ナタリー PowerPush - 高橋優

「声なき多数派」へぶつける魂のメッセージ

高橋優がニューシングル「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」をリリースする。2012年12月リリースの7曲入りアルバムからまだ4カ月、自分の思いを真摯に歌い続ける彼が次に目を向けたのは、日本の「声なき多数派(SILENT MAJORITY)」だった。タイトル曲はストレートな言葉でメッセージを歌い、制作にはBRAHMANも参加した攻撃的なロックナンバー。さらに2曲目には「オナニー」という衝撃のタイトルを持つ楽曲も収録される。今作に込められた、高橋の真意を聞いた。

取材・文 / 田島太陽

300人とセックスした男のニュースがきっかけです

──今回はリリース決定(参照:高橋優、全曲未発表ライブで2カ月連続シングル発売告知)のニュースを出したとき、2曲目への反応がすごかったんですよ。

高橋優

あ、「オナニー」ですか?

──はい。コメントが大盛り上がりでした。

オナニーってタイトルだけで騒ぐな!ってね(笑)。

──「高橋優、どうした?」みたいな意見が多かったですよ。

心配されなくても大丈夫ですよ! 僕は変わってないし、今回の3曲で言いたいことは一緒なんです。道筋や切り口を変えているだけで、テーマは同じ。

──「オナニー」というタイトルを付けた理由、きっといろんなインタビューで聞かれているとは思いますが……。

いや、そうでもないですよ。皆さん聞きづらいのかな?

──じゃあ「オナニー」の話からしてもいいですか?

もちろん! しましょう! この曲は移動中の車で即興で歌ったのが始まりなんです。それで「バカばっかりだ!」って言っちゃって。

──なぜそんな歌詞に?

ちょうどその頃見ていた、300人とセックスした男のニュースがきっかけです。しかもその男はTwitterでいちいち実況もしていたらしくて。

──そんなことですか!(笑)

いや、大事なことですよ! 強姦未遂の疑いで逮捕されたんですけど、なぜ300人もいた中で声を上げたのが1人しかいなかったのかと。傷ついた人もいただろうし、それぞれに事情があったのかもしれない。でも嫌な想像ばっかり働いちゃって……。

──その衝動を歌にしたんですか?

というより、今は大きな事件やニュースがあっても、情報量が多すぎてすぐに流れちゃう。でも僕は、目の前で起こることの1つひとつに喜んだり悲しんだりしたいし、自分の中で引っかかったニュースくらいは、なぜそうだったのか立ち止まって考えたかったんです。

──それでちゃんと考えてみた結果……?

「バカばっかりだ!」って歌った(笑)。

自分の色が薄まってしまう恐怖

──オナニーという言葉はどこから?

それはシコシコするほうじゃなくて、“自慰”の意味なんです。もちろん自分を慰めることも大切だけど、そればっかりに捕われてるから恋人以外とセックスしたり、一夜の関係を求めちゃうわけじゃないですか。孤独を感じて発見できることもたくさんあるんですよ。ひとりだからこそ人生について想像したり、本を読んだり、改めて思い出す友達は誰だろうって考えたりできる。最近は「寂しいから人を殺しに行く」とか極端なやつが多いし、しかもその状況にみんなが慣れてしまっている。それじゃ破滅に向かっていく一方だと思うんですよね。

──このタイトルを付けることに躊躇はありませんでした?

それは全然なかった。「the 原爆オナニーズ」っていうバンドもあるから、別にいいだろうと。でもタイトルだけ先行しちゃうとは思ってたし、曲を聴いてもらってどんな印象を持たれるのかはまだわかんないですね。

──今までやってきたからこそ、思い切って付けられたタイトルではありますよね。これがデビュー当時だったら出せなかったと思うんです。

そうですね、怖くてできなかったと思う。デビュー当時は、やっぱり周りに気を遣ってたんです。レコード会社で働いている人は何百人もいるし、みんなプロモーションや制作で僕のために動いてくれている。この人たちの期待に応えなきゃいけないっていう責任感があって、失敗しちゃいけないと思ってた。でもそれで今までやってきて感じたのは、自分の色が薄まってしまう恐怖だったんです。いろんな人と一緒に作品を作ることを理由に自分らしさをなくす必要はないし、僕をメジャーデビューさせようと思ってくれた人たちのためにも、僕は僕らしくいないといけない。だから原点に戻るというか、思ったことを遠慮せずに出すことが高橋優らしさなんだと、デビューしてからの2年で確認できました。その結果が前回のアルバム「僕らの平成ロックンロール(2)」であり、今回の3曲もその続き、という感覚ですね。

2カ月連続シングル第1弾「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」[CD] 2013年4月10日発売 / 1260円 / unBORDE / WPCL-11357
2カ月連続シングル第1弾「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」
収録曲
  1. (Where's)THE SILENT MAJORITY?
  2. オナニー
  3. 野に咲く花になるまで
※初回プレス分のみ封入特典

高橋優2013ライブハウスツアー「BREAK YOUR SILENCE」購入者限定 先行抽選予約

2カ月連続シングル第2弾「同じ空の下」 / 2013年5月15日発売 / unBORDE
初回限定盤 [CD+DVD] / 1575円 / WPZL-30598~9
初回限定盤 [CD+DVD] / 1575円 / WPZL-30598~9
通常盤 [CD] / 1260円 / WPCL-11419
※初回プレス盤のみ封入特典(初回限定盤・通常盤共通)

高橋優2013全国ホールツアー「BREAK OUR SILENCE」購入者限定 先行抽選予約

高橋優(たかはしゆう)

1983年生まれ、秋田県出身のシンガーソングライター。大学進学と同時に路上で弾き語りを始める。2008年に活動拠点を東京に移し、2009年7月に初の全国流通盤「僕らの平成ロックンロール」を全国リリースする。2010年7月にシングル「素晴らしき日常」でデビュー。2011年4月にリリースされたメジャー1stアルバム「リアルタイム・シンガーソングライター」はロングヒットを記録する。その後もコンスタントに作品を発表し、2013年4月には「(Where's)THE SILENT MAJORITY?」、5月には「同じ空の下」と2カ月連続でシングルをリリースする。社会、友情、恋愛、性、孤独など自身が感じた思いをストレートな言葉で表現した歌詞、聴き手の感情を揺さぶる熱い歌声で、支持を集めている。