ナタリー PowerPush - rieco

音楽塾ヴォイスの秘蔵っ子 資生堂CMソングで待望デビュー

福岡の名門スクール「音楽塾ヴォイス」出身のシンガーソングライター・riecoが、7月に満を持してメジャーデビュー。イマドキのスタイリッシュな女の子……といったビジュアルからは想像がつかない、美しく透明感に満ちた歌声。それは人々の心を癒し、ときに勇気付ける変幻自在の表現力とパワーを兼ね備えている。

今回ナタリーでは、彼女の音楽遍歴や「ヴォイス」在学時のエピソード、デビューシングル「Shining」についてじっくりと話を聞いた。一聴すればわかる彼女の非凡な歌の才能を、多くの人に体感してほしい。

取材・文 / 川倉由起子 撮影 / 松本健彦

やりたいと思ったら、次の日に先生を見つけに行く

──プロフィールによると、riecoさんが初めて楽器に触れたのは4歳のとき。ドリマトーン(電子オルガン)を習っていたんですね。

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はい。ドリマトーンを始めたきっかけはNHKの「おかあさんといっしょ」なんですが、番組の最後に子供たちが集まって歌うシーンがあるじゃないですか? その後ろでお姉さんがオルガンを弾いてるのを観て「あれがやりたい!」って思って。母にすぐそれを伝えたら「じゃあやってみる?」って言われて、次の日にはもうKAWAIの音楽教室の門を叩いてました。

──子供心にビビッと来るものがあったんですかね。

そうなんです。そのお姉さんを見て「なんて素敵なんだ!」って衝動的に思ったようで(笑)。

──ところで、同世代の女の子だとまずピアノから始める子も多かったと思うんですが、そこを電子オルガンにこだわったのはなぜでしょう?

やっぱりそれも、テレビの歌のお姉さんが電子オルガンだったので。先生に「(手を交差し、足で鍵盤を押さえるジェスチャーで)こういうやつが弾きたいんです!」って言ったんです(笑)。

──テレビのイメージが相当強烈だったんですね。で、ドリマトーンではどういう楽曲を弾いていたんですか?

クラシックというより、洋楽のヒット曲やポップスが多かったですね。THE BEATLESやホイットニー・ヒューストンの曲も進んでやってました。

──当時は弾き語りも?

いえ、まだ全然。でもだんだん弾いてるだけじゃ満足できなくなってきて、そこに自分の表現も足したいと思うようになって。そんなときに映画「天使の贈りもの」を見て、“歌”というものに目覚めたんです。

──ホイットニー・ヒューストン主演の音楽をモチーフにした映画ですよね。

はい。その中のゴスペルのシーンを観たとき、不思議と心が震えて涙が止まらなくなって。今までは演奏することだけを音楽として捉えてたんですが、そこで初めて歌のパワーというものに触れたんです。

──以後、本格的に歌の道を目指し始めたと。

はい。ドリマトーンを始めたときと同じく、衝動的にまた「私は歌をやる!」って思って。すぐに新聞の広告に載っていた歌の養成所のオーディションに応募しました。ほかにも学生時代はダンスやパーカッションを習ってたんですけど、私はいつも衝動が先。「やりたい」と思ったら次の日にはもう先生を見つけに行くってパターンが多かったです(笑)。

レッスン室の名前は「WAR ROOM」

──養成所のオーディションの結果はどうだったんですか?

びっくりするくらい全然歌えませんでした(笑)。でも、そこで「音楽塾ヴォイス」の代表である西尾(芳彦)先生とご縁があって。当時、西尾先生がヴォイスでシンガーソングライターコースを開くタイミングで、「(スクールに)来ないか?」と声をかけていただいたんです。

──どんな縁が待っているかわからないですね。

rieco

本当に。あと当時の私はすごく自分の声が嫌いで、それなのにボーカリストになりたいと思ってたんです。だから歌も全部裏声で、「まだこれでしか歌えないんです」と西尾先生に言ったら「なかなかない不思議な声をしてるから、それを武器にしたら面白いことになるよ」と言ってくださって。その言葉が背中を押してくれましたね。

──現在のヴォイスは数多くのメジャーアーティストを輩出する名門校ですが、riecoさんが通っていた頃はどんな授業をしていましたか?

私はまず作詞作曲を学んだんですけど、当時は西尾先生がお一人で教えてらっしゃって。寝る間も惜しんで生徒のために動いてくださって、一言でいうなら“修業の場”って感じでした。

──修行ということは……結構スパルタなんですか?

当時はわりと(笑)。「もっと真剣に取り組め!」みたいに怒られるのはしょっちゅうでしたし、音楽に向かう真摯な姿勢みたいなものもそこでイチから教えられました。出来の良くない曲を書いていくと「このうんこソングが!」って言われたりもして(笑)。

──あはははは(笑)。ちなみに1回のレッスンは何人くらいでやるんですか?

多くて3人くらいですね。当時は生徒数も少なくて、少数精鋭でしたから。そうそう、レッスン室には「WAR ROOM」って名前がついてて……。

──え、戦争の部屋ですか?

はい(笑)。「ここから先は戦場だと思って気合を入れてレッスンに臨め」っていう意味が込められてたんです。小さなマンションの1室だったんですが、先生が床に座ってギターを弾いてくれて、それを2~3人の生徒が囲んで。最初は「これがAメロ、Bメロ」っていう基礎から教わり、徐々にコード進行や作曲理論を学んでいきました。

ニューシングル「Shining」/ 2012年7月4日発売 Future RECORDS, Inc.

収録曲
  1. Shining
  2. NEVER.
  3. HULA GIRL(NIJIWO)※通常盤のみ収録
通常盤 DVD収録内容

Shining、NEVER.、HULA GIRL (NIJIWO)、ほかカバー曲2曲 アコースティックライブ映像を収録予定

rieco(りえこ)

福岡県出身のシンガーソングライター。4歳からドリマトーンを弾き始め、中学生の頃から作詞作曲を開始する。「音楽塾ヴォイス」にて作曲理論を学びつつ、2010年に地元・福岡の新人発掘プロジェクト「FUKUOKA Music Factory」でグランプリを受賞。2011年3月にインディーズでミニアルバム「Freeway」を発表し、2012年7月に日本コロムビアよりシングル「Shining」でメジャーデビューを果たす。アジアを中心に、国外でのライブ活動も積極的に行っている。