田村ゆかりが歌う理由

──田村さんは常にその誠実がゆえのジレンマと向き合ってますよね。ファンが期待する「ゆかりんらしさ」には応えたい、作詞家さんの言葉であれ自分の思いを伝えたい、でも素の自分が見えるCDは聴いてほしくないという（笑）。

誰にも聴かれたくないんですよ。買わないでください！（笑）

──極論を言うと「買わないでほしい」だけど（笑）、でも作りたい、自分の思いを届けたいわけじゃないですか。そこに対する嘘つかなさは誠実だなと。

誠実なのかなあ。会社のお金を使って、自分の日記を出すなんて（笑）。かまってちゃんだから聴いてほしいんですよ本当は。でも恥ずかしい。

──そうすると、どこに届けば成功、正解なんですかね。

正解はないんですよ。私はアーティストじゃないから、何か伝えたいことがあって「歌で世界を変えてやる」と思っているわけでもないし。くくり的にはアイドルのそれで、用意されたものを歌うというのが基本なんですけど、長年やってると「ゆかりさんの好きなように」っていうふうになっちゃうんですよね。そんな中で、自分からメッセージを発信しないなりに、自分が伝えたいことというのはあって。自分がなぜ歌ってるのかはわからないんですよ。仕事だからとも言えるし……。ただ自分が思っていることを聞いてほしいだけなんですよ、振り返ってみると。おんなじことを思っている人がいたらうれしいなって。そういう人の気持ちに届けばうれしいなとは思いますけど。

──なるほど。

今の気持ち的にはこうだったんですよ。わからないですよ？ 来年急に「流れ星に乗って綿菓子を見つけたよ♡」みたいな歌を歌い出すかもしれないですし（笑）。最近好きなアーティストさんの、どこが好きなんだろうと冷静に考えた結果、歌詞が病んでるからかもしれないって気付いちゃって（笑）。私はそこに共感して気持ちが動いたりするので、私のCDを聴いて誰かが同じようなことを感じてくれたら、別にうれしかないけどやってよかったなあと思いますよね。共有できてうれしいみたいな。

ゆかりんの2015年

──このシングルを作り上げたことで、ご自身の中で何か変化はありませんか？

うーん、どうだろうなあ。これを歌うことでよりドンヨリとはしましたけど（笑）。

──でもきっと、こういう「ディープなゆかりん」を求めてる人もいると思うんですよ。今までの田村さんの作品を知らなかった、まったく別方向の音楽ファンのアンテナに引っかかるかもしれないし。

どうなんでしょうねえ。やっぱり表題曲以外は好きで聴いてくれる人以外には届きにくいですから。

──このインタビューがきっかけの1つになるといいんですけど。それこそ田村さんが好きなアーティストのニュースも流れるサイトに掲載されるものですし。

あ、それはめっちゃうれしい！ 高まるー！（笑）

──2015年に向けての目標は何かありますか？

……。

スタッフ　急に黙り始めた（笑）。

はっはっは（笑）。目標ってホントないんですよね。いつも聞かれるとつい適当なこと言っちゃうから、次会ったときに「私そんなこと言いましたっけ？」ってなるんですよ。前に私「イワナを釣る」って言ったことがあるみたいで（笑）。目標……なんだろう。今回こういう歌を作っちゃったので、女の子限定のライブも一度やってみたいですね。でも私のライブに来る女子たちはみんなフリフリだし、かわいいほうを求めてるのかもなあ。みんな主食がこんぺいとうだから、豚バラとか食べないもん。豚バラは私がたった今食べたいんですけど（笑）。小さな会場で、ちょっと変わったライブとかもやってみたいですね。