Tokyo 7th シスターズ|「誰かの背中を押すために」初アニメMVが提示するナナシス新展開 ~茂木伸太郎総監督インタビュー~

それぞれがそれぞれの思いを持てる曲

──ボーカルのレコーディングはいかがでしたか?

まず印象的だったのは、(アレサンドラ・)スース役の大西沙織さんが歌いながら泣いちゃったことで。「なんで泣いたの?」って聞いたら、「曲の世界に入っちゃって」って言ってたんですけど、それってたぶん役としてではなく、彼女個人の何かに刺さったってことなんだろうなって思うんですよね。この曲って聴いてるだけだと普通に卒業ソングとして受け取れるんだけど、実際に声を出して歌ってみると自分自身の本音や本質が投影されて、1人ひとりの感じることが違ってくるんですよ。僕も自分で仮歌を歌ったときには思わず涙がポロッと出ちゃいましたから。狙わずともそういう曲になったのは奇跡的だなって思いますね。

──ナナシスを通して人間を描きたいという茂木さんの思いがそういう楽曲を生み出したということなんでしょうね。

茂木伸太郎

確かに大西さんの件もそこにリンクしてきますからね。大西さんは大西さん個人としてもこの曲から何かを感じてくれたけど、同時にスースとしての個人的な感情もそこにはあったと思うんです。それってつまりキャラクターだけど、人間ってことですから。キャストもキャラクターも、それぞれがそれぞれの思いを持って乗っかれる曲。それこそがナナシスの本質だと思ったりもします。

──大西さん以外の方々のボーカルはいかがでしたか?

1人ひとりまったくアプローチの違った歌い方をしてくれたのが面白かったです。びっくりするくらいキャラ声を捨ててくる人もいましたし(笑)、歌詞の内容に共鳴して「特定のキャラクターに届けるように歌いました」っていう人もいたし、ホントにバラバラ。合唱曲なのである程度バラバラなのは全然いいんですけど、全体のバランスを取りながら12人のハーモニーを作っていくのはけっこう大変でしたね。

──通常の楽曲と合唱曲では声の乗せ方などに違いはあるものですか?

細かい話になっちゃいますけど、ミックスの仕方がだいぶ違うと思います。例えば、あえて声色の違う人同士を混ぜ合わせたりとか、あえて3人が3人に聞こえるようなバランスにしたりとか。

──複数の声を1つの塊にするのではなく、個を感じさせるミックスにしたと。

そうですね。1人ひとりの距離を取ってあげてるというか。エフェクトをかけたり、パンの位置を変えたり、やり方はいろいろあるんですけど。ただね、1人ひとりを目立たせたいっていう感覚ともちょっと違うのが不思議で。いつもは「ここでこの子の声を目立たせよう」って思うことがあったりするんだけど、今回はそういう感じではなかった。

──ああ、その感覚はなんとなく合唱っぽい感じがしますね。

1人ひとりの名前はわからないけど、でも確かにそれぞれの人生の色が見えてくるというか。そういう声のばらけ方が欲しかったんです。実際、音楽室で合唱をやってたときって、そうやって聴こえてきたはずだよなって思いながら細かく調整はしましたね。

既出キャラを使わなかった理由

──ではここからはアニメMVについてもお聞きしたいと思います。まず最初に、主人公となる2人の女の子が新キャラだったことに驚きました。先ほど茂木さんは「本作でナナシスの本質を描きたかった」とおっしゃっていましたけど、その思いがあったのになぜ既出キャラを使わなかったのかなと。

「誰かの背中を押す」というテーマを持ったナナシスの世界を描くのであれば、アイドルから何かを受け取った人の側面から物語を描いたほうが、ナナシスの存在意義をより明確に浮き彫りにできると思ったからです。

──なるほど。確かに今回の物語の主人公・鳴海アカネと涼原カホルは、過去に777☆SISTERSの「ハルカゼ~You were here~」という曲を合唱部で歌ったことで背中を押されたという設定ですもんね。

言ってしまえばこの作品の主人公がアカネとカホルである必要もないんですよ。彼女たちに特別感はなくていいんです。どこにでもいる子たちに対して、777☆SISTERSという存在がどう訴えかけられるかを見せることで、777☆SISTERSがいた意味が見えてくるはずだと思ったので。

  • 「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」のワンシーン。
  • 「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」のワンシーン。

──だからこそファンタジーではないリアルな物語になっているところはありますよね。で、引いてはそれが現実世界におけるナナシスというコンテンツの在り方ともちゃんとリンクしているようにも感じますし。ちなみに初回限定盤にはMVの前日譚を描いた小説も同梱されています。物語の全貌を理解するうえで、これは必読ですね。

そうですね。小説を読んでからMVを観るのと、なんの前情報もなくMVだけ観るのでは全然感じるものが違ってくると思います。

──僕は小説を先に読んで、アカネに激しく嫌悪感を抱いたんですよ(笑)。でも、その後にMVを観ることでアカネのことが好きになったところもあって。

ああ、その感想はすごくうれしいですね。本当にうれしい。アレンジャーの岡さんが面白いことを言ってたんですよ。僕の作品には絶望的な事柄は起こらないけど、でもハッピーなことばかりでもない。そこにあるのは人間への悲哀と矛盾、それでもやるんだ、それでもがんばるんだっていう気持ちなんだって。あー、読まれてるなって思いました(笑)。僕はそれを狙ってやっているわけではないからすごく感覚的なものなんだけど、だからこそそういう僕の思いを作品からくみ取ってくれることは本当にすごくうれしいんですよね。

Tokyo 7th シスターズ
「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」
2017年4月19日発売 / Victor Entertainment
Tokyo 7th シスターズ「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」初回限定メモリアルボックス

初回限定メモリアルボックス [CD+Blu-ray+グッズ]
4860円 / VIZL-1158

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Tokyo 7th シスターズ「t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~」通常盤

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CD収録曲
  1. ハルカゼ~You were here~ / 777☆SISTERS
  2. ハルカゼ~You were here~ -OFF VOCAL-
Blu-ray収録内容
  • t7s Longing for summer Again And Again ~ハルカゼ~
茂木伸太郎(モテギシンタロウ)
茂木伸太郎
株式会社Donutsに在籍するクリエイター。「Tokyo 7th シスターズ」の総監督兼総合音楽プロデューサーとして同作品のビジュアル、脚本、楽曲の企画や制作、ライブ制作に携わっている。
Tokyo 7th シスターズ(トウキョウセブンスシスターズ)
2014年2月にサービスインしたスマートフォン向けのアイドル育成リズム&アドベンチャーゲーム。“アイドル氷河期の西暦2034年”を舞台にアイドルを育成&プロデュースしていく。ゲーム中にはメインユニット・777☆SISTERSをはじめ多くのアイドルグループやユニットが登場する。