音楽ナタリー Power Push - 瀧川ありさ

今、バラードを歌う理由

瀧川ありさが4thシングル「Again」を4月6日にリリースする。

昨年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」でメジャーデビューを飾り、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマ「さよならのゆくえ」で広くその名を知られることになった彼女。デビュー2年目の第一歩を飾るシングルの表題曲は、従来のギターサウンドを封印した、ピアノとストリングスを中心とした力強いバラードだ。彼女が今、バラードを発表する真意とは? そして、瀧川が抱える「シンガーソングライター」としての悩みとは? じっくりと話を聞いた。

取材・文 / 須藤輝

全国からファンが集まった2ndワンマン

──まずは3月4日にデビュー1周年を迎えられたということで、おめでとうございます。

ありがとうございます。

──この1年間、シングルを3枚リリースしたほか、全国インストア行脚あり、「SUMMER SONIC」への出演あり、2度のワンマンライブありと、精力的に活動なさっていたわけですが振り返ってみていかがですか?

濃すぎましたね。最初は何事も新鮮だからそう感じるというのもあるんですけど。コンスタントに、3~4カ月に1枚のペースで音源をリリースできて、そのたびにインストアイベントで全国を回れたので、ミュージシャンとしては非常に健康的な1年だったと思います。

──やはりライブは大事ですか?

大事です。歌う場がないと、ちょっとつらくなってきますね。やっぱり制作だけだと思い詰めてしまったり。でも、ちょうどしんどくなってきた頃に、うまい具合にライブがあるといういいサイクルができていたんです。あと、今年2月に東京・原宿アストロホールで2ndワンマンライブをやらせていただいたんですけど、そのとき会場にいたお客さんの多くが、東京以外の地方から来てくださった方だったんです。

──全国津々浦々のファンが一堂に会したかのような。

それがすごくうれしくて、本当に得難い経験だったなと。私は気が小さくてよく悩むんですけど、そうしたファンの方々に助けられています。まさに「君の存在だけで」(瀧川のデビューシングル「Season」の歌詞の1節)ってことなんですよ(笑)。

バラードが難しい時代にあえて斬り込む

──そしてこのたび4thシングル「Again」がリリースされるわけですが、バラードのシングルは初めてですよね?

はい、表題曲では初めてですね。

──なぜ今回はバラードを?

1つは単純に、シングル4枚目となって次の一手はバラードを出したいなって思ったからです。自分の中で、流れ的にそれがしっくりくる気がしたんですね。もう1つは、今の時代って、あんまりバラードをシングルで出す人がいないじゃないですか。私が小さかった頃は、冬はバラードっていうイメージがあったんですよね。まあ、今は春なんですけど、そんなバラードが下火になっている時代に、シングルの表題曲としてバラードを発表するのは勇気が要る。だからこそ、そこに斬り込んでいきたい。勇気を出したいなって。

──過去に音楽ナタリーでは、アニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」と、アニメ「終物語」のエンディングテーマ「さよならのゆくえ」のリリース時にインタビューさせていただきましたが(瀧川ありさ「Season」インタビュー / 瀧川ありさ「さよならのゆくえ」インタビュー)、今回の「Again」はノンタイアップです。タイアップとノンタイアップで、作詞作曲の仕方は変わりますか?

変わりますね。タイアップの場合はアニメありきなので、先立つテーマがある分、やりやすいといえばやりやすいです。一方ノンタイアップは、自分の中からテーマを引き出すので、当然そこに大きな差はあります。ただ今回は、「終物語」の楽曲「さよならのゆくえ」で瀧川ありさをたくさんの人に知っていただけたあとの次の1枚という意味ですごく重要な作品になってくるので、ここはやっぱり今の自分が一番リアルに感じていることを新鮮なうちに伝えたいなって。だから、そこまで大変じゃなかったですね。

──伝えたいことはすでにあったと。瀧川さんは曲と歌詞が同時に出てくるタイプだと、前回のインタビューでおっしゃっていましたよね。

はい、「Again」もまさに同時ですよ。ギターを弾いているときに歌詞も出てきました。なんとなくギターを弾いてるときに、さらっと勝手に出てくる言葉が本心というか、ありのままの自分だったりするんですよ。その意味では、非常にスムーズに、健康的な状態で生まれました。

悩める人を「そのままでいいよ」と肯定したい

──その「Again」はある種の応援歌というか、歌詞に登場する「君」を励ますような歌ですが、その「君」は当然不特定多数のリスナーであり、瀧川さんがかつて出会った誰かである一方で、瀧川さんご自身のようにも思われるのですが。

その通りです! 「Again」を歌っているときも、その詞が自分に向けられていると感じることもあれば、誰かに伝えたいという思いがあふれてることもあって、毎回歌うたびに違うんですよ。例えば、周りに自分を支えてくれる人たちがちゃんといるのに、1人で悩みを抱えて勝手に折れちゃうような部分が私自身にはあるし、そうなってしまった子たちを見てきてもいるんですね。じゃあ、そんな状態に陥ったとき、何が一番助けになるんだろう?って考えとき、ただ「がんばれ!」って励ますのは簡単じゃないですか。

──苦しんでる人からしたら「もうがんばってるよ!」「まだがんばらなきゃいけないの?」って話になりがちですね。

なので、「Again」は、今おっしゃったように「応援歌」的ではあるんですけど、言葉で支えるようなことはしたくなかったんですね。じゃあ何がしたいのかというと、ただ「Yes」って言いたい。肯定したかったんですよ。そのままでいいよって。

──なるほど。

私も肯定してもらいたいんですよ、音楽をやっていく上で。そういう思いを「Again」に込めました。あとこの曲はほぼ事象しか歌っていなくて、“君”のドキュメンタリーみたいな感じになってるんですね。そうすることで、自分を振り返るきっかけにしてほしいし、誰にでも引っかかるストーリーになってほしいというか。聴く人によって捉え方が変わるような、余白を残しておきたかったんですよね。

──普遍性があるというか、普遍的になるように上手に歌詞をぼかしてますよね。例えば冒頭の「眩しすぎる君に 敵は増え孤独になり」というのも、僕の場合は「度を越してポジティブな人はウザがられる」みたいな、俗っぽい解釈をしてしまったんですけれど。

なるほど(笑)。けどそうやって、ホントに好きに捉えてもらっていいんですよ。その人にとっての歌詞であってほしいので。

ニューシングル「Again」2016年4月6日発売 / SME Records
初回限定盤[CD+DVD] 1500円 / SECL-1870~1
通常盤[CD] 1300円 / SECL-1872
CD収録曲
  1. Again
  2. I know
  3. ハナウタ
  4. Again-Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
  • Again(Music Video)
ツアー情報
瀧川ありさ 東名阪ワンマンライブツアー
  • 2016年6月3日(金)大阪府 心斎橋VARON
  • 2016年6月4日(土)愛知県 CLUB 3Star IMAIKE
  • 2016年6月16日(木)東京都 LIQUIDROOM
瀧川ありさ(タキガワアリサ)

1991年5月生まれ、東京出身のシンガーソングライター。幼少期より音楽に親しみ、中学2年生のときからバンド活動を開始した。高校卒業と前後してバンドが解散すると1年のブランクののち、ソロアーティストとして活動を再開する。2015年3月にアニメ「七つの大罪」のエンディングテーマ「Season」を収録したシングルでメジャーデビュー。7月に2ndシングル「夏の花」、11月にはアニメ「終物語」のエンディングテーマに採用された3rdシングル「さよならのゆくえ」を発表する。2016年4月に4枚目のシングル「Again」をリリース。6月には初の東名阪ワンマンライブツアーを控えている。