ナタリー PowerPush - suzumoku

躍動の2013年を締めくくる変革のニューシングル

今年3月に初のオリジナルフルアルバム「キュビスム」をリリースしたのを皮切りに、7月には47都道府県ツアーのライブ音源に自身撮り下ろしの写真集が付いたライブアルバム「たどり着いた景色はどうだい?」を、9月にはクラシックギターの弾き語りによるコンセプトアルバム「Rusty Nylon」を発表。異なるテーマの作品を次々と生み出し、シンガーソングライターとしての幅の広さを改めて示したsuzumokuから、充実した2013年を締めくくるような配信限定シングル「グライダー / 零ドライブ」が届けられた。「落ち込んでる人、気難しそうな人に言葉をかけるなら?」というアイデアから生まれた歌詞とボブ・ディラン直系のフォークロックサウンドが1つになった「グライダー」、高揚感あふれるバンドグルーヴの中で「ぶっ壊してしまえ!」という強烈なメッセージが響き渡る「零ドライブ」。この2曲によってsuzumokuの勢いはさらに増していくことになりそうだ。

取材・文 / 森朋之 写真 / 押尾健太郎

今までで一番詰まった年だった

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──アルバム3作をリリース、さらに3月から6月にかけては2年連続となる47都道府県ツアーを開催。2013年は大充実の年だったんじゃないですか?

1年があっと言う間でしたね。47都道府県ツアーは1人で回ったんですけど、その後に10月から2年半ぶりのバンドツアーもあったんですよ。さらに写真展もやったし。とにかく音楽を作って、歌って、写真を撮って……今までで一番詰まった年だったし、予想以上にたくさん動きました。

──前回ナタリーにご登場いただいたのは今年2月でした(参照:suzumoku「キュビスム」インタビュー)。その直後から47都道府県ツアーがスタートしたんですよね。

そうですね。やっぱりライブをたくさんやったことは大きかったですね。47都道府県ツアーは去年に続き2度目だったんですけど、生歌でライブをやることで改めて自己紹介できたという実感もあって。学生時代にも弾き語りでストリートライブをやっていたんですが、そのときとは全然違いますからね。ストリートって自分の視界に入っている人が全員聴いてくれるわけじゃなくて、通り過ぎる人も多いじゃないですか。でも今やっているライブは皆さんが聴いてくれるし、しっかり届けられている手応えがあるんですよね。マイクもスピーカーも使わないから一番ナチュラルだし。PAを通すと本来の音とは変わってくるので。

──きっとsuzumokuさんにとって、もっともしっくりくるスタイルなんでしょうね。

自然ですね、メンタル的な部分も含めて。それに自分の歌声を安定させるコツもわかってきました。前は強く歌おうとして喉を傷めることもありましたが、今はいい意味で力を抜いて歌えるようになったというか。

クラシックギターは僕のルーツ

──47都道府県ツアー後には、クラシックギターの弾き語りによるコンセプトアルバム「Rusty Nylon」をリリースしました。これはどういう経緯で?

これまでに沖縄で制作したコンセプトアルバムを2作品リリースしているんです。2011年はエレキギターの弾き語りがコンセプトのアルバム「Ni」で、去年がアコースティックギターを使った「80/20 -Bronze-」。今年も47都道府県ツアーのファイナルが沖縄だったから、「もう1枚、今度はクラシックギターで作りたい」って自然に思ったんですよね。「Rusty Nylon」はツアーの前からビジョンが見えていました。

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──クラシックギターの響きって、本当に独特ですよね。普通のアコギとはまったく違うイメージで。

全然違いますね。ネックもだいぶ太いし、弦の素材も違うから、奏法もだいぶ違うんですよ。もちろん収録曲もクラシックギターに合った曲を選んだし、ただ録音するだけじゃつまらないから、曲と曲の間にブリッジになるようなフレーズを入れてつながって聞こえるようにしました。初めてカバーもやりましたからね。

──カバーは、浅川マキさんの「少年」ですよね。suzumokuさんの声質とクラシックギターの音色がすごく曲に合ってると思いました。

実は僕、もともとクラシックギターから始めたんですよ。中学校の器楽室にあったのがクラシックギターで、それをアコギみたいにジャカジャカ鳴らして。高校生になってからようやくアコギを弾くようになるんですけど、そのときもクラシックギターとマンドリンの合奏部に入っていて、そこで正しい奏法を教わって。そういう意味では僕のルーツに近い感覚なんですよね。

配信限定シングル「グライダー / 零ドライブ」 / 2013年12月4日発売 / apart.RECORDS
配信限定シングル「グライダー / 零ドライブ」
収録曲
  1. グライダー
  2. 零ドライブ
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レコチョク
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suzumoku(すずもく)
suzumoku

1984年生まれ、静岡出身のシンガーソングライター。名古屋の楽器制作の専門学校で、ギターやベースの製作を行いつつ、自身もロックやカントリーに影響を受けた音楽を制作するようになる。駅前のストリートやライブハウスでの活動を始めるものの、就職と同時に音楽活動を休止する。その後再び音楽の道を志し、2007年1月に上京。同年10月にアルバム「コンセント」でデビューを果たす。その後、弾き語りやバンドスタイルでのライブを展開しながら2011年7月にエレキギターによる弾き語りアルバム「Ni」を、2012年7月にアコースティックギターによる弾き語りアルバム「80/20 -Bronze-」を発表。2013年3月にはオリジナル曲のみで構成された作品としては初となるフルアルバム「キュビスム」を発売し、3月から6月にかけて47都道府県ツアーを開催した。7月にライブアルバム「たどり着いた景色はどうだい?」、9月にクラシックギターの弾き語りによるコンセプトアルバム「Rusty Nylon」を発表した後、12月に配信限定シングル「グライダー / 零ドライブ」をリリース。