ナタリー PowerPush - 真空ホロウ

本性むきだしの「少年A」で青山裕企と再タッグ

真空ホロウが5月8日に2ndミニアルバム「少年A」をリリースした。前作から約半年という短いスパンで届けられた今作は、心の闇をえぐるような、真空ホロウらしさ全開の6曲を収録。そして「スクールガール・コンプレックス」などで知られる写真家の青山裕企が、前作に引き続きジャケット写真を手がけている。狂気に満ちた人々を描く真空ホロウの楽曲と、追憶の記憶をたどるような淡いトーンが印象的な青山の写真。一見すると接点がないように見える両者を結びつけているものはなんなのか。

今回ナタリーでは真空ホロウと青山裕企の対談をセッティング。お互いの共通点や世界観について語ってもらった。

取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 藤田二朗

青山さんは僕らの意図を写真で表現してくれる

──真空ホロウは昨年10月にミニアルバム「小さな世界」でメジャーデビューしたときから青山裕企さんとタッグを組んでいますが、これはどういう経緯で?

左から青山裕企、大貫朋也(Dr)、松本明人(Vo, G)、村田智史(B)。

松本明人(Vo, G) 僕たちの音楽と共通点がある写真を探していたときに、青山さんの作品を拝見しまして。……その世界観に驚愕しました。

村田智史(B) 俺ら、ど真ん中というよりは、ちょっとだけ人と観点がずれてると思うんですよ。少しだけ目線をずらして、遠回りだけど実は真実を追求している、というところがあって。そういう俺らの世界観を写真でも表現したいって思ったときに、青山さんの作品を見て共感することができたので、お願いしました。

──青山さんはオファーを受けてどう思いました?

青山裕企 僕は写真を生業にしていこうと決めたときから、アーティストの方と一緒にものづくりをすることが1つの大きな夢だったんです。なので、非常にうれしかったですね。僕の「スクールガール・コンプレックス」という作品はフェティシズムという切り口で語られることもあるんですけど、個人的にはそれは要素の1つでしかなくて。最初メンバーにお会いしたときに、そこではない部分で響いてくださっているということを実感できたので、僕も自信を持ってやらせてもらいました。

松本 青山さんの写真で、女子高生がロッカーに頭を突っ込んでいるという作品があるんですけど、僕、同じことをやったことがあるんです。青山さんと初めてお会いしたときにその話をしたら、すごく喜んでくださったので、よかったと思って(笑)。普通だったら笑われて終わると思うんですけど……。

大貫朋也(Dr)

村田 俺らシャイというか、好き嫌いがはっきりしているので、あまり他人を受け入れられないんです(笑)。でも青山さんのことは好きになるのがめっちゃ早かったな。

大貫朋也(Dr) みんな緑色が好きっていう共通点があったり(笑)。僕は最初に撮っていただいたアーティスト写真が印象的でしたね。最初は仕上がりが想像つかなかったんですけど、完成した作品を見て「ああ、こういうことか」って。

松本 僕らの意図を汲み取って写真で表現してくださるので、すごくうれしいんです。

真空ホロウは人と少しだけ視点が違うところがポイント

「小さな世界」リリース時のアーティスト写真。

──アーティスト写真、よく見ると少しだけ浮いていますよね。

青山 初回ということで、せっかくなので僕の得意な手法を使わせていただきました。

──青山さんは「ソラリーマン」という作品も発表されていますが、サラリーマンが“大ジャンプ”する「ソラリーマン」と比べると、このアーティスト写真はだいぶ雰囲気が違いますね。

青山 先ほど智史さんがおっしゃったように、僕も真空ホロウは人と少しだけ視点が違うところがポイントだと思っていて。ジャンプ写真って日常から非日常にスライドした瞬間を切り取っているんですけど、真空ホロウの場合、その非日常の世界がマニアックな気がしたんです。一見するとわからないくらい(笑)。

村田 あれは超魔術っす(笑)。「じゃあ、今からいくからね」って青山さんが言うと、体が自然と浮くんです。ふわっと。……すみません、嘘です(笑)。

青山 でも、イメージとしてはそうですね。まさにふわっと浮く感じ。僕も音楽が好きなのでアーティスト写真をよく見るんですけど、アーティスト写真はバンドイメージを強化するものだと思っていて。真空ホロウにジャンプしてもらうなら何がベストかを考えた結果、ああいう形になりました。

──浮いてる感じがしない表情もいいですね。

青山 結局、写真には人柄が写るんですよね。その人からにじみ出る人柄が写ると信じて僕はやっているので。僕、撮影をするとき人を何で判断するかっていうと、性格だけなんです。3人ともすごく人柄がよくて、撮っていて自分の中でしっくりきましたね。

ミニアルバム「少年A」/ 2013年5月8日発売 / 1575円 / EPICレコードジャパン / ESCL-4037
収録曲
  1. アナフィラキシーショック
  2. 思春の生贄
  3. 娼年A
  4. 4月某日
  5. Balance cont(r)ol
  6. ミラードール
真空ホロウ(しんくうほろう)
真空ホロウ

松本明人(Vo, G)、村田智史(B)、大貫朋也(Dr)による茨城県出身の3ピースロックバンド。日常の違和感を冷徹な視線ですくい上げる歌詞と、ストレートでキャッチーなバンドサウンドが特徴。2006年に結成し、メンバーチェンジを経て現在の編成に。2009年に「RO69JACK 2009」を勝ち抜き、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」に出演。2010年に1stミニアルバム「contradiction of the green forest」を、2011年に2ndミニアルバム「ストレンジャー」をリリースした。2012年10月にミニアルバム「小さな世界」でEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2013年5月8日に2ndミニアルバム「少年A」を発表した。

青山裕企(あおやまゆうき)
青山裕企

1978年生まれ。写真家。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞受賞。スーツ姿のサラリーマンがジャンプした瞬間を収めた写真集「ソラリーマン 働くって何なんだ?!」(ピエ・ブックス)や、思春期の少年の視点で、女子高生の無防備かつ挑発的な魅力を捉えた写真集「スクールガール・コンプレックス」(イースト・プレス)など、次々と話題の写真集を発表。最新刊は「スクールガール・コンプレックス (女子校) SCHOOLGIRL COMPLEX 3」(イースト・プレス )。また2013年8月17日より、同シリーズをモチーフにした映画「スクールガール・コンプレックス─放送部篇─」が公開される。