ナタリー PowerPush - school food punishment

予想外にハジけた新曲でバンドの奥深さを見せつける

ギターよりもキーボードの温度感のほうがいい

──では、アレンジに関して大事にしていることは?

比田井 みんな共通で思ってるのはバランス。例えばものすごく楽しい気持ちの中にも、実はちょっと暗い部分があったりするじゃないですか。そういうところを音でも表現したいっていうか。メロディはポップだけど、一方では蓮尾くんのキーボードの音がものすごく歪んでるとか、上ものの2人がポップに行ったら、リズムではちょっと苦しさを出してみようとか、全員が同じ方向へ行かないっていうバランスですね。

内村 それはリアルさを求めてるからなんですよね。もちろん非現実的なことを歌うんであれば非現実的な音に聴こえなきゃいけないとは思うし、恋のワクワク感を歌うならストレートに行ったほうがいいと思うんだけど、人間っていろんな感情が混ざって生きているものじゃないですか。だから、歌詞にしても100%楽しい曲を作りたいって思ったときに、キラキラした言葉ばかりを並べてたら、私はウソくさく感じちゃうんですよね。そういう意味でテーマによってどんな混ざり具合、どんなバランスが一番リアルか、みたいなものは常に考えてますね。

蓮尾 あと、個人的にはシンセの持っている二面性を使い分けるように意識しているところはありますね。他の楽器の個性をフワッと包むようなパッドの広がりのあるサウンドと、リード楽器として、例えばファズで歪ませたようなサウンドの両方を、僕からの曲への見方として入れている感じです。で、ベースからの見方、ドラムからの見方がそれぞれあって、それがバランスをとりながらひとつの曲になっていく感じですね。

──ギターに関しては、バンドとしてどういう捉え方をしていますか?

内村 ギターはセッションのときにも弾いたりしないですからね。ギターがジャカジャカ入ってる音楽っていうのが、そんなに好みとしてあんまりないんです。私の中では、やっぱりギターよりもキーボードの温度感のほうがいいし、理想の音に近いんです。そういう意味で、私たちの音楽の基本はやっぱりキーボードがボトムを担っていることなんじゃないかなって思いますね。もちろんギターにしか担えないものがあるならば、そのときは入れればいいと思うし。ギターがなくても別にいいし。

──なるほど。ギターというパートは存在しつつも、ギターロックバンドとはベクトルがまったく違うんですね。

蓮尾 ギターロックバンドに憧れてる人間ではあるんですけどね(笑)。ギターバンドばっかり聴いてきたんで。

内村 うちのバンドは、彼(蓮尾 / Key)がリードギターっていう感覚ですね。

アーティスト写真

アングラ寄りな自分が「あ、楽しいな」と思えた

──7月22日には2ndシングル「butterfly swimmer」が到着します。CMでガンガン流れている強力なポップチューンなわけですが、構成がかなり面白いですよね。曲の頭だけ聴くと、あのキャッチーなサビは予想できないっていう(笑)。

内村 その最初のワンブロックは数年前からあったんですよ。その時は暗くて切ない恋の歌で。でも数年経ったことで、もっとハジけてて、明るくて、楽しい曲にしたいなって思ったんです。これはもう「恋の初期衝動を詰め込みます!」「なんにもイヤなこととか全然なくて、キュンキュンしてる瞬間だけを描きます!」みたいな(笑)。それはけっこう新しいチャレンジでもあって。

蓮尾 この曲はさっき言ってた作り方とはちょっと違ってて、プリプロをかなり繰り返したんですよ。最初は、恋の初期衝動をテーマにした突っ走る感じのロック寄りなイメージだったんですけど、そこに夏らしさを入れたいってことになって。夏らしさっていう意味でアコギやシェイカーを入れたり、爽快感を出すためにコーラスワークを考えたり、そういうアイデアを入れながら、どんどん変化させていったんですよね。

──1stシングルと比べると、対極とも言うべき振り切れ方ですよね。

蓮尾 自分にとっても新鮮でしたね。昔からどっちかっていうとアングラ寄りな音楽に接してきてたんで、僕らがやる音楽ではないだろうって思った瞬間すらあったんですよ。でも、みんなでセッションしてみたら「あ、楽しいな」って(笑)。バンドとして、こういうのも全然アリだなって思えたんですよね。1年前くらいにできた曲なんですけど、この曲をきっかけに、より広い方向に進めたなっていうのはありますね。

内村 それまではほんとに暗い曲ばっかりだったもんね(笑)。

山崎英明(B) 今までの曲は温度感がある程度低くて涼しげな感じだったんですよね。僕はそういう感じが好きでやってきてたんで、ちょっとビックリはしたんですけど、ものすごく気持ちいいんですよ、演奏してても。しかも、これは僕がお休みしてたこともあって、いつもと違うレコーディングの仕方だったんですよ。それもちょっと新鮮で。

──あ、山崎さんはケガのため3月からバンドをお休みしてたんですよね。

山崎 いつもはドラムとベースから録っていくんですけど、この曲は歌まで録音した一番最後にベースを入れたんですよ。だから、いつものバランス感覚とは、またちょっと違った視点で見ることができたりもして。その時点で曲が持っていたイメージをもっと加速させるというか、最後に向かって走っていくように、もっとアップアップしたり、ハァハァしているような感じを出すように考えながら弾きました。

蓮尾 なので、たぶんいつもよりもベースが歌ってると思います(笑)。

──ポップな曲ではありますけど、さきほどおっしゃってたschool food punishmentとしてのバランス感覚やこだわりみたいなものは、随所に感じられますし。

比田井 そうですね。セクションを前半と後半で区切ったりとか、音色で変化つけたりとか、そういう作業はプリプロを繰り返す中でやっていったんで。最終的には、ポップな中にも自分たちらしさが出たと思うし、すごい満足いく形になりましたね。

内村 ライブでは1年くらい前から演っていたので、曲が成長した感じもあって。だから、CDになるにあたって歌詞を書き直した部分もあるんですよ。それを今、このタイミングで届けられることは、すごくうれしいことだなって思いますね。

──また多くの人にschool food punishmentの音が届くことになりそうですね。

内村 自分たちの中でもロック寄りの激しい曲を1枚目に持ってきて、2枚目では対極にあるポップでストレートなものを出すことができたんで、それもすごく良かったなって思います。

山崎 夏には野外フェスとか、ライブもいろいろあったりするので、パリで得た感覚を忘れないように、どんどん前に出ていけたらなって思いますね。

ニューシングル『butterfly swimmer』 / 2009年7月22日発売 / 1223円(税込) / Epic Records / ESCL-3259

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CD収録曲
  1. butterfly swimmer
  2. beer trip
  3. futuristic imagination -AVALON Remix-
school food punishment
(すくーるふーどぱにっしゅめんと)

内村友美(Vo,G)、蓮尾理之(Key)、山崎英明(B)、比田井修(Dr)からなる4人組ロックバンド。2004年10月結成。2007年4月に1stミニアルバム「school food is good food」を発表し、同年11月に2ndミニアルバム「airfeel, color swim」をリリース。音源制作と並行して、ワンマンライブや全国ツアーなどライブ活動も精力的に行う。
2008年12月に発売した3rdミニアルバム「Riff-rain」はタワーレコードJ-Indiesウィークリーチャートで1位を記録。2009年3月に発表されたJUDY AND MARYのトリビュートアルバムでは「Brand New Wave Upper Ground」をカバーし話題となった。
同年5月にメジャー1stシングル「futuristic imagination」をリリース。