音楽ナタリー Power Push - RIP SLYME

映画「珍遊記」に“気まま”に寄り添う書き下ろし曲

「やるぜ!」って言って結局やらない曲

──カップリング曲であり「珍遊記」のエンディングを飾る「Drop!」も、PESさんが作曲と編曲を手がけたファンキーな曲です。

PES エンディングには当初、違う曲を提出してたんです。それは「Tales」並みにメロウなものだったんですけど、「楽しく終わる感じにしたい。『FUNKASTIC』みたいな感じ」という意見をもらって、「FUNKASTIC」を聴き直したりして。

──あ、「FUNKASTIC」に通じる匂いを感じたのはやっぱり間違いじゃなかったんですね。

RYO-Z そうそう。シーケンスも一緒なんですよ、「FUNKASTIC」と。

左からPES、SU、RYO-Z。

PES Dropは、うんちをかますぜ、ラップをかますぜ、ヤバいの投下するぜ、みたいな意味ですね。ヒップホップの曲の中でよく「かますぜ」みたいなこと言うでしょ? それって、これからかますのか、今かましてる最中なのか、かましたあとなのか、聴いてるほうはわかんないだろうなと思って。「かましたぜ!」とはあんまり言わないし(笑)、だいたい「これからやるぜ!」っていう未来形になるでしょ。

SU でもやってるんだよね、もう。

PES そう。この曲では「やるぜ!」ってずっと言いながら結局やらないっていう歌詞にしたんです。

──「俺はまだ本気出してないだけ」的な、ハッタリかましてる内容ですよね。

PES 出さずに終わる。

RYO-Z

RYO-Z 「俺を誰だと思っているの? やれば出来る子の申し子」って書きましたからね。「やれば出来る子」のさらに「申し子」(笑)。

──1つ引っかかったラインがあって、Cメロの「チルアウトは過ぎてる」ってどういうことなんでしょう?

RYO-Z 「チルアウトしてる場合じゃねえぞ。チルアウトの時間はもう終わりで、ここからブチ上がるぜ!」っていう……ステージで煽ってるつもりでそのときの俺は書いたんでしょうね(苦笑)。

──ああ、ライブの状況を想定して書いていたと。

PES インタビューのときにそういうことも聞かれるんだから、ちゃんと考えて書かないとね(笑)。

RYO-Z 「落ちるな オトせ」……意味わかんないもんね、これ(笑)。「Don't Think, Feel」っぽい。

PES なんか名言っぽいもんね。

RYO-Z つまり「かましてやれ!」みたいなことが言いたいわけです。

SU え、バンジージャンプのときに、後ろから押されるよりも自分から飛び込めってことじゃないの?

RYO-Z それでもいいです。そういうふうに捉えてもらっても。

PES ははは(笑)。

“映画の主題歌”っていう形で届けばいい

──今作のようなPESさん作曲のナンバーがシングルとしてリリースされるのは、FUMIYAさんがお休みされていたときの「Hot chocolate」(2006年1月発売のシングル)以来10年ぶりなんですよ。

PES 今回、そもそもシングルとして出す気なかったんですよね。正直今もまだシングルが出るぞっていう気持ちにはなってなくて、こうやってインタビュー受けて「あーシングルなのか」っていう。

RYO-Z これがシングルになるって決まってたら、違ってた?

SU

PES 全っ然違う。

RYO-Z あはははは(笑)。

SU そりゃあそうだよね。

PES アレンジャー入れてる。

──へえー。

PES 今回は映画のための曲だと思ってるから、こうやって単体で見られたときにけっこう地味かなと思うんですよね。

RYO-Z 映画を邪魔しすぎないように、寄り添う形で作ってるからね。

PES 「間宮兄弟」のとき(主題歌「Hey,Brother」を書き下ろしてシングルとしてリリース)もそういうふうに考えて作りましたね。

──そもそも2曲ともPESさん主導で作ることになった経緯は?

PES 最初はオープニングの「Take It Easy」だけ作ってて、もう1曲作る話が途中から浮上し、FUMIYAくんは別の曲の制作作業で忙しい状態だったんで、とりあえず僕が作ってやり取りしてたら締切が来ちゃったっていう感じです。ツアー中だったし、1人に負担がかからないような方法にしたってことですね。

──そういった理由ならよかったです。「Take It Easy」はFUMIYAさんもILMARIさんもほぼ関わってない曲とあって、何かあったんだろうかと少しだけ気にかかっていたので。リップの曲なら必ず5人で作らなきゃと思っているわけではないんですね。

PES

PES そういう意識はないですね。できるなら5人でやったほうがいいと思うけど、特にタイアップの曲ってどういう結果に着地するかがわからないっていうのもあるので。例えば自分たち発信のオリジナルシングルを作るとなったら、こういうプロモーションをしようとかイチからみんなで相談して、自分たちで頭使ってたくさん聴いてもらう方向に持ってかないといけないですけど、(タイアップ曲は)コントロールが半分効かなくなるっていうところもあるから、そんなに決め込まなくても成立するかなっていう。皆さんには“映画の主題歌”っていう形で届けばいいと思うんです。

RYO-Z まあ映画の添え物ですよね。映画ありき。

PES だからこういうことに関しては分業で、作品を邪魔しない程度にRIP SLYMEの味が出てればいいかなっていうことですね。

ニューシングル「Take It Easy」 / 2016年3月2日発売 / unBORDE
完全生産限定盤 [CD+グッズ] / 1800円 / WPCL-12346
通常盤 [CD] / 1000円 / WPCL-12347
CD収録曲
  1. Take It Easy
  2. Drop!
完全生産限定盤

「デザイナーズ ミニうんちタオル」付き

通常盤初回プレス分

「お目目うんちステッカー」付き

配信限定シングル「Baile TOKYO」配信中 ※映画「BAILE TOKYO」主題歌&FC東京公認2016年応援ソング
配信限定シングル「Baile TOKYO」
RIP SLYME(リップスライム)
RIP SLYME

RYO-Z、ILMARI、PES、SU、DJ FUMIYAからなる4MC&1DJヒップホップユニット。1994年に結成され、2001年3月にシングル「STEPPER'S DELIGHT」でメジャーデビュー。その後2ndアルバム「TOKYO CLASSIC」がミリオンヒットを記録する。さらに国内のヒップホップユニットとして初めての日本武道館ワンマンライブを行い、日本にヒップホップ文化を広く浸透させた。2010年には、メジャーデビュー10年目を記念しベストアルバム「GOOD TIMES」とカップリングベストアルバム「BAD TIMES」を発表。2015年9月には通算10枚目のオリジナルアルバム「10」をリリースした。翌年3月には映画「珍遊記」のオープニングテーマとエンディングテーマを収録したシングル「Take It Easy」をリリースするなど、絶えず精力的に活動している。