音楽ナタリー Power Push - スキマスイッチ

奥田民生との刺激的コラボ

奥田民生=“のらりくらり”をマジメにやっている人

──民生さんのアレンジで歌うのはどうでした?

大橋卓弥(Vo, G)

大橋 “民生ワールド”に引っ張られましたね。歌い方も民生さんのデモのボーカルに寄っていくんですよ。アーティストとして持っているカラーがすごいんですよね。

常田 コードもすごくシンプルになってますからね。間奏の入り方も「民生さんっぽいなあ」って思いました。「俺の色を出してやろう」ということではなくて、「こっちのほうがよくない?」って感じなんですよね。

大橋 間奏のところは「ヒゲとボイン」(ユニコーン)みたいな感じだったよね。そうしようと思ったわけじゃないだろうけどね、民生さんは。

常田 そうだね。

大橋 歌が始まるところのミュートしたギターもいいんですよね。独特のニュアンスがあって、民生さんにしか出せないだろうなって。適当に弾いてるような雰囲気なんだけど、実は緻密に計算されていると思うんですよ。シングル4曲目に収録されている「全力少年 produced by 奥田民生(KARAOKE)」で民生さんのギターを聴いたら、ギターキッズは感動するんじゃないかな。

──そういえば民生さんの弾き語りのライブ(10月4日に東京・豊洲PITで開催された奥田民生とNICO Touches the Wallsの対バンライブ)のとき、民生さんがお客さんに「何かやってほしい曲ある?」って聞いたら、「全力少年」っていう声が上がって。

大橋 お、ホントですか?

──はい。そのとき民生さん、「やだよ、あんなややこしい曲」って言ってました。

常田 ハハハハハ!(笑)

大橋 音源が発表される前だったから、「歌わないほうがいいかな」って思ったのかもね。そういうこともちゃんと考えている人だから。

常田 今回の制作のときも「俺は全部考えてやってるんだよ。のらりくらりやってるように見えるけど」って言ってましたからね。

大橋 “のらりくらり”をマジメにやっているというか。すごく細かいですからね、レコーディングも。「こんな感じでいいか」みたいなことは全然なくて、いろんな音を試して、「これは違うな」ということを繰り返して。

常田 まさにトライ&エラーだよね。そういうやり方を見られたのもすごくよかったです。

ユニコーンのコピバンを組んでいた常田

──ちなみに常田さんは高校時代、ユニコーンのコピーバンドをやっていたとか。

常田真太郎(Piano, Cho)

常田 そうですね。テレビで「すばらしい日々」を歌っているところを観たのが最初だったんですけど、その半年後に、同じ高校でギターを弾いてたヤツがユニコーンのベストアルバム「THE VERY BEST OF UNICORN」を持ってきて、コピーバンドをやりたいって。最初にやったのは「SUGAR BOY」かな。「大迷惑」とかもやりましたね。メンバー監修のバンドスコアがあるんですけど、それも面白いんですよね。例えばギターソロのパートに音符がなくて「マイケル・シェンカー」って書いてあったり(笑)。

大橋 いいねえ(笑)。マイケル・シェンカーの気持ちで弾けってことでしょ。

常田 耳コピしろってことだよね(笑)。阿部義晴(ABEDON)さんの鍵盤のアレンジもすごくて。それで僕は、阿部さんと同じ専門学校に行くために上京したんですよ。卓弥と知り合ったときも、よくユニコーンの話をしてましたからね。

大橋 そうだね。

いろんな人を巻き込むことで刺激をもらう

──2016年は“リアレンジ”というテーマを中心に、新しいトライが多い1年になりましたね。

大橋 うん、今年はそういう1年だったかもしれないですね。新曲を作りたくないとか、作れないということではないんですけど、今は違うベクトルでやってみたいというか。インプットできるような活動をいっぱいやって、そのあと一気に放出するみたいな感じですよね。と言いながら、けっこう経ってますけど(笑)。

常田 (笑)。僕がリスナーだったとしたら、ずっと同じテンポで活動しているアーティストよりも、いろんなことをやって「次は何だろう?」って思う人のほうが面白いですからね。そういうスタンスで作る新曲のほうが、さらに興味が湧くというか。もともとは一昨年くらいに、卓弥が「このままレールに乗って活動していていいのかな?」と言ったことに端を発してるんです。2人が離れてソロ活動をすることでインプットをしていた時期もあったんですけど、今は2人で一緒に、いろんな人を巻き込んで活動していて。すべては「刺激が欲しい」ということなんですけど、それを経て、どんな曲ができてくるのか自分たちも楽しみです。

──今までのスタイルを踏襲するのではなく、新しい刺激を取り入れながら制作していきたい、と。確かにそのほうが新鮮ですよね、作り手も受け取り側も。

常田 うん、間違いないですね。そうしないと「今回はこっちのパターンの曲か」みたいな感じになりがちだから。

スキマスイッチ

大橋 今までと違うものが自然にできるのが一番いいと思うんですよ。「前はこういうアルバムだったから、今回はこういう感じで」って考えながらやるより、少し間をあけて「そのときにやりたいことをやったら、違うものができた」っていうのが理想なので。それもあって、今はインプットの期間を取ってるんですよね。

──すでに新しい楽曲の制作も始まってるそうですね。

常田 はい。Aimerさんに提供させてもらった曲(アルバム「daydream」収録の「Hz」)も新曲ですし。

大橋 ほかにもすごくいい曲ができ始めてます。作れなくなったわけではありません、ということだけはアピールしておかないと(笑)。やりたいこともいっぱいあるし。自分たちがやりたいことに余計な力を加えずに曲に落とし込んで、それを自然な形で出す。そういうタイミングをつかんでいかないといけないと思っています。

ニューシングル「全力少年 produced by 奥田民生」
「全力少年 produced by 奥田民生」
2016年11月30日発売 / 期間生産限定盤 / 1404円 / アリオラジャパン / AUCL-217
収録曲
  1. 全力少年 produced by 奥田民生
  2. ハナツ premium ver.
  3. 全力少年 produced by 奥田民生(anime ver.)
  4. 全力少年 produced by 奥田民生(KARAOKE)
ライブBlu-ray / DVD「スキマスイッチTOUR2016 "POPMAN'S CARNIVAL" THE MOVIE」 / 2016年11月30日発売 / アリオラジャパン
Blu-ray / 7344円 / AUXL-31
DVD 2枚組 / 6480円 / AUBL-53~4
収録内容
  1. POPMAN'S CARNIVALのテーマ
  2. 晴ときどき曇
  3. LとR
  4. 飲みに来ないか
  5. かけら ほのか
  6. 時間の止め方
  7. 1+1
  8. 僕と傘と日曜日
  9. ソングライアー
  10. 君曜日
  11. フレ!フレ!
  12. ボクノート
  13. LINE
  14. ユリーカ
  15. パラボラヴァ
  16. Ah Yeah!!
  17. 全力少年
  18. ハナツ
  19. 電話キ
  20. デザイナーズマンション
  21. サウンドオブ
<BONUS MOVIE>
  • Documentary & Interview
  • スカーレット Live at 緑文化小劇場(2016.6.9)
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大橋卓弥(Vo, G)、常田真太郎(Piano, Cho)のソングライター2人からなるユニット。2003年7月にシングル「view」でデビューして以降、「奏(かなで)」「全力少年」 などヒット曲を次々と生み出す。2013年7月にデビュー10周年を迎え、同年8月には初のオールタイムベストアルバム「POPMAN'S WORLD~All Time Best 2003-2013~」を発表。2016年4月には「POPMAN'S WORLD」と対をなすアナザーベストアルバム「POPMAN'S ANOTHER WORLD」をリリースし、同作を携えた新コンセプトの全国ツアー「POPMAN’S CARNIVAL」を大成功におさめる。10月には同ツアーの模様を収めたライブアルバム、11月にはDVD/Blu-rayを発売した。また映像作品と同じく11月にテレビアニメ「ALL OUT!!」のエンディングテーマとして使用されている、奥田民生プロデュースのもと再レコーディングした「全力少年 produced by 奥田民生」を収めたシングルを発売した。