のプロジェクト「piano me」をスタートさせる。同年9月より放送されたNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」では劇中音楽を手がけ、12月にはそのサウンドトラックCDがリリースされた。2014年7月より放送のフジテレビ系アニメ「残響のテロル」では劇中音楽およびオープニング&エンディングテーマを含む全編のサウンドプロデュースを担当。

Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)

尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B, Cho)、尾崎和樹(Dr,Cho)による3ピースバンドとして、2007年に北海道・稚内にて結成。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録し、2013年10月にはPOP ETCのクリストファー・チュウをプロデューサーに迎えて制作された最新アルバム「ALARMS」を発表。邦楽ファンのみならず洋楽ファンからも支持を集める。2014年2月には東京・渋谷公会堂での初ホールワンマンを行い成功を収めた。