湘南乃風 RED RICE&HAN-KUN×中田ヤスタカ×名越稔洋|強烈な個性のせめぎ合い!当事者たちが語る「龍が如く7」主題歌の誕生秘話

湘南乃風と中田ヤスタカの共作曲「一番歌」が1月9日に配信リリースされる。この曲は1月16日に発売されるPS4®専用ソフト「龍が如く7 光と闇の行方」の主題歌として書き下ろされたもの。発表時に大きな話題を集めたこのコラボレーションはなぜ企画され、楽曲はどのように生まれたのか(参照:「龍が如く7」テーマ曲で中田ヤスタカ×湘南乃風が初タッグ)。そんな疑問を探るべく、ここでは湘南乃風のRED RICEとHAN-KUNと、中田ヤスタカ、さらに「龍が如く」シリーズの総合監督である名越稔洋による座談会を実施した。

取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 竹中圭樹(ARTIST PHOTO STUDIO)

一緒に取材を受ける日が来るとは

HAN-KUN(湘南乃風)

RED RICE(湘南乃風) 今回僕らが主題歌をやることは、名越(稔洋)さんと食事をしているときの何気ない会話の中で決まったんですよね。

HAN-KUN(湘南乃風) 俺らが最初に「龍が如く」シリーズに関わらせてもらったのは2012年の「クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編」(主題歌「Born to be WILD」を提供)から。そのあと、2015年の「龍が如く0 誓いの場所」にも「バブル」と「紅」という曲を提供させてもらっていて。以来、名越さんとはメンバーそれぞれが一緒にごはんを食べに行ったり、飲みに行かせてもらってるんです。

RED RICE そこで近況を報告しあったり、お互いの新作のアイデアを話したり。そんな中で、名越さんが「龍」の新作を作っているという話を伺ったんです。名越さんは「次の主題歌は古い時代のゲーム音楽を落とし込んだ楽曲にしたい」と言っていたので、僕らは何の気なしに「だったら中田(ヤスタカ)くんと一緒にやったら面白そうですね」と返したんですよ。そしたらいつの間にか今回の座組みができあがってたという(笑)。

中田ヤスタカ え、そうだったんですか? 今初めて知りました(笑)。湘南乃風とはクラブではよく会うんですが一緒に制作するイメージはなかったので、その食事会からこんなきっかけをいただけて本当にありがたかったです。

HAN-KUN そうだよね。中田くんのDJで俺らはよく踊ってるし、クラブのバーカウンターで一緒に乾杯したりもするけど、こうして一緒に取材を受ける日が来るとは思ってなかった(笑)。しかも「龍」というデッカいステージで。

ゲーム音楽の歴史を踏まえつつ新しいことをするのが僕の役割

名越稔洋 湘南乃風と中田ヤスタカが「龍」の新作の主題歌でコラボするって字面だけで面白そうでしょう? 僕はキャスティングやアーティストの起用を考えるとき、まずお客さんに驚いてもらえることを考えるんですよ。それが決まって、情報を小出しにして、皆さんがソワソワしてるのを見るのが楽しいし、クリエイターとしては毎回新しいことをしたいんですよね。だけどもちろんこれまで「龍」シリーズを支えてくれたファンのことも大事にしたくて。湘南乃風は「龍」の歴史の中でもっとも濃い存在感を放つアーティスト。そこに中田くんという新しい血を入れることで、ここまで築いてきた世界観を崩さず、同時に驚きを与えられるような取り組みができると感じたんです。何を捨てて、何を残し、新しくするかというか。それは「龍7」、というかクリエイターとしての僕の裏テーマでもあります。

中田 僕は「龍が如く」を1作目から遊んでる大ファンなので、お話をいただいた瞬間に快諾しました! そのあと何回か名越さんとお話しさせていただく中で、「龍7」について「ファミコン時代のドラクエ」というキーワードをいただいて、これはつまりゲーム音楽の歴史を踏まえつつ、新しいことをするのが僕の役割なんだろうな、と思いました。

名越 まさにそういうことです。今回の「龍が如く7 光と闇の行方」は主人公がこれまでシリーズの看板を背負ってきた桐生一馬から新しい春日一番に代わるんです。さらにゲームシステムも新しくなって、バトルでは昔のRPGのようにコマンドを入力します。もちろん当時のままではなく、2020年的にアップデートされているんですが。なので音楽も現代的な楽曲の中に昔のゲーム音楽の要素を落とし込んだものにしたかったんです。

本気を出さないと太刀打ちできなかった

RED RICE(湘南乃風)

HAN-KUN 中田くんが作編曲とプロデュース、俺らが作詞を担当したけど、制作はけっこう大変だったよね。

RED RICE うん。なにせ僕らは基本的にセルフプロデュースで制作するので、これまで誰かが作ったビートとメロディに合わせて作曲や作詞をすることがほとんどなかった。

中田 僕はいきなり完成したトラックをシンガーに渡すのではなく、まずメロディとビートがわかるデモを制作して、歌を入れてもらって、そこからさらに音を足したり引いたりしながら完成形に近付けていくんです。

HAN-KUN でも俺らはそういう作り方をしたことがないから、メンバー全員がまず中田くんの譜割やビートの感覚を体得するところから始めたんです。トラックメーカーがメロディも作ってくれるとき、鼻歌とも違うめちゃくちゃな言語で仮歌を歌ってくれることが多くて。

中田 宇宙言語みたいなね(笑)。

HAN-KUN 最初は中田くんが歌ってるニュアンスを限りなく真似して、その宇宙言語で全員レコーディングしたんですよ(笑)。一見バカバカしいように思えるけど、それを聴くことで中田くんがやりたいメロディ感やビート感を感じることができた。そこから俺らはそれぞれ、メロディや韻を探して、ストーリーを広げていったんです。逆に言うと、それくらいやんないと歌えないくらい難しかった。でも俺らもかなり新しいアクセントや譜割を学ぶことができたんで、マジでデカい経験でしたね。

中田 実は僕も今回の制作は決して簡単ではなくて。というのも僕は普段、最初から自分の中に具体的なイメージがあって、そこから作曲していくんです。色、情景、人物、ドラマとか。でも今回は主人公の春日一番が横浜の伊勢佐木異人町という架空の街でどん底から成り上がっていくというストーリーがすでに用意されていた。そういうものがあると、当然最初に選ぶ音も変わってくる。しかも歌うのは湘南乃風の4人。やっぱり声が入ると僕が想像していた以上のものが返って来ましたね。「龍が如く」、そして湘南乃風の声と曲を構成する要素の個性がとにかく強いので、僕もかなり本気を出したというか。むしろそうしないと太刀打ちできなかった。ゲーム音楽の歴史的な要素を追加したのはかなり最終的な仕上げの段階でしたね。