ナタリー PowerPush - シュリスペイロフ

北の最終兵器ついにメジャー進出 独自のバンドヒストリーを語る

いつもの景色が違って見えるときが楽しくて

インタビュー写真

──宮本さんの歌詞って本当に小さな自らの世界を描いていて。初めからこういう作風だったんですか?

宮本 無理して大きいテーマを歌うより、自分が本当に思っていることやダメだなと思う部分を肯定していけば、結構みんな共感してくれる部分があって。最初にそんな感じで書いたのが「レインマン」なんですけど、それ以降、こういうことを歌っていけばいいんだなって思ったんですよね。

──どの曲も、近すぎて見えない部分が繊細なタッチで書かれています。都会で暮らしてると忘れてしまうようなことだなって思ったんですが、宮本さんが住んでいる北海道の街はどんなところなんですか?

宮本 今は家も多くなってきたんですけど、本当に普通の住宅街で。でも、いつも見てるその景色が違う感じに見えたりするときが楽しくて。

──というと?

宮本 楽しいことがあった日や、そうだなあ……たとえば学校を卒業したとか。何かが始まったり終わったりしたときに、ずっと見ている場所なんだけど、なんか違う感じに見えるといいますか。

──そういうことを歌詞にしていくときはスラスラ書けるものですか?

宮本 「レインマン」に関しては自然に書けましたね。でも「トロイメライ」は、自分の中に浮かんだイメージに近い言葉を探すのがすごくたいへんでした。

──心の中をひたすら掘っていく作業という感じ?

宮本 そうですね。嘘を付かないで書くって難しいんだなーと思いました。本当はどう思ってるのか?っていうことを、とことん考えて。

──歌詞を見て、モラトリアムな感じというか、若さゆえのもがきや苦しい気持ちが痛いくらい伝わってきたんですよね。でも宮本さんは現在29歳……そういう思いを今でも引っ張っている部分はあるんですか?

宮本 ああ、それは日々まさに感じてますね。いまだに、どうやったら大人になれるんだろう、とか(笑)。憧れのミュージシャンは結構いるけど、当然それになれるわけはないですよね? だから、自分が表現する中で一番共感してもらえるものっていうのをずっと考えてたんです。で、僕が出せるものって、やっぱり自分が感じてることや思ってることしかないなって気付いて。だから、逆にそのモラトリアムな感じが武器になる んじゃないかって思ったんですよ。やっぱりそこが生きてて一番考えるところだし、葛藤してる部分が面白いというか、興味を持ってもらえるんじゃないかと。

敬遠してきた言葉も使えるようになった

──その自分の中の葛藤を歌にすることに、照れはないですか?

宮本 すごい恥ずかしがり屋ではあるので、直接的な言葉を使うのは恥ずかしいですね。「トロイメライ」の中に「美しい」っていう言葉があるんですが、それって今まで使ってこなかったような言葉だったんです。だけど、これを作ったときに、この曲には入ってもいいかなって思えて。なので、表現の幅も少しずつ増えているかもしれないですね。敬遠してきた言葉も使っていいかなって思えてきたので。

──それで言うと「素晴らしい世界」という言葉もそうですか? 「レコード」と「レインマン」の2曲で印象的に使われていますけど。

宮本 それは「レインマン」のときに初めて使いました。確かに今まで出さなかった言葉なんですけど、そのときは皮肉で使って。それだったら使えるかなって。

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──ちなみに、素晴らしい世界ってどんな世界ですかね?

宮本 ……えっと、ちょっと時間もらって考えてもいいですか?(笑)。

──あ、はい。では、ブチョーさんは?

ブチョー 僕は単純に……家庭を持つことかもしれないですね。

宮本野口 あははは(笑)。

ブチョー ……子供とかと遊んでいたいです(笑)。

──野口さんはいかがですか? バンドとして向かっていきたい世界でも大丈夫ですが。

野口 とりあえずこの2ndアルバムを盛り上げて、ツアーに出たらいいライブを見せたいですね。今の時点でできることをしっかりやりたいです。

──では宮本さん。

宮本 ……えっと、素晴らしい世界っていうのはですね、さっきも話したような、景色が変わって見えるときですね。

──なるほど!

宮本 時間もらってよかったです(笑)。なので、そういう歌詞の世界に共感してもらえたら嬉しいですね。

ニューアルバム『もぐる。』 / 2009年5月13日発売 / 1890円(税込) / Victor / BabeStar Label / VICB-60042

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CD収録曲
  1. 花とゆめ
  2. レコード
  3. 行灯行列
  4. ハウス
  5. トロイメライ
  6. 君と僕
  7. ダイバー
  8. レインマン
シュリスペイロフ

宮本英一(Vo,G)、野口寛喜(B)、ブチョー(Dr)によるスリーピースバンド。1999年札幌にて結成。その後5年間にわたってマイペースにスタジオ練習のみを続け、2004年に初ライブを実施。2005年に自主音源 「ダイバー」、2008年に初の正式音源となる1stミニアルバム「シュリスペイロフ」 をリリースする。地元・札幌を中心にアーティストから厚い支持を集め、同郷のサカナクションやmonobright、sleepy.abなどもファンであることを公言。結成10年目 の2009年5月に2ndアルバム「もぐる。」をBabeStar Labelよりリリースし、メジャーデビューを果たす。