音楽ナタリー PowerPush - TeddyLoid

“無冠の若き帝王”を徹底解剖

2歳でエレクトーン、小3でDTM

──まず最初に、Teddyさんの音楽の原体験はいつ頃、どういったものでしたか?

TeddyLoid

僕は幼少期、2歳からエレクトーンを始めまして。それが自分の音楽キャリアの原点ですね。

──そんなに早くから!

そうなんです。それでエレクトーンを続けて、小学校3年生のときにDTMを始めたんですよ。

──ええっ!? 小3といったらまだ8歳、9歳ですよね。

はい(笑)。エレクトーンって自分で鍵盤も弾く以外にドラムも打ち込むし、ベースも足で弾くし、それってDTMとまったく一緒のことを生演奏でやってるだけであって。

──確かに。

その頃僕は現代音楽を専攻していて、いろんな音色を使いたいなっていうときにエレクトーンじゃ限界を感じまして。それで当時家にあった富士通のノートパソコンにAbletonの「Live」というソフトをインストールして、音楽制作を始めたんです。

──小3で「Live」を使ってDTM、ってすごいことですよね。驚きました。ちなみに音楽的にはどういったジャンル、アーティストに影響を受けてるんですか?

DTMを始めた当初はヒップホップが好きで、ターンテーブルを購入してからはスクラッチとかバトルDJにも挑戦しました。そこからトランスに行って、2005、6年頃にフレンチエレクトロにどっぷり浸かって。Daft Punk、Justice、Para One、Surkinからとても影響を受けました。中でもDaft Punkは原点と呼べるアーティストですね。

──2005年前後ってJusticeをはじめ、「Kitsuné」(フランスの人気インディレーベル)周辺のフレンチエレクトロ系アーティストが日本でもどんどん人気が出てきた頃ですよね。

そうですね。その頃僕はMyspaceを始めて海外のアーティストと交流してました。あと僕、日本ではm-floとSOUL'd OUTにとても影響を受けているんですけど、Myspaceを通じて☆Taku(Takahashi)さんに「曲を聴いてください」とメッセージを送ったことがあって。そこで曲を聴いてもらえて、いろんなことが本格的に進み始めたんです。あのとき☆Takuさんに曲を聴いてもらっていなかったら、もしかしたら今こうやって活動してないかもしれない。それくらいお世話になってますね。

自分の作品で聴いた人の感情を揺さぶりたい

──そういった音楽活動を経て、2008年にはTeddyLoid名義での活動が始動するわけですが。

はい。その前は別名義でやっていたんですけど、TeddyLoidというプロジェクトを始めたのは2008年。このTeddyLoidとしての活動にはストーリーがありまして……Teddy少年が幼少時代、宇宙の何者かによって拉致されて宇宙をさまよう。そして地球上にはTeddy少年の代理アンドロイドであるTeddyLoidがライブをやっていたり作品を作っていたり、というものなんです。

──そういうSFチックな世界観って、それこそTeddyさんが大好きなDaft Punkの世界観にも通ずるものがありますね。

そうですね。もともと僕自身が宇宙やSFが大好きだったんで、そういうものをモチーフにした活動をしたいなと思ってたんです。

──Daft Punkは覆面をして素性を隠していますが、TeddyさんはDJするときもご自身が表に出てます。そこに対してはこだわりがあるんですか?

最初、TeddyLoidを始めた頃はまったく顔も出したくなかったし、実は本当にアンドロイドを用意してライブをすることも考えたんですよ。でも自分で曲も作ってるし、曲作りだけではなくライブもDJも好きなのでどんどんやりたかったんです。だったら自分が出ていこうということになって、今の形に至ります。

──2008年のTeddyLoid活動開始以降、本当にいろんなアーティストのサウンドプロデュースやリミックスを手がけてきましたよね。

ありがたいことに、いろんな方にお声がけいただきましたね。

──中でも僕が特に印象に残ってるのが、アニメ「Panty & Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックでして。

TeddyLoid

もうそれはとても楽しい仕事でしたね。僕自身アニメやゲームが大好きでしたし。しかも☆Takuさんと一緒にやらせていただけたのはとてもいい経験にもなりました。

──ちなみにTeddyさんはアニメだと、どのへんが好きなんですか?

僕はね、もうそれこそ「攻殻機動隊」が大好きで。

──なるほど、クラブミュージックとの関係が強い作品ですもんね。ゲームが好きといえば、ご自身のリミックスの中には「テトリス」のゲームミュージックを用いたリミックスもありますよね。

過去には「ファミ・コンピ」というアルバムに、テトリスとか名作ゲームのテーマ曲のカバーを提供させてもらいました。ゲームも本当に好きで、中でもFPS(First-Person Shooterの略。シューティングゲームの一種で、主人公の一人称視点でゲームが進行する作品)が大好きなんです。以前は自分でチームを組んで、それこそ大会に出てたくらいでして(笑)。

──そこまでのめり込んでいたんですね。いろんなジャンルに精通している中で、活動の中心に音楽を選んだのはどうしてですか?

僕は音楽以外にも映像や写真、イラストも好きで。その中でも音楽って、2、3分とか3、4分とかの短い時間の中に広大なストーリーがあったり、そのストーリーに感情を揺さぶられたりする独特なメディアだと思うんですよ。それって決して簡単なことではないけど、僕は自分が感化されたように、自分の作る作品で聴いた人の感情を揺さぶりたいし、そういう作品をどんどん作っていきたいと思ったんです。それが音楽を選んだ理由です。

──感情を揺さぶるという意味では、今回のTeddyさんのCD「UNDER THE BLACK MOON」の楽曲はメロディアスでドラマチックなメロディやアレンジで、聴き手の感情を揺さぶるものばかりだと思いました。

ありがとうございます。クラブミュージックやダンスミュージックに対して「ドンドンドンドンいってるだけ」「ガシャガシャしていてよくわからない」というイメージを持ってる人も多いと思うんですけど、僕がやってきたフレンチエレクトロ、フレンチタッチっていうジャンルはとてもドラマチックでメロディアスな上に、ストーリー性がある。ずっとそこを心がけてきたんで、そう言っていただけるとうれしいです。

音楽を通じて少しでも笑顔になってもらいたい

──9月17日にリリースされる1stアルバム「BLACK MOON RISING」のタイトルは、昨年からスタートしたプロジェクトの名前でもあるんですよね。

TeddyLoid

そうです。「BLACK MOON RISING」は“TeddyLoid第2章”と謳ってるんです。実は去年、以前所属していたマネジメントから離れましてけっこう自由な時期があったんですよ。それこそ好きなことができるなと思って、第1章「Reactivation Ship」のストーリーの続き……宇宙に拉致された何者かによって宇宙に連れ去られたあとの話を考えようと思って。宇宙船に乗ってさまよって、行き着いた先というのが黒い月の裏側。その黒い月の裏側でTeddy少年が1人で過ごす孤独感、そして成長、地球上に取り残されてるTeddyLoidとの友情物語というのが第2章のストーリーとなっています。

──「BLACK MOON RISING」のコンセプトやストーリーって、すごくファンタジー性が強いものですよね。現代はどちらかというとリアリティがあるものが求められている印象があるんですが、そんな中でこういったファンタジー性を打ち出した世界観を提示することに不安はなかったですか?

特にないですね。いろいろ大変なことも多いこんな世の中だし、音楽を通じて少しでも笑顔になってもらいたいから……例えば映画やアニメを観てる間は現実逃避って言ったらなんですけど、その世界に入り込めるじゃないですか。だったら僕はリスナーの方々に、「BLACK MOON RISING」というコンセプトのもとに制作された楽曲を聴いてる間は「BLACK MOON RISING」の世界に浸ってほしいな、そういう場を提供したいな……そういう気持ちがあったので、まったく不安はなかったですね。

ワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」 / 2014年8月27日発売 / 500円 / EVIL LINE RECORDS / KICS-93102
ワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」
収録曲
  1. 2000光年のかなたに
  2. BLACK MOON RISING pt.3
  3. BLACK MOON RISING pt.4
  4. BLACK MOON RISING pt.5
  5. FOREVER LOVE
1stアルバム「BLACK MOON RISING」 / 2014年9月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
1stアルバム「BLACK MOON RISING」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3240円 / KICS-93103
通常盤 [CD] / 2700円 / KICS-3103
TeddyLoid(テディロイド)

1989年8月23日生まれの男性アーティスト / 音楽プロデューサー / DJ。18歳でMIYAVIのメインDJ / サウンドプロデューサーとして13カ国を巡るワールドツアーに同行した。2010年には☆Taku Takahashi(block.fm / m-flo)とともにテレビアニメ「Panty & Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックを担当。翌2011年には柴咲コウ、DECO*27とともにgalaxias!を結成し、アルバムを発表した。またSOUL'd OUTのツアーではスクラッチDJとしてのテクニックも披露している。2013年にはももいろクローバーZの楽曲「Neo STARGATE」でアレンジを担当したほか、同年4月の「ももいろクローバーZ 春の一大事 2013 西武ドーム大会」ではDJとしてもライブに参加。さらにMEGやマドモアゼル・ユリア、TEMPURA KIDZ、Yun*chi、the GazettE、SuGなどさまざまなジャンルのアーティストの楽曲プロデュースやアレンジ、リミックスを手がけている。2013年8月からは自身のオフィシャルサイトで、「BLACK MOON RISING」と銘打たれた連作を発表。2014年7月にキングレコードの新レーベル「EVIL LINE RECORDS」とのアーティスト契約を発表し、翌8月にワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」、9月に初のオリジナルアルバム「BLACK MOON RISING」をリリースする。